ソローキン&マートン「社会的時間」

 ピティリム・ソローキン&ロバート・マートン「社会的時間」(Sorokin, P. A. and R. K. Merton. 1937. "Social Time: A Methodological and Functional Analysis.")を全訳したので売ります。
以下から閲覧・ダウンロードできます。PDFファイルで300円です。

 純粋に量的な時間=天文学的時間と対比させる形で、社会構造・社会システムに結び付いた質的な時間=社会的時間という分析概念を提出した古典的論文です。この概念によって社会変動研究を発展させようというのが著者達が試みることです。

天文学的時間というカテゴリーは様々な時間概念のうちのひとつでしかない。その概念は、哲学、心理学や経済学などの分野によって異なる。よく用いられる時間という表現の操作的定義は以下のことを示している。すなわち、社会現象はしばしば参照枠として用いられるので、時間の単位は集団生活のリズムによって決定されているということである。社会的協働の必要性は時間の社会システムの根底にある。社会的時間は集団に共通する信念や慣習によって質的に分化している。社会的時間は連続的ではなく、特定の日付によって中断されている。あらゆる暦システムは社会的要請によって生み出され、永続化される。それらのシステムは社会的分化や社会的相互作用の幅広い領域から生じる。社会的時間を方法論的カテゴリーとして導入することは、様々な社会的周期性の発見を促しうるだろう。


 本論文の魅力はまず参照される事例の豊富さです。古代ローマ、神武天皇、メラネシアの部族、インドの部族、サマータイムという制度…など古今東西の様々な社会、その歴史、エスノグラフィーの具体的な事例を用いて、社会的時間について論じているところは素直に読み物として面白いです。

 そして、本論文は時間社会学の文脈で必ずと言っていいほど言及される論文であり、当該の分野で一度は読む価値のある論文と言えます。近年、「社会的時間」概念を再評価しようという動きもあり(例えば以下のような諸文献)、その意味で今なお影響力のある論文であると言えるでしょう。

坂岡庸子,2008,「社会的時間の再考」『社会分析』(35), 3-18.
辻正二,2011,「マートンの時間社会学の可能性」『やまぐち地域社会研究』(9), 1-12.
Cheng, T.-Y. 2017. "The ecology of social time: An outline of an empirical analytic framework of the sociology of time." Time & Society, 26(2): 137–164.
Subrt, J. 2015. "Social Time, Fact or Fiction? Several Considerations on the Topic." Sociology and Anthropology 3.7: 335-341.

 時間は社会的事実であるというデュルケーム的な発想は後のギュルヴィッチに引き継がれ、更には時間社会学はムーア、エリアス、ベルクマン、ゼルバゼル、ギデンズ、ルーマン、アダム、ローザ、シュブルトといった社会学者らの研究に綿々と(細々と)続いていくこととなります。…という時間社会学史は別稿に期したいと思います。ちなみに現代の日本では、例えば、多田光宏さんや鳥越信吾さんが第一線で時間についての社会学的研究を展開しています。
 2019年度の日本社会学会大会では「『時間の社会学』の現代的展開」というテーマセッションが予定されています(2019年6月現在)。「時間」というのは、実はこれからアツいテーマなのではないかと思っています。


【書誌情報】

原著:Sorokin, P. A. and R. K. Merton. 1937. "Social Time: A Methodological and Functional Analysis." American Journal of Sociology, Vol. 42(5): 615-629

タイトル:「社会的時間:一つの方法論的・機能分析」

本文:12ページ(約14000字)

ファイル:PDFで758KB

ヴァージョン:1.0(2019年5月31日)

初版:2019年5月31日

この翻訳は、いわゆる翻訳権の 10 年留保にもとづいたものです(日本国の旧著作権法第 7 条および現行著作権法附則第 8 条)。原著の日本語への翻訳権は消滅していますが、この翻訳の著作権は訳者にあります。

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