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マッチ売りの少女と現代1

マッチ売りの少女には現代に通じる諸問題を提起している。まずそのストーリーを紹介しつつ、物語の先見性について見ていこう。

マッチ売りの少女のストーリー

年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でマッチを売っていた。マッチが売れなければ父親に叱られるので、すべてを売り切るまでは家には帰れない。しかし、街ゆく人々は、年の瀬の慌ただしさから少女には目もくれず、目の前を通り過ぎていくばかりだった。
出典元:「マッチ売りの少女」Wikipedia

ここでまず思い浮かぶのが、マッチを売るのが少年ではなく少女だったことだ。ここにはジェンダー問題が潜んでいる。
第二に、マッチ売り=労働という観点からいくと、「売れるまで帰ってくるな!」というのはパワハラに該当するし、少女に労働を強いることは児童福祉法に違反する行為と言える。
第三は少女にマッチ売りをさせているのが、父親だということだ。言うまでもなくこれは虐待である。「毒親」という言葉がトレンドワードとなっていることは記憶にも新しい。
最後に、街ゆく人々がマッチに目もくれないのは、現代ならば、ここに加熱式タバコの普及という隠されたポイントがあることは見逃せない。

夜も更け、少女は少しでも暖まろうとマッチに火を付けた。マッチの炎と共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が一つ一つと現れ、炎が消えると同時に幻影も消えるという不思議な体験をした。
出典元:「マッチ売りの少女」Wikipedia

人は極限状態に追い込まれると、幻覚を見るというのは科学的にも解明されており、脳内A10神経質を刺激する「ドーパミン」などの伝達物質を御存知の方も多い事だろう。

天を向くと流れ星が流れ、少女は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言ったことを思いだした。次のマッチをすると、その祖母の幻影が現れた。マッチの炎が消えると祖母も消えてしまうことを恐れた少女は、慌てて持っていたマッチ全てに火を付けた。祖母の姿は明るい光に包まれ、少女を優しく抱きしめながら天国へと昇っていった。
出典元:「マッチ売りの少女」Wikipedia

流星はかつては自然物であったが、現代では人工衛星など「宇宙のゴミ」問題も深刻化している。またマッチの数が決まってるにも関わらず全てを消費してしまう行為とは消費社会そのものであり、消費の追及は社会の滅亡をもたらす事を、少女の死という結末で暗示していると言って良いだろう。

新しい年の朝、少女はマッチの燃えかすを抱えて幸せそうに微笑みながら死んでいた。しかし、この少女がマッチの火で祖母に会い、天国へのぼったことは誰一人知る由はなかった。
出典元:「マッチ売りの少女」Wikipedia

これは大事になる。メディアはこの話題を連日取り上げ、父親は糾弾され、当然逮捕となり、刑事訴追を免れない。もちろん児童相談所の担当者も叩かれる。

「マッチ売りの少女」は痛ましい童話であるが、出版から170年以上経っても色褪せずに、様々なイメージや教訓を与えてくれる。そういう物語だと僕は思う。

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