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マリー・アントワネットの秘密の部屋

アントワネットの秘密の部屋と聞くと、プチ・トリアノンや彼女の菜園に思いを馳せるヴェルサイユやアントワネットファンの方はきっと多いのではないでしょうか。

もちろん、もっと詳しく歴史をご存知の方は「居住スペースのことね」とすぐに察しがつくかもしれませんが、彼女の居住スペースはつい数年前までヴェルサイユ宮殿の一般公開コースには含まれておりませんでした。
今も、普通の宮殿用の入場券だけでは入れません。
事前の予約が必要です。

ちょうど、なんとなく点けていたテレビで「あの豪華絢爛さに生活感が無さ過ぎて...」という発言があったので、ふとこのお部屋について、久しぶりに書きたくなりました。

一般公開部分は、いうなればパブリックスペース

そのまんまですね。

ヴェルサイユ宮殿に足を運ばれた方は記憶に残っておいでと思いますが、宮殿には一番有名なあの鏡の間の他に二人が結婚式を挙げたチャペルやいくつかの執務室、ベッドルームを含めたたくさんのお部屋が公開されています。

これらのお部屋はかつてルイ16世とアントワネットの周辺にいた多くの貴族が出入りできたお部屋でもありました。

太陽王ルイ14世時代に、その権威性を象徴するためにたくさん生まれた宮廷内の儀式のひとつには王の就寝や目覚めの瞬間にそうした貴族たちが立ち会う栄誉を得るというものもあり、今もヴェルサイユ宮殿で一般公開されている王妃のベッドなどはそうした儀式用のものです。

実際にはそのベッドで就寝するフリだけして、奥にある居住スペースの方の寝室で休んでいました。

私室スペースは家庭的

「家庭的」といったところであちらは王家、わたしたち庶民のそれとは違うので見る人によれば「豪華」でしょうが「絢爛さ」というものはあまりありません。

公的スペースのお部屋がどこもみな狭くても80名前後は入れるのに比べ、この私的なスペースは20人も入ればぎゅうぎゅう。

お部屋とお部屋を繋ぐ扉は当時の幅広ドレスを着たご婦人であればカニ歩きにならないと容易には通り抜けられない程度の幅のものも多く、なにより装飾は比較的シンプルでかつ彼女たちなりの家族愛にあふれていました。

あるお部屋にあるルイ16世とアントワネット、そしてその子どもたちがくつろいでいる姿を残したオブジェなどはそのいい例でしょう。

そして一般公開部分は比較的多くの貴族が行き来できていましたが、この王家のプライベートルームへは本当に親しい一部の貴族しか招かれませんでした。

仏語または英語のみの案内しかありませんが、ヴェルサイユ宮殿公式ページはこちらです。

こちらの私室にあたるお部屋についてはいずれもお部屋が狭く、扉のひとつひとつの鍵を学芸員さんが開けて閉めてという作業が必要であることもあり、ガイディングツアーへの参加が必須です。
かなり前から予約をしておかないとなかなか入ることができませんので、このお部屋部分を見学したい場合は予め先にこのお部屋の予約をすることを推奨いたします。

ルイもアントワネットも本当は素朴なひとたち

「素朴」をどう定義するかにもよってくるようには思いますが...彼らは長らく揶揄されていたような浪費家ではありませんでした。

アントワネットの代名詞のような有名な「パンがなければお菓子を食べればいいのよ」というセリフも、実は彼女が発したものではありませんでした。

後の人によって歪曲される歴史って怖いですね。

家族で過ごす時間をいつくしみ、大切にしていた、そんな一人の家庭的な側面も有した女性の日常を一瞬垣間見ることができるのがこの私的スペース部分。

COVID-19の影響でまだまだフランスの地を踏むのは難しそうですが、ヴェルサイユ宮殿へ訪れる際にはぜひこちらのスペースの見学もお忘れなく。

ルイやアントワネットだけでなく、彼女たちに仕えていたメイドの日常も垣間見るチャンスもあるので、こうした歴史がお好きな方はきっと終始ワクワクすることでしょう。

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