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「やめるときも、すこやかなるときも」を読んで、タイプの男に出会った。

久しぶりに一気読みするくらい、面白かった。

32歳の男女の恋愛小説。
トラウマのある男と、未だに処女の女。
どちらも拗らせている。
最近、拗らせていると人は簡単に言うけど、そんな簡単には語れない拗らせ方だってある。
「結婚はしない」と言い切る男と「結婚したい」女。

それぞれの男女の視点から描かれている小説って好き。
例えば、男側から描かれる女がすごく悪女に見えても、女側から描かれるとそれが誤解だったりする。

「僕、東京の大学に行くよ。それで、僕と同じ部屋で暮らそう。家賃だって半分にできる。そうだ。アパートを借りなくったっていいんだよ、東京には僕のじいちゃんとばあちゃんの家だってあるんだから。そこに住んだっていい。そうしたら家賃なんかいらないんだよ。バイトして働いた分はお父さんに送ればいい。ほら、何も難しくないよ。簡単なことだよ。」
「僕と行くんだよ。僕は元々東京の人間なんだから僕と一緒なら怖いことないよ」
やめるときも、すこやかなるときも / 窪 美澄

進路に迷う2人が、湖岸の階段に座って話す場面。

ちょ、、待て。
こんないい男いる?
もう勝手に、2人で東京に行くと決まってる。
女の子が東京行きたくないと思ってたらどうしよう、とかいう不安なんて思い浮かんでいない様子の男。
このくらい強引な男、好き、むり。

2人の描く未来には、当たり前に2人一緒に生きている自分たちがいる。
明日が当たり前に来る保障なんてないのに。

生い立ちとか、家族のこととか、想像もできなかった出来事とか、自分ではコントロールできないところに問題があると「どうしてわたしはこんな星の元に生まれてしまったのだろう」と思う。
そういう時に決まって目にする「そのおかげで、人の痛みが分かるようになる」とか「辛い経験も糧に」みたいな、そんな慰めの言葉。
そんなこと言われても、わたしは暖かくて仲良しな家族に生まれたかったわ、と思ったこともあったけれど、年齢を重ねると、本当にそうだよなと思えることも増えるし、実は誰にだって何かしらあるということを知る。
人生、どのステージに行ったとしても悩みや苦しみって尽きないものだけど、そのたびに乗り越えて、そうしたら人間性が高まると思っているから、山あり谷ありの人生でも、きっとそんなに悪くないはず。

わたしはそういう、影があるけど、その影があるからこその強さを持っている男が好きだ。
小説ってなんかそういう男たくさん出てくるよね。
小説でしか出会ったことないよね。

わたしには素敵な推しがいて、小説でもいい男に出会って、こんなんだから結婚できないんじゃないかと思えてきて困る、ほんと。






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