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『コスプレ』についての独特な解釈とカニバリズム

貴方を目の前にすると、まともに言葉が出ない。
勇姿を思い出す度にぼんやりと上の空。
名前の文字列を目にするだけで胸が(甘く)痛い。

そんな事ある?
脳内で一体何が起きているというの。

「実らない恋」がもしあるのだとしたら限りなく近いのかも知れない。
今までの人生で、概念として存在してはいる「実らない恋」(恋と認識したからには力技で掻っ攫うのはまた別のお話)
しかしである。
現実として。
会いたい。触れたい。気持ちを伝えたい。
所謂一般的な自己中心的欲望の先にあるものは、成就ではなくて。

いっその事、君になりたい。
という気持ち。

かつて、両国パールホテルから東京ドームまでウェディングドレスで電車移動という殊勝な思い出のある私にとって。
髪色と顔、仕草や話し方。好物も映画も音楽も、摂取した情報をこれでもかと咀嚼して血肉にする行為。
概念としての「コスプレ」である。

貴方になりたい、は、とどのつまり食べちゃいたい(魂ごと取り込みたい)なのだけれど、あまり怪物じみた事もできないのでね。
爪の色、主食、香水、いかつい指輪、見たこと聞いたこと。
人魚の肉を食べると不老不死になれるらしいけれども、できれば貴方の脳を少しだけでも。
かぷっと。ひとくち。なんなら供血でも。

「獲って食いやしないよ」と脳内でさんざんこだましていたのはこの欲望が正体。
獲って食う気満々なのでせめて理性で抑えようとループさせていたのかと思うと健気な我が精神。

「食べちゃいたいくらいかわいい」という表現を初めてした人、友達になれると思うよ。

たぶんさ、棘とか毒とかあると思うんだ。警戒色だし。生物として捕食対象にしたらいけないってDNAに刻まれている。野生の勘が危ないって言ってる。
でもね、ヒトって雑食で好奇心と驚くべき毒耐性でフグもウニもアボカドも食べてきたじゃない。いけると思うんだよね。もちろん、毒を喰らわばお皿もなんならナイフもフォークもテーブルも頂く所存で。

日常ではほとんど機能しない食欲(これもまた別のお話)がこの方向に出たとも言えなくもない。

ひとくちでいいからどうにかならないかな。

ならないのなら栽培か細胞培養して、どうにか。

カニバリズムを否定はしませんが、倫理的に色々難しいので。

と、ここで先出の「貴方になりたい=コスプレ」が生きてくるという。同化という名の欲望のスライド。取り込んでしまえないならせめて擬似的に同じになることでこの場合の食欲を満たそうと。

欲深いですな、ヒトは。
底無しの原始欲求は生存の実感。

ここまできて念の為。
食べたいは所謂性的な意味合いの比喩ではなくて、完全なる食欲です。
余計に怖いね。
文化的社会的制約云々との齟齬。

食べちゃダメ。噛んじゃダメって口輪でも付けて躾けてあげてよ。ね。

欲望を飼い慣らす難儀な遊び。
本日も潤沢な脳汁を有難う。

あ、お腹空いた。


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