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「思考」に他者は介在しているか。Being John Malkovich(マルコビッチの穴)


思考。
感覚や表象の内容を概念化し、経験や知識をもとに考えることである。
体験した出来事も会話の内容も解釈し、思考しているのは自分自身であり、思考の過程において他者は存在しない。
しかし、思考は言語を伴うものだ。言語は自分以外のものがつくりだしたものであり、この点において思考には他者が介在しているといえる。
また、思考する際には本や会話などから得た知識を用いて考える。ここにも他者が介在している。
このように、思考には直接他者は介在しないが、思考の方法としては言葉や知識を伴うため、大なり小なり他者が介在している。
一見全てを自分自身で思考したと思っていることであっても、その思考過程に知らず知らずのうちに他者が介在していることがあるといえる。
自分の思考にはどのように他者が介在しているか、他者に思考を操られていないか改めて自分の思考を疑いたい。


映画「Being John Malkovich(マルコビッチの穴)」は、他者の世界を体験できる装置を巡った物語だ。自分の思考には、他者が介在し、ひいては他者に操られているかもしれない。そう気付かされる物語だ。



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Being John Malkovich(マルコビッチの穴)
さらっと不思議な世界を体験することができる映画。
ジャンル:コメディ
公開:1999年
監督:スパイク・ジョーンズ
出演者:ジョン・キューザック(クレイグ・シュワルツ)
    キャメロン・ディアス(ロッテ・シュワルツ) 
    キャサリン・キーナー(マキシン)
    ジョン・マルコビッチ(ジョン・ホレイジョ・マルコビッチ)


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概要:
他者の世界を体験できる装置を巡った物語だ。人形師である主人公クレイグは、人形師だけでは生活できないことから、あるビルの7と1/2階でファイル整理の仕事に就くこととなる。そこには7階と8階の間でエレベータの非常停止ボタンを押さないと行けず、また一見普通のオフィスであるが、天井が1.5mほどしかなくしゃがまないとあるけないような空間である。その会社に就職して間もなくクレイグは、会社の棚の裏に小さな穴を見つける。その穴は、入ると俳優ジョン・ホレイジョ・マルコビッチの頭に入って、15分間だけ彼の目を通して世界を体験できるというものだ。そして、15分後にはどこかの高速道路の脇に放り出されてしまう。クレイグはこの体験に快感を覚え、同僚のマキシンとともに、「マルコビッチの世界を体験する」という副業を始める。やがて、クレイグの妻ロッテはこのマルコビッチの穴を体験したことで、自分がレズビアンであることに気づき、マルコビッチの体を介してマキシンと愛し合うようになる。そのことに気づいたクレイグはロッテを自宅に監禁し、ロッテにふりをしてマルコビッチの穴に入り、マキシンと愛し合う。その過程で、クレイグはマルコビッチの体を操れるようになり、マルコビッチも操られていることに気づく。そして、マルコビッチは穴の存在をつきとめ、穴を通して自分の世界を体験する。その世界では、人は皆マルコビッチの顔をし、すべてのものの名称がマルコビッチになっていた。やがて、クレイグはマルコビッチの体に好きなだけ滞在でき、自由に体を操ることができるようになる。このことを利用して、クレイグはマルコビッチの知名度を使って人形師として成功する。一方、クレイグに裏切られたロッテは、他人の体を乗っ取ることで生き続けている秘密結社の存在を知ると同時に、その秘密結社にとって、クレイグの存在が邪魔であることを知る。一方、マキシンはロッテがマルコビッチに入っていたときの子供を妊娠しており、ロッテのことを忘れられずにいた。そこで、ロッテたちはマルコビッチを脅迫し、マルコビッチの体から追い出す。マルコビッチの体は秘密結社に乗っ取られ、追い出されたクレイグはマキシンの娘の体に閉じ込められていた。操ることも抜け出すこともできなくなったクレイグは、ただマキシンとロッテが仲良くしているところを見つめるのみとなり、物語の幕を閉じる。このように、「マルコビッチの穴」は、他者の世界を体験できる装置であり、登場人物たちはこの装置を巡って人生を狂わせていく。


画像参照元:心の時空


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