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ノルウェーの認知症ケア施設で働くきっかけ

ノルウェーに移住して早12年。

ノルウェーでは、主に移民の音楽研究プロジェクトに関わってきたのだが、
ここ最近になって日本や海外より、『ノルウェーにおける認知症ケア』や『音楽やアート活動の現状』について質問をうけたり、講義を依頼されることが増えてきた。

音楽とケアは、自分にとって大きなテーマでもあるので、個人で調査をはじめることにした。

ノルウェーにおける認知症ケアは、

  1. パーソン・センタード・ケア (本人の視点や立場を尊重したケア)

  2. ミリュートリートメント(本人を取り巻く社会的・物理的・文化的な環境の調整)

を柱にしているのだが、調査を進めるにしたがって、1のパーソン・センタード・ケアを実現するために、一律的なケアで認知症本人の資源Resourceを奪わないよう、資源志向型Resource-oriented のケアを大切にしていることを知った。

さらに、音楽活動やアート活動も2のミリュートリートメントの一部として捉えられていること、音楽やアートを通じてケア環境を育む協働事業の存在を知った。

協働事業の一つであるアスケルという自治体で実施されている『アクティブケアモデル』は、理学療法士、音楽療法士、アクティビティコーディエーターが協働しながらケアホームでいろんな活動を推進していた。
 
音楽療法士による個別セッション、音楽療法士と理学療法士によるグループダンスセッション、入居者の現在や過去の縫い物や写真をケアホーム内で展示するようなイベント、入居者のリクエストに応えながらレパートリーを練った音楽療法士や理学療法士によるクリスマスコンサート、外部ミュージシャンやアーティストのイベントなど。コンサートやイベントは家族や地域の住民にも開かれていた。

また、音楽療法士が、家族や介護スタッフや看護師と入居者の好きな音楽を共有し、歩行練習に音楽を使ったり、不穏症状を和らげるのに音楽を用いたり、音楽と一緒に記憶をたどってみたり、食事の時間に皆で歌うといった普段の介護への音楽の活用を推進していた。
 
多職種が協働しながら、音楽やアート活動を認知症ケアに活かす可能性を探っているのだ。そんなノルウェーにおける認知症ケアの最前線への興味が深まってきた。

研究者として現場を訪問するだけではなく、日常生活を支援するチームケアの一員となって、音楽やアート活動の可能性を探ってみたい。そんな思いも沸々と沸いてきた。

そこで一念発起して、去年の秋より職業訓練校に入り、ノルウェーの認知症ケア現場に介護スタッフとして入るための準備を始めたのだった。

努力が実り、今月より臨時職員として認知症ケア施設で働き始めている。

これから、NOTEで少しずつ実際の現場での体験等を綴っていきたいと思う。

(写真は職業訓練校のテスト勉強風景。医療の知識を苦手なノルウェー語で学ぶのは至難の連続だったー。)

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