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2022.2.4 全国の社説が完全一致~メディアのカラクリ~

英国のコンサートテロと日本の「テロ等準備罪」衆院通過

少し前の事件なので記憶に残っている方もいるとは思いますが、2017年5月22日夜、英国マンチェスターのコンサート会場で自爆テロとみられる爆発事件があり、少なくとも22人が死亡し、59人が負傷しました。

当時、折りしも日本では『テロ等準備罪』新設法案が衆院本会議を賛成多数で通過したところでした。

この2つを結んで、石川県金沢市に本社を置く地方紙である北國ほっこく新聞の5月24日付の社説には、

<「英国で爆弾テロ国際条約で日本も備えを」
訪日外国人数が年間2千万人に達しようとするなか、犯罪組織の情報共有は極めて重要だ。
日本も国際組織犯罪防止条約の締結を急ぎ、テロ抑止に役立てたい。
車やナイフなどを使った単独犯によるテロは摘発が難しいが、組織犯罪は準備段階で発覚するケースも多く、フランス政府は先月、南東部の都市マルセイユで、大統領選候補者らを標的にテロを計画したとして、男2人を拘束した。
フランスには「凶徒の結社罪」があり、「重罪等の準備のために結成された集団または、なされた謀議に参加したとき」に適用できる。
英国には「共謀罪」があり、「ある者が他の者と犯罪行為を遂行することに合意したとき」に逮捕し、取り調べが可能である。
欧米先進国にはこうした「共謀罪」が既にあり、犯罪の摘発に威力を発揮している。
日本でも共謀罪の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する法案が
衆議院本会議で可決され、187の国・地域が参加する国際組織犯罪防止条約の締結まであと一息のところまできた。
各国と連携して監視の網を広げる必要がある。>

と掲載されています。

国際組織犯罪防止条約は2000年11月、国連総会でテロ組織などの国際犯罪に対応するために採択されたもので、既に187の国・地域が締結し、国連加盟国で未締結なのは日本、イラン、ソマリア、コンゴなどわずか11ヶ国に過ぎません。

この条約の締結には共謀罪を盛り込んだ国内法の整備が必要ですが、日本では過去3度も廃案になって、この条約を締結できていませんでした。

国際組織犯罪防止条約を締結していないと、どのような問題が起こるのか。

例えば、ある国際テロ集団が東京オリンピックで来日する英国選手団にテロを計画し、それを察知した英国の警察が『共謀罪』で犯人の検挙を日本の警察に求めても、日本では該当する法律がないため、阻止できない恐れがあります。

もし、そのテロが実行されたら、日本国民も巻き添えになる可能性があります。

さらに、国際テロ集団について警告を受けながらも、阻止できなかった日本は国際的な非難を浴びるでしょう。

こういった背景を考えれば、この北國新聞の社説は至極真っ当な意見を
述べたものだという事が分かります。

社説のタイトルまで同じ地方紙

この法案に関して、全国紙では読売、産経が賛成、朝日、毎日、日経が慎重・反対と従来の如く2つに分かれましたが、興味深いのは地方紙の動向です。

賛成は上記の北國新聞と同社の系列の富山新聞のみ。

主要地方紙35紙は軒並み反対でした。

特に目立つのが、社説のタイトルまで同じ地方紙が幾つもあることです。

東奥とうおう日報    基本的人権との摩擦生む
茨城新聞    基本的人権と摩擦生む
下野しもつけ新聞    基本的人権との摩擦生む
岐阜新聞    基本的人権との摩擦生む
日本海新聞   基本的人権との摩擦生む
長崎新聞    基本的人権との摩擦生む
大分合同新聞  基本的人権との摩擦生む

青森県の東奥日報の社説の中心的な主張点を引用すれば、

<通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。
屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。
プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。>

「目を光らせたり、隠し撮りしたり」
となかなか文学的な表現ですが、中国以外の世界の187の国と地域で、そういった事が日常的に行われているとは聞いた事がありません。

茨城新聞では、タイトルは『基本的人権と摩擦生む』と『の』の字が抜けていますが、文章は句読点に至るまで完全に同じです。

<通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。
(中略)
憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。>

「共同通信社から配信される『資料版論説』をほとんどそのまま掲載」

日本各地の地方紙の社説が、なぜこれほど見事に一致するのか、答えは単純です。

日本の全国紙や各県の地方紙にニュースを配信している共同通信が、『資料版論説』という『社説を書く際の参考資料』を配信しているからです。

山梨日日新聞の元論説委員長は、
「社説は委員長ひとりにすべて任され、県内のテーマを取り上げるとき以外は、社説・論説のための参考資料として共同通信社から配信される『資料版論説』をほとんどそのまま掲載していた。
その場合、私がやるのは、行数調整のために言い回しを変える程度だった」
と語っています。

前節で紹介した各地方紙の社説タイトルの見事なまでの一致は、この指摘が事実である事を示しています。

経営規模の小さい取材陣容も限られた地方紙が、全国ニュースや国際ニュースの報道に通信社に頼るのは当然です。

世界各国の通信社は、そのためのニュース配信を行っています。

しかし、社説まで配信するのは世界でも珍しいといいます。

さらに問題なのは、日本のほとんどの地方紙、ローカルテレビやラジオ放送局が依存している共同通信の報道や社説が異常に偏向していることです。

戦中戦後に設立された報道統制システム

まず、共同通信がどれほどの影響力を持っているのか見ておきましょう。

共同通信は『全国の新聞社、NHKが組織する社団法人」として1945年に設立され、加盟社はNHKを含め56社、加盟社が発行する新聞は67紙に及びます。

県紙と呼ばれる地方紙が各都道府県ごとに、ほぼ一社ずつ加盟しています。

日本の一般紙全ての発行部数約4700万部のうち、全国紙5紙(朝日、毎日、読売、産経、日経)が合計2800万部で、地方紙は合計1900万部程と4割を占めています。

全国紙は、ある程度の市場競争もしており、その報道や論評については読み比べも可能です。

しかし、多くの地方紙は県内独占に近く、読者は県紙の論説以外に触れる機会が多くありません。

そもそも、地方紙が概ね一県一紙になったのは、戦時中の新聞統合によるものです。

戦前は同一県内に3、4紙が存在していることも珍しくありませんでしたが、戦時下における情報統制を目的にした1941(昭和16)年12月の新聞事業令によって、地方紙はその多くを整理・統合され、最終的に都道府県ごとに1、2社の新聞社しか発行を許可されなくなりました。

多くの新聞は、戦時中の『軍国主義』による報道統制を悪しざまに批判しますが、現在の地方紙の一県一紙独占体制そのものが、その報道統制の産物なのです。

共同通信が終戦直後の1945年に設立された点にも留意する必要があります。

共同通信は占領軍の情報統制の手段の一つとして設立され、GHQ編集の『太平洋戦争史』を翻訳して各紙に配信しました。

共同通信と一県一紙の地方紙の体制は、まさに戦中戦後に設立された報道統制システムなのです。

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「困った地元紙」「赤旗愛媛版」

この報道統制システムの要である共同通信が、どのような偏向報道をしているのか一例を紹介します。

以下は、2004(平成16)年、東京都中央委員会が扶桑社の『新しい歴史教科書』を採択した際の報道です。

(読売新聞)
<東京都教育委員会は26日午前、台東区に来春開校する都立中高一買校で使う教科書として、「新しい歴史教科書をつくる会」(八木秀次会長)のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史教科書を採択した。>

(朝日新聞)
<(事実を述べた後で)扶桑社版教科書をめぐっては「戦争を美化している」などの批判もあり、全国的にはほとんど使われていないが、都立の普通校での採択は初めて。>

(共同通信)
<(事実を述べた後で)扶桑社版は「戦争賛美」「国粋主義的」との指摘があり、中国や韓国が「歴史を歪曲している」と反発、外交問題になった。>

読売新聞は淡々と事実のみを伝えていますが、朝日新聞は「戦争美化」という概括的な批判のみを伝え、賛同の声は紹介していません。

両論併記の原則を無視した一方的な報道です。

共同通信社は、さらに中国や韓国の声まで伝えています。

朝日新聞以上の偏向報道です。

この26日から翌日にかけての2日間で、共同通信は11件もの記事のほとんどが批判的な内容のものを配信しています。

ニュースの配信を生業とする通信社にしては、異様な入れ込みようでした。

こういう偏向記事をそのまま使う事の多い地方紙も、当然歪んだ報道姿勢となりやすく、北海道全域で圧倒的シェアを持つ『北海道新聞』は、心ある道民から「困った地元紙」と言われ、愛媛県で6割近いシェアを持つ愛媛新聞は「ミニ朝日」「赤旗愛媛版」とも呼ばれています。

沖縄には沖縄タイムスと琉球新報という2つの県紙がありますが、左翼偏向ぶりを競い合っているかのようで、尖閣危機は報道せず、米軍基地の県外移転のみを叫んでいます。

北國新聞の鋭い論法と高い見識

上述の新聞社に比べ、先に紹介した北國新聞は数多くの偏向地方紙の中でも真っ当な報道と論説を掲載している例外的な存在です。

その鋭い論法と高い見識には賛嘆を禁じ得ません。

一部を紹介すると、

<竹島の領有権を主張する日本に対して、韓国側は「植民地侵略を正当化するもの」などといって抗議しているが、日本が竹島の編入措置をとったのは
韓国併合以前であり、そうした非難は当を得ていない。>

<憲法89条は『公の支配』を受けない教育などの事業に税金を充ててはならないと定めている。
朝鮮学校が『公の支配』下にあるとは言い難く、国民の税金で就学支援を行うのは、憲法上問題があるのではないか。>

<九条の規定、とりわけ二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という規定が主権国家の根本と矛盾するのは、今や日本国民の多くが理解するところだ。
自国や自国民を侵略等々から防衛しないという主権国家というのはあり得ないからである。>

こうした鋭い主張と共に、北國新聞は地元発の情報発信にも熱心です。

例えば、
・県支援で644組成婚/縁結び役育てた成果出た(H25.05.24)
・自衛隊基地で心身鍛え輪島進出のサンテック、新人研修で体験入隊(H29.05.25)
・森崎(解体・土木工事・産業廃棄物処理企業)が舟橋で農園、雇用創出企業と地域、農業で一体(H29.05.25)

こうした地元発の豊かな情報発信こそ、全国紙ではカバーできない地方紙の真骨頂でしょう。

良識ある国民は見識あるメディアを育てる

共同通信―独占地方紙という左翼偏向独占報道体制をいかに突き崩すべきか。

効果的な戦術は、市場競争を導入して質の高いメディアによって、粗悪なメディアを駆逐するというものです。

尖閣諸島が属する八重山市の地元紙『八重山日報』は、尖閣危機の報道を続けてきましたが、最近沖縄本島版の発行を開始したところ、購読申し込みが殺到して配達員の確保に悲鳴を上げているといいます。

もう一つが電子版の活用です。

北國新聞は、スマートフォンで読める電子版を月額300円で配信しています。

同地出身で他の地域に暮らしている人々には、是非ふるさと発の豊かな情報と見識ある論説を電子版で読んでもらいたいと思います。

各地域の歴史と文化に根ざして独自の発信のできる地方紙は、インターネットが発展していっても存在価値を失いません。

良識ある国民は見識あるメディアを育て、見識あるメディアが良識ある次世代国民を育てる。

それが自由民主主義社会を護る国民の責務であると思います。

今回も最後までお読み頂きまして、有り難うございました。

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