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「下午のまち銭湯~昼下がりの銭湯」 第二湯~要町【山の湯】


銭湯は昼下がりにいくに限る

昼下がりの要町

要町。池袋の隣にある駅。ここに美味いどら焼きの店があると聞いてやってきた。ついでだから銭湯もと探してみると近くにしっかり存在していたので訪問しようとなったのである。

有楽町線の改札を出て地上に出てみるとそこは交差点になっていて、なんだか池袋の隣駅の割には都会といった感じがしない。

昼下がり。お腹がすいたので何か食べよう。今日はなんだかニラレバが食べたい気分。駅から少し離れたところにある町中華まで歩いてみる。

明るいうち歩いてみるとこの街の様子がよくわかる。向こう側を見ると大都会池袋のビル群がしっかり見える。行きかう人もビジネスの風貌の人が多くやはり大東京の街なのだと実感する。気づくと住宅街。あっちのビル森は働いたり遊んだりする池袋。ここ要町は住む池袋だ。

店に着く。緑のテントのぱっと見町中華っぽくない店構え。中に入ってみると、厨房にはおじさん。案内はおばさん。多分夫婦だろうな。ぼくは知っている。夫婦でやってる町中華にハズレはない。

席に着く。メニューを見るとあったあったレバニラ定食。早速注文する。するとおばさん、

「レバーなくなっちゃったのよ~。だから肉ニラね」

唐突な売り切れ発表からの問答無用のメニュー決定。いいね。町中華はこうでなきゃ。

小気味よく上海鍋を振るおじさん。鍋が釜枠に当たる音に合わせておかずにお玉でカンコンカン。いいビートを刻んでいる。

完成。するとおばさん、

「少ないけど余ってたレバーも全部入れといたから」

なんと!つまりこれはレバニラと肉ニラのハーフ&ハーフ。スペシャルミックスメニューじゃないか。何たる幸運。

食べる。うまい。レバー→ごはん→豚バラ肉→ごはん。うまい定食は白飯がどんどんなくなってゆく。すぐに完食。ごちそうさまでした。

要町を歩く

さて目当てのどら焼き屋までいこうか。でも生菓子を持ったまま銭湯に行くっていうのもなんだか気が進まない。時間を見ると15時過ぎ。店は17時までだから銭湯でひとっ風呂浴びて帰りに買いに行こう。

まずは銭湯に向かう。銭湯に近づくにつれ住宅地度がどんどん上がっていく。そして道がどんどん複雑に入り込んでくる。間違わないようにしなくては。些細な選択ミスが大きなミスにつながるものである。

どんどん複雑になる道。迷いそうになるがふと見上げるとそこに煙突が。あったあれだ。ぐんぐん足を進める。しばらく歩くと煙突の真下の路地に着く。どうやらここのようだ。入口が道に面していないのでどこだろうかと見渡してみると脇に細道を見つけた。その奥に目的の「山の湯」があった。

山の湯

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入口までの路地には壁画の写真があった。富士山だ。暖簾の前まで行くと年季の入ったテントの下に山の湯の文字。煙突があったのでもっと立派な面構えを想像していたけれど意外と地味だな。けれど見た目が地味な船湯は入ってみると意外と豪華というのは良くあることだ。気にせず入ろう。

松竹錠をガチャっとやって自動扉をウィーン。

すぐさま上から「いらっしゃい」。伝統の内番台だ。

脱衣所は昔の銭湯のスタンダード。高い天井。壁の向こうの女湯。ロッカーの上には木彫りの象。古い銭湯でこういったよくわからない木彫りがあるのをぼくは何度か見たことがある。

ふと壁を見るとそこにポスターがあって「山の湯温泉」とかかれている。

いざ裸体で浴場入場。

カラララ~

なんだこりゃ!?

目に飛び込んできたのはひょうたん型の浴槽。それが浴場の真ん中にでんと据えてある。その周りを壁に沿ってカランが取り囲んでいる。関西スタイルだ。

そこに張られている湯の色。浴槽すべてが鮮やかな緑色。薬湯に緑色の入浴剤を使っているとこはわりとあるけど、真ん中にドンと緑色の湯だけってのはなかなかインパクトがある。

ケロリン桶を手に取り浴槽を眺めながら奥のカランに移動。ひょうたん型の浴槽は中心で2つに分かれている。浴槽はこの2つだけだ。片方はジェットバス付き。もう一方はバイブラ使用だ。中心を分ける壁の上には西洋風の白い人形があって手に持った水瓶から緑の湯を注ぎこんでいる。

カランの数は18個。髪と体をワシワシ洗う。ふと目線を上げるとカランの上部がタイル絵になっている。どこかの渓流の沢が描かれている。

湯をいただくとしよう。さてどっちの湯船から浸かろうか。入り口側のバイブラ浴槽を見ると、先客二人が入っている。ジェットバスのほうは誰も入っていない。なら空いているこっちに入るしかあるまい。

右足をソロ~リいれて、

しゃぽん・・・

!!!!!!!!!!!!

ぬはっ!熱い。すごく熱いぞ。

他のお客さんがこっちに入っていない理由が分かった。これはくるなぁ。殺人的だ。開店直後だからなのだろうか?もし常時この温度だったらなかなか強烈だ。見た目は緑色のポップな湯色なのに温度は超ハード。

Bay City Rollersのつもりで針を落としたらSlayerだったくらいの衝撃

カコ~ン・・・

とりあえず耐える。しかしこの高温でジェットバスは大丈夫なんだろうか?マグマ的に危険だと思う。ああ駄目だ。いったん上がろう。

湯から上がると、体から湯気が立っているのがわかる。直ぐにカランに避難。水風呂があったら入りたい。

さてどうしよう。もう一方のバイブラ風呂の方もこの温度なのだろうか。とりあえずそっちに入るか。入り口側に向かうとふと目にスチームサウナ室が飛び込んできた。ヨモギ漢方サウナと記されている。

へぇサウナがあるのかぁ。いいね。こっちに入ってみるか。ちょっと堅めの扉を押し開けて中に入る。中はもわっと蒸気で充満している。

お、いい温度。銭湯にスチームサウナは結構あったりするけど温度は体外低めで、サウナというより蒸気風呂といった感じなんだよね。でもここはしっかり高い温度でこういっちゃなんだが町の銭湯の割にしっかりサウナしてる。そして室内に漂う草のにおい。片隅にネットが吊るされている。この中にヨモギが入っているんだな。心地よい香り。

サウナから上がり、立ちシャワーで水を浴びる。次はバイブラ風呂だ。

ゆ~っくり足を入れてみる。おや?

おやおや

熱くない。肩までつかる。いや、熱くないどころかむしろぬるい。こっち側には温度計がついてあって見てみると38度だった。なんだろうこの両極端な温度設定は。でもこれならゆっくりつかれる。

ふと奥の壁を見てみると、一面に壁画が描かれている。富士山の壁絵の写真が貼ってあったけど、これはちがうなぁ。海があって、奥にいくつもの雪山が描かれている。隅に七尾湾とかかれている。能登半島だ。

奥に山、手前に海が描かれている壁画。その下のタイルに描かれている沢はそこから流れ出した渓流の絵だろうか?じゃあこの緑の湯は

!?

そうか!この一面の緑の湯は大地を表現しているんだ。そして草の香りのサウナは森だ!ここは大自然銭湯だったのだ!

窓から差し込む昼下がりの日光が深緑の木々の狭間から漏れる光に感じられる。堪らない。やめられない。昼下がり銭湯。

よしこの要町の大自然をしっかり堪能するぞ。再び熱いほうの浴槽へ。ゆっくり足を入れてみると・・・あれ?そんなに熱くない。なんだろう温度は変わってないと思うけどこんどはちゃんと浸かれる。そうかぁサウナと温湯で下地がしっかりできたんだ。

よし。ジェットバスいっちゃえ。

ごぼぼぼぼ

いけるぞ。うん。良い。これは大地の震動だ。この熱さもむしろ心地いいぞ。その余韻を残したまま再びバイブラのほうへ。この温度差なら交互浴っぽい感じで入れる。

ホッカホカになった体で脱衣場に戻る。服を着て、番台のおじさんに「どーも」と言って外に出る。まさかこの大都会池袋でこんな大自然に巡り合えるとは。すこぶるいい湯だった。

さてどら焼きだ!このため要町に来たのだ

どらやき!

時間を見ると16時15分。いい時間。店にはここから五分で行ける。17時までは余裕だ。

どらやき!

すたすた歩く。あの銭湯の熱い湯で存分に汗をかいた。一刻も早く糖分を摂取しなくては。

ああ楽しみだ。一つじゃ足りないし、3つじゃちょっと多いかな。よし2つ買おう。せっかくだからお茶もおいしいのにしようかな。うん、お茶屋さんにもよっていこう。

どらやき!

さあ見えてきたぞ。目的地の店が。

店に着いた。

入口に看板が掛けてある。

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『本日は売り切れました』


銭湯の詳細


『山の湯』[所在地]豊島区要町[最寄り駅]有楽町線「要町」駅徒歩5分

[営業時間] 15:30−24:00[定休日] 月曜[入浴料]470円

[サウナ]スチームサウナ(無料使用可)[ドライヤー]20円

※備え付けシャンプー、ボディソープあります



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