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40歳でも彼氏ができた女(13):バツイチだからそりゃ不安になることもある。

順風満帆なわたしたちの関係だけど、そりゃあ不安定な側面もたまにある。

婚活をしていた時、バツイチの人がいいなと思っていた。
わたしが希望していた同年代〜年上で初婚というのは、結婚できない何かがあるに違いないと思っていたからだ。
(今日書くことは、完全に自分のことを棚に上げ、偏見や間違えた考えが大いに含まれていると思うので、先に謝ります。ごめんなさい。わたしが書くこと、その限りではないと思うので、こじらせ女の一意見と思ってお読みください。)

バツイチということは、一度は誰かに選ばれた何かしらの魅力がある人だし、誰かと生活を共にしたことがあるのだから、それなりに地に足のついた考え方ができる人だろう、というのが、わたしがバツイチの人を希望する理由だった。
付き合った後に、
「なんで40歳の初婚女にいいねしたの?この女なにかあるなって思わなかったの?」
と聞いたら、
「なにかあるんだって書かれていたりするのを見かけるけど、それは人それぞれだから会ってみて判断すればいいと思った」とのこと。
Mさんってやっぱりわたしよりずっと素晴らしい人だ。

で、希望通りバツイチ(子あり)のMさんと付き合ってみて、だ。
それなりにハードルがあった。
バツイチだったらそれでOK、なんてことは全くなかったのだ。
冷静に考えたらそうだよな、と今では思うけれど、付き合ったばかりの頃は、バツイチという事実だけで安堵してしまっていた。
バツイチなんだから、そこまでヘンな人ではないだろうとなにも心配していなかった。

ところが、周りの既婚の友人たちに、
「離婚の理由ちゃんと聞いた?DVとか浮気とか借金とかじゃない?」
「子供に会えていない理由もちゃんと聞いた方がいいよ」
と心配された。
そして、親に同棲する報告をした時には、
「養育費のことはちゃんと決着がついているのか」
と心配された。

Mさんの離婚理由と、養育費を今はもう払っていない理由も、初対面の時に一通り聞いた。
でも、付き合った後に友人や親から改めて心配されると、わたしもまた同じように心配になってしまったのだ。

いや、友人たちよりも、親よりも、わたしが1番心配になってきた。

もし、初婚の人に対して「この人、結婚できない何かあるのかもしれない」と見定めなきゃいけないのだとしたら、バツイチの人に対しては「離婚するほどの何か問題を抱えた人なんじゃないだろうか」と見定めなきゃいけないのだ。
バツイチなら安心、とか思っていたわたしはいかに浅はかだったか思い知らされた。

今までの恋愛だったら、初対面の時に一度聞いたことだし、改めて周りに心配されたらわたしもすごく気になっちゃったけど、また同じことを聞いて嫌われたら嫌だから、気にするのやめよーと思っていたはずだ。
でも、今回は結婚を見据えてお付き合いしたいのだ。
心配なことは聞かぬわけにはいかぬと、わたしは侍にでもなった気持ちで、その度に一つ一つ気になることを斬っていくことにした。

気になり出したらもう止まらなくて、
「こんなに優しい人だけど、実はキレたら手を出したりするやばいやつなんじゃないか」
「子供に会えないって、そんなに拒否られるなんてよっぽどやばいやつんじゃないか」
次の土日にMさんと会えるまでわたしの妄想は膨らみ、あんまり仕事も手に付かなかった。
何度もしつこいなと思われて嫌われて別れることになるかもしれない、と最悪のシナリオまで本気で考えて心の準備をしていた。
そしていよいよ土日を迎え、晩酌をしながら意を決して、
「離婚のこと、最初に一度聞いたけど、もう一度ちゃんと詳しく話してほしい」と、蚊の鳴くような声で聞いた。

そしたらMさん、
「そりゃあ気になるよね」と。神。
1から10まで、聞いてないところまで、わたしが納得するまで話してくれた。
なんなら翌日、洗面台で身支度をしていたMさんが手を止めてこちらへ歩いてきて、
「もう一つ思い出した」
と、追加説明までしてくれた。
別れまで妄想したわたしは、本当にMさんと出会えてよかったと思った。

これが6月半ば頃の話。
そして親に同棲の報告をして心配されたのが、8月半ば。
一難去ってまた一難じゃん。

「養育費払っているけど子供には会えていない話はよく聞くけど、払ってない人なんて聞いたことない。うそなんじゃないか。」
またメンヘラな一週間を過ごした。
実は払っていて嘘をついていたと白状されたら、きっとこれからも嘘をつく人だから別れなきゃいけない、過去のことを何回も聞かれて嫌われてフラれるかもしれない、同棲すること友達にまだ言わなければよかった、と仕事中も上の空だった。

そして土日を迎え、また晩酌中に、
「養育費を払っていないという話、ちゃんと詳細を聞かせてほしい」
とまた蚊の鳴くような声で聞いてみた。
この時は結構勇気を振り絞ったから、蚊ですらなかったと思う。
ダニの泣くような声。

そうしたらまた、時系列で1から10まで話してくれた。神、再び。

「嫌なことを思い出させてごめん、こんなこと聞いたら嫌われてもう別れることになるかもしれないと本気で思ってた」
とつい言ってしまったわたし。
「こんなことで嫌いになるわけないじゃん。アハハ」とMさん。

器がブラックホール。

そんなこんなで、他にもちょっとした気になることも、気になった瞬間に聞くようにしている。
今までは溜めて溜めて、あることないこと妄想して、駆け引きまでして、失敗してきた。
でも、気になった時にさらっと聞いてしまえば、変な妄想もしないから素直にコミュニケーションが取れると分かった。
うまくいく恋愛というのは、実は大した問題なんて起きない。

20代はヘラヘラ生きてたなぁといつの日かわたしが言った時に、
「20代のぱいなっぷる子に会ってみたい。今よりもっと天真爛漫だったのかな。」
とMさんが言った。
正直、わたしに天真爛漫な要素ってずっと昔から無いと思う。
だって人一倍ネガティブで敏感で細かいと思うから。
自分の性格を表現するとしたら「明るいネガティブ」だ。

でもきっと、いい彼氏ができると、急に欠点がなくなることがあるのかもしれないと思った。
わたしは学生時代以降、家族といても安心できない環境で過ごしてきたから、今はMさんのブラックホール級の器に守られて、きっとあの頃から今までで一番安心した毎日で、のびのびと過ごせているのだろう。



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