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恋話とチョコレート。

 とある女子高生の恋を、彼女の母親を通して聞いていた時の話。

 彼女は高校に入学してから、いつも恋をしていた。だけど、彼女の恋はいつも淡く、相手と気持ちを探り合う段階には辿り着くけど、成就はしない。聞いていると、甘酸っぱく、歯がゆく、もどかしい。私はその恋話を一喜一憂しながら聞くのが楽しみだった。まるで、連載漫画を楽しみにしている一読者のように、話に耳を傾けていた。

 ある日、彼女の恋に進展があった。意中の彼とデートに行ったのだ。私は自分のことのように喜び、ワクワクしながら話を聞き始めた。しかし、そのデートは、彼女が場を盛り上げ、何気ない会話のなかに彼への気持ちを織り込んで伝えてるが、彼は彼女の気持ちをのらりくらりとかわしていたという内容だった。話の最後に、彼女は「この恋愛を最後までがんばりたい」「気持ちをちゃんと伝えて、伝え切って終わりたい」と言ったそうだ。

 私は彼女に対して切なく、彼に対して少し苛立ってしまった。だけど、恋愛はその二人にしか分からないコトがある。きっと、彼女がその恋を全うしようとする何かが彼にあったのかもしれない。

 彼女の恋話を聞く時に食べるチョコレートが私は好きだった。最初はなぜだか分からなかった。ガールズトーク的な雰囲気にチョコレートが合うから、なんて思っていた(ガールズトークといっても、職場の休憩時間の雑談なのだけど)。
でも、今回の恋話で気づいてしまった。甘酸っぱくてもどかしい彼女の恋話には、甘いチョコレートが気持ちを中和してくれるのだ。現実の甘さが想像の甘酸っぱさをやんわりと沈めてくれた。

 彼女の恋の結末を知ることは出来なかった。結末がでる前に私が職場を去ったからだ。去る日も、彼女の進まない恋の話を聞き、続きが気になりながら終わった。

 もし、偶然に彼女の母親に会えたら、彼女の恋の近況を聞いてしまうかもしれない。私はまだ一読者のままだ。その時も、チョコレートがあればいい。みずみずしい甘酸っぱさが広がる話でも、ほろ苦い話でも、甘いチョコレートが気持ちを和らげてくれるだろう。

 あまいあまーい話の時は?、その時もチョコレート、コーヒー付きでお願いします。

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