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40歳でも彼氏ができた女(1):付き合って初めてのデート。

やっと彼氏ができたわたし。

こんな一言で済ませられるほど、簡単な道のりではなかったのに。
お付き合いが始まるのはなんとも呆気なかった。

まだ敬語。
まだ好きではない。
でも、とっても居心地が良い人。
まだ指先しか触れてない2人。

そんなわたしたちの、付き合って初めてのデート。

こんなにまだ距離がある人とデートなんかできるかよ。
しかもドライブ。無理だ。
お腹下すに決まってる。
乗り慣れない車で酔ったらどうしよう。

めでたくカップルになってから次のデートまでの1週間、わたしの頭の中はお腹を下す妄想で支配されていた。
飲んだこともないストッパを買い、車酔いなんてほぼしたことないのに酔い止めまで買い、バックに潜ませて当日を迎えた。

行き先は水族館。
待ち合わせはお互いの中間地点。

目的地とは逆方向なのに、わざわざお迎えに来てくれた。
わたしはお礼にコーヒーをテイクアウトして、指定された場所へ歩いて行く。
Mさんが車を降りて、向こうから歩いてくる。
車からわざわざ出て来てくれるってナニーーー!
優しい。

そして助手席のドアを開けてくれる。
優しい。

ちなみにこの日から今のところずっと、車に乗る時は必ずまず助手席のドアを開けてくれて、わたしが乗ったらドアを閉めてくれる。
そのあと自分が運転席に乗る。
どういうことなんだろう。
わたしはどこかの国の姫にでもなったのだろうか。

あれだけ不安だったお腹も、やっぱりうんともすんとも言わず平穏だった。

この日はもう、気まずいというか緊張というかとにかくまだ距離を感じていて、ロクに目も合わせられず、魚とばっかり目を合わせて過ごした。

そんなわたしたちだけど、この日はお揃いのキーホルダーを買った。

水族館のお土産って、ぬいぐるみとか小さな瓶にピンクやブルーの砂が入ったキーホルダーとかばかりだから、子供にだけ用意されたものだと思っていた。

なのにふいに、
「記念に何かお揃いのもの買いましょう」
とMさんが言った。
腰を抜かすところだった。
彼氏とお揃いのお土産を買うなんてそんな純粋な思考、わたしはもうとっくに失っていた。
いつの間にわたしの心はこんなにも薄汚れたのだろう。

ここは水族館。
ぬいぐるみでも買うのか?

でもよく見て回ると、大人でも使えるようなかわいいキーホルダーがあって、わたしが気に入ったものを2つ買って、お互い鍵に付けた。
そしてベンチに座って、それを並べて写真を撮った。

わたしを取り巻く世界が平和すぎて、もう心が追いつかない。

Mさんはすごく奥手な人だから、2人の距離が縮まるのにはきっとだいぶ時間がかかるだろう、まぁ気長にいこうと覚悟はしていた。
とはいえ、敬語ではどうも心の距離が近づかなくて話しづらかったから、
「今日の目標は敬語をなくすことです」
と、わたしは合流した時に宣言をしていた。

それなのにこの日は、全く敬語を崩すことができなかった。
自分もずいぶん奥手なんだなと気づく。

でも、この日ひとつ進展したことがある。

手を繋いだ

一日中並んで歩いたのに手を繋ぐ気配すらなくて、Mさんは奥手、いや、自分もなかなかの奥手だなと気づいた時に、このままじゃ赤いスイトピーになってしまうのではないかと焦った。
半年過ぎても手も握らないなんていやだ。
これはわたしからいくっきゃない。

わたしたぶん、今まで自分から初めて手を繋いだことってない。
世の男性は、こうやって手を繋ぐタイミングを見計らっているのかーと、初めて下心丸出し女となった。

そして帰りの車の中でやっと、赤いスイトピーを阻止したのだった。

手を繋ぐだけなのに、こんなに緊張することってある?
これまでなんて、光の速さで手繋がれてた。

帰りはまた朝の集合場所で解散の予定が、
「彼女はちゃんと家まで送り届けないといけないでしょ」と、家まで送ってくれた。
やっぱりわたしはどこかの国の姫になったんだ。

この日、Mさんのことちょっと好きになった。

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