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アフリカで「温かい流通」の実現を目指すFMGが、新規事業〜スピンオフへ至るまでの道程と覚悟

こんにちは!サムライインキュベートのnote編集部です!

今回は、10月にスピンオフスキームで創業をリリースしたアフリカのタンザニアで「中古車×金融」の仕組みで現地の人々に働く機会を提供する株式会社FMGのCEO林さんと当社榊原の2人にお話を伺いました。
日本のベンチャー投資額が年々増える一方で、企業内新規事業への投資額が伸び悩んでいます。国内で社内事業からスピンオフする事例も増え、注目されています。


ー まず林さんにお伺いします。サムライインキュベートとスピンオフスキームの計画を進めるに至った背景を教えてください。

FMG 林亮さん(以下、林):これまでいくつか新規事業の立ち上げを経験しましたが、やはり新規事業を立ち上げるのは難しいです。IDOMはその観点で言うと、最近のネット系のユニコーン企業が生まれる前は創業から最も早く上場した会社として、ハイパーグロースカンパニー(※1)と呼ばれ、ポーター賞も受賞した企業でしたので、そのスピード感で成長することが基準の一つとなっていました。当時のFMGのビジネスは成長はしていたのですが、先進国とは異なる色々な試練、デング熱でドライバーの稼働率が低下したり、Uberが手数料を上げたことでドライバーのストライキが発生したり。。といったアクシデントによって売上のアップダウンも大きく、この事業を大きく成長させるためには、どのような体制、どのような時間軸、どのような経営資源が必要なのか?という議論を1年以上、続けていたときに、偶然にサムライインキュベートの榊原さんと出会いました。

※1:ハイパーグロースカンパニーとは、アメリカにおいて設立10年以内に売上高10億ドル(1ドル約100円で日本円に換算して約1000億円)を達成した超成長企業を賞賛する言葉です

サムライインキュベート 榊原健太郎(以下、榊原):昨年の2月頃にお会いした時は、結構悩んでいらっしゃいましたよね。

林:はい、そうでしたね。初めてお会いして、僕としては即座にサムライインキュベートさんと一緒に議論し、事業を次の展開へ進めたいとました。サムライインキュベートさんとお仕事をするのは初めての経験だったのですが、1番のポイントになったのは、良い意味で青臭く、理想を共に追ってくれるスタンスを持っているところでしたね。それは当時IDOMがお打合せをするような企業さん、ご担当者の方々とどこか違っていました。アフリカにおける新規事業のインキュベーションに非常に長期的な視野を持って取り組んでおられたのも、大きな要素の一つでした。大企業に所属するイチ社員として新規事業に取り組むのではなく、自ら議決権も株も持ち、名実ともにファウンダーとしてIDOMから転籍もさせてしまうプランを後押しいただいたのも、サムライインキュベートさんならではであったと思います。そのような取り組みは、IDOMの歴史では前例のないケースでしたので、今回の件を特例として認めるかどうかも含めて、社内の様々なステークホルダーを巻き込んだ一大議論になりましたが、最終的には、その方向で進めることを決定することができ、その社内合意が取れてからは一気に物事が進んでいきました。

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ー  榊原さんは当時のことはどのように考えていたんですか?

榊原:林さんのご経験と事業の想いを伺って、私の経験と一致した部分があり、一緒にやろうと考えました。その理由は3つあって、1つ目は、私が初めてルワンダを訪れた際、どこを見渡しても、目の前で走っている車がトヨタ車という衝撃が走りました。さらに現地の移動で使用したタクシードライバーから、「俺、10万キロで走ったトヨタ車を1万ドルで買ったのすごいだろ」と、自慢された時に、日本人としての誇りを感じました。

2つ目は、ナイジェリアでみた光景です。正直、西アフリカは治安が悪いと言う前情報がありましたが、Uberの普及により、車に乗ったドライバーが稼ぎ、あらゆるところにUberドライバーネットワークが発達することで、キャッシュレス社会、レビュー評価が浸透し、国の治安が良くなっていたんです。日本が誇る自動車産業と世界を圧巻しているスタートアップのコラボレーションによって、雇用と暮らしの安全安心を生み出し、国の発展を支えていることを目の当たりにしていました。そんな中、林さんから話を聞くと、なぜ日本製品の車が選ばれるかと言うと交換パーツの流通量の多さやメンテナンス、製品耐久性が非常に高いことを知りました。

加えて、3つ目の理由となる、これから電気自動車の普及が世界的に進むことで、ガソリン車は生産数は減少し、破棄されていきます。生み出した製品を最後まで使い切る場所がアフリカだと知り、販売で終わるだけでなく、雇用を生み出し、治安をよくする国作りに貢献できる事業の一助を担いたいと思いました。

確かに当時の林さんは悩んでいましたが、このビジネスモデルと林さんなら、困難も一緒に切り開ける確信を持ったことを覚えています。

林:榊原さんにスピンオフスキームの話をご提案いただいたことで、この方向で改めてもう一度議論すると違う展開があると期待できました。
VCのようなプレイヤーが「新しいビジネスを育てるにはこうすべきだ」と真正面から、ど直球で裏表の無い言葉を使って経営陣と議論したことはこれまでになかったです。サムライインキュベートさんには、経営陣との議論に何度か混ざっていただきましたが、最終的に合意に至るプロセスにおいては、その効果も非常に大きかったと思います。スピンオフスキームが成立できた要因であったことは間違いありません。

榊原:両社長と議論させていただきましたね。
私がIDOMの経営陣へは、これまでの投資経験から必ず成功するのはオーナーが自分で投資をして、権限を持っている場合でないと成功しない、と伝えました。

両社長も様々なご経験と事例を見てきた中で同じ気持ちを持っていただいてました。さらに、単純に目先の利益を取るのではなくてオールサムライ、つまり日本の企業が一体となり御社が旗を振るべきであることと日本のモノづくりの強さを、困っている人たちに届けることができるのも、これまで中古車産業を牽引してきたIDOMがやるべき、宿命だと、お話させてもらいました。

林:あの場は、裏表なく、ポリティックスが全く介在しない議論で、胸が熱くなりましたね。

榊原:あとはこれから共に歩んでいく私たちのスタンスを理解いただいたこともよかったのだと思います。ベンチャーキャピタリストは、ファンドのROIをもちろん重視しますが、社会へのROIも同時に重視するということを伝えました。失敗してもそれがどのような意味があるかが大事で、今回のスピンオフのリリースを見て色々な人が「こういう選択肢もあるのか」と、勇気を持てたと思っています。

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榊原:あとは経営陣がアフリカに一番最初に行ったときの話も印象に残っています。

林:ああ、そうですね。私がIDOMへ2017年4月に入社して、同年9月、アフリカへ羽鳥貴夫社長と御一緒に視察へ行かせていただきました。それがきっかけとなり、Uberと組み、事業をスタートさせたのがFMGのビジネスの最初の一歩でした。翌年、羽鳥由宇介社長をアフリカ視察へお連れした際は、中古車輸出をするだけではなく、車両をサブスクリプション的に提供するサービスを展開していました。ちょうど、その最初のピボットが行われた直後の訪問時に、実際に車両を提供している10数名のドライバーとIDOMメンバーが話す場をセットしたのですが、ひとりのドライバーが羽鳥由宇介社長の手をとり泣いて感謝するんですよね、「ローンの申し込みなどできず、また車を購入することもできない自分に、IDOMが車を貸し与えてくれたおかげで人生の扉を開くことができた、本当にありがとう。。」と。ビジネスとして成立をさせながら、でも顧客からそんな真正面から正直な言葉で感謝される経験はとても新鮮だったので、自分達のビジネスが国境を超えて、アフリカの人々の生活を豊かにすることに繋がっているのだという反応を、言葉だけでなく体で感じることができ、「会社をやっていてよかった」としみじみと由宇介社長が仰っていたことが印象に残っています。

その年に輸出車両台数と投資額を増やすことが決まりました。IDOM内でアフリカ事業への印象が一変し、両社長の訪問によって社内のムードも変わりましたね。


ー 今回のプロセスの中で印象的な出来事はありましたか?


榊原:スピンオフ初期の構想の段階ではIDOMに在籍しながら新会社設立という選択肢もあがっていましたが、それだと今までの形とあまり変わらないので、覚悟という点でも林さんにはFMGに移籍して、個人でも出資してほしいという点は強くお願いしました。

林:私としては、大前提として、そもそも、この事業はIDOMの経営資源を活用し、IDOMのなかでインキュベーションされた事業なので、今回、新たにステークホルダーとして参加いただいたサムライインキュベートさんはもちろん、IDOMも含めて、ビジネスに関わる全員がWin-Winとなるようなスキームにしたいと思っていました。
私の移籍に関しては、IDOM自身が、創業者たちが強い想いで築き上げた企業であったので、IDOMの経営陣には理解してもらえました。それと並行して、FMGにとって重要な意思決定はすべてFMGの取締役会で決められる様、株や議決権の整理も徐々についていきました。

スピンオフは前例の無い決断でしたが、IDOM経営陣の事業や経営に対する理解により無事に今回のスキームへと落とし込めました。

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ー 今回のスピンオフに関するプレスリリースで反響があったと伺っています。今後の動きや想像している世界観を教えてください。

林:日本が誇るモノ作りの真髄をアフリカへ持っていく役目があると思っています。そのためには日本のモノづくりを担ってきた産業立国日本のリーディングカンパニーのような企業さん達としっかりと協力関係を深めていきたいです。そこはどのようなスキームになるにせよ、やっていきたい。もう一つ、このビジネスは本質的には金融ビジネスです。したがって、そういった金融領域におけるリーディングカンパニーさん達も積極的に巻き込んで、ともに事業を加速させていきたいと思っています。

榊原:今はタンザニアに限っていますが、日本の強みと独自のオペレーション・ネットワークを活用していけば、事業をアフリカ全土で展開ができると思っています。多くの企業にFMGのビジョンに共感してもらって、是非一緒に事業を成長させていきたいですね。

林:私達はものすごい高い目標を掲げています。これから更に成長していき、色々な人を巻きこんでいこうとしています。サムライインキュベートさんには、これまでの経験やネットワークを駆使して、圧倒的な成長、グローバル規模のビジネスが成立しるように伴走してもらいたいです。

榊原:30年後にはアフリカ人口は世界の4人の1人を占めるようになっていきます。そうなった時に日本だけでなく、FMGとの今回の事業を通じて、日本が誇れる、憧れられる国になったらいいなと思います。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回登場したFMGでは林CEOと共に事業を成長させる下記の様な仲間を募集しています。
・Chief Technology Officer
・Product Manager
少しでもこの挑戦に興味のある方、下記サイトを覗いてみてください。

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