2023.6.6 広島G7 日本が変えた世界のルール
広島で開催されたG7。
世界から大きな注目を浴びた、『デリスキング』という言葉をご存知でしょうか?
これは、リスクを取り除く、リスクを回避するという意味です。
では、G7の声明書でも触れられている、そのリスクとは一体何なのか?
今回は、6月3日の記事に引き続き、広島G7のポイントについて少し書いていこうと思います。
G7の重要性
国際会議において一番大事なことは、スケールの大きさではなく、約束事を守る意思があるかどうかです。
言った言葉を守るかどうかが、非常に重要です。
例えば、いま世界で一番大きな国際組織は何か?
といえば、国連になります。
しかし、国連安保理の常任理事国でありながら、ロシアはウクライナを侵攻し、自分の作ったルールを守っていません。
第二次世界大戦の直前には、ミュンヘン会議がありました。
しかし、ヒトラーはすぐにそれを破ったわけです。
なので、首脳会議だから凄いとか、偉いとか、そういうことはありません。
会議の重要性は、会議の参加メンバーが、お互いに得たコンセンサスを守るかどうかということになります。
成功と言えるG7
そういう意味では、前回の岸田首相側から見た政治ショーともいえるG7とは違う側面から見た場合、今回の広島で開かれたG7は成功だと言えます。
なぜかと言えば、今回の会議は参加各国が皆、問題があると思って集まっています。
その問題廃絶に対しては、それなりの熱意があると解釈して良いと思います。
今回のG7の主役は、間違いなく岸田首相とゼレンスキー大統領です。
対して、悪役はロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩、そして中国の習近平です。
この悪役の中で、一番大きな問題はロシアではなく中国です。
ロシアはまだ戦力はありますが、侵攻当初から比して士気の低下がかなり見られますし、後はどのようにウクライナを再建するかなど、やるべきことはほぼ決まっています。
しかし、それに対して中国は、非常に厄介な存在であるにもかかわらず、中国のことを問題ではないと言ったり、チャンスだと言ったりすることがあります。
問題を問題だと言えないことが一番の問題なのです。
そういった意味でも、今回のG7で一番の大きな成果は、この中国のリスクを明確にしたことです。
デカップリングからデリスキングへ
声明書の中には、中国がリスクである、問題であるという表現はありません。
しかし、声明書を読んでいくと、中国がリスクであるということが読み取れます。
この声明書の中で重要な言葉は、デリスキング(Derisking)という言葉です。
これは、リスクを除去するという言葉です。
これまで世界のどの政府機関も、中国とデカップリングをすると正式に認めた機関は一つもありません。
しかし今回、デリスキングが必要だと正式に認めました。
声明書の中にも、しっかりと書いてあります。
では誰がリスクか?
というと、基本的には中国です。
今回のサミットは、20ヶ国前後の首脳が集まっています。
その中で、少なくともトップ7ヶ国としては、リスクがあって、それを除去しなければならないということを認めているわけです。
中国への言及
G7で中国のことを問題にし始めたのは、つい最近のことです。
2021年、声明文の中で、中国のことを言及したのは3回ありました。
そして今回は、20回になっています。
中国と名指ししてはいませんが、中国を指していることもたくさんあります。
例えば、開かれたインド太平洋の重要性、そして法の支配に基づき、主権領土の一体性と基本的人権と自由を守る。
これは、明らかに中国のことを指しています。
インド太平洋の中で法を守らないのは、中国だけだからです。
経済安全保障については、“経済的な脆弱性を武器にすることに対する防御”とあります。
この経済的な脆弱性を武器にしているのも中国です。
世界のサプライチェーンにおける中国への依存を減らし、信頼できるサプライチェーンを構築していこうということです。
さらには、東シナ海・南シナ海を深刻に懸念するとあります。
どういうものを懸念するかというと、力による一方的な現状変更を懸念するということです。
東シナ海は尖閣諸島、南シナ海では中国が軍事拠点をたくさん作っています。
そして、台湾海峡の平和と安定を再確認すると述べられています。
台湾に関しては岸田首相、バイデン米大統領、ショルツ独首相が声明文だけでなく、口頭でも強調しました。
さらには、チベット・ウイグル・香港の人権にも言及し、中国の闇警察についても間接的に言及しました。
これに対し、中国外交部は、このような問題を大きく取り上げるとは、汚名化と内政干渉だと発言しました。
中国側の反応を見ても、今回のG7のインパクトがどれくらいあったか、ハッキリと分かります。
以上のように、今回のG7は画期的でした。
デリスキングを明文化したことで、中国とのデカップリングは一歩大きく前進したと思います。
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