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2020.8.26 香港『民主の女神』逮捕後の影響

香港の『民主の女神』と呼ばれる周庭(アグネス・チョウ)氏と反中共紙「蘋果日報(アップルデイリー)」の創刊者である黎智英(ジミー・ライ)氏が8月10日に逮捕され、12日未明に一旦保釈された出来事は、まだ皆さんの記憶に新しいと思います。

今回は、この件について考え、書き綴っていこうと思います。

まず、これまでの流れを復習すると…、

2019年6月9日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案に反対する103 万人も参加した大規模デモが起こる。

6月15 日、行政長官のキャリー・ラム氏が、「逃亡犯条例の改正を延期する」と発表したが、それでもデモは終わらず。

6月16日、200万人規模のデモが起こる。

7月1日、一部のデモ隊が立法会(議会)を占拠。

9月4日、行政長官のキャリー・ラム氏が、逃亡犯条例の改正案を正式に撤回すると発表。

しかし、デモ隊の要求は5項目に増えているので、デモは止まず。

5項目の要求とは、

①逃亡犯条例改正案の完全撤回⇒実現
②平和的な市民活動を「暴動」と定義しないこと
③デモ参加者の逮捕と起訴をやめること
④職権を濫用乱用した警察の暴行を追及すること
⑤行政長官辞任と民主的選挙の実現

今年になると、新型コロナパンデミックの影響で、大規模デモは起こらなくなりました。

一方の中国政府は、逃亡犯条例よりも、もっと過酷な弾圧策を考え出しました。

それが、2020年6月30日に成立した【香港国家安全維持法】です。

この法律は
「国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託」
の4つを犯罪行為と定めています。

今回、周庭氏や黎智英氏が逮捕されたのは、香港に介入する外国勢力と結託したという法律に違反した容疑です。

中国政府が、『香港国家安全維持法』を作った主な理由はアメリカに対抗するためですが、中国政府も習近平も2019年の香港の大規模デモの黒幕はアメリカだと考えています。

これは、彼ら自身が言っています。

8月1日(木)19時15分に配信されたCNN.co.jpを一部抜粋して紹介すると、

《香港のデモは「米国の作品」、中国が指弾

香港(CNN)中国の華春瑩報道局長は8月1日までに、「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモなどが過去2カ月間続く香港情勢に触れ、「誰もが知っているように、米国の作品である」との見解を示した。》

2019年9月26日(木) 11:43に配信されたFNNでも、
《【独自】習主席「一部外国勢力が混乱引き起こしている」香港デモで“アメリカ批判”

香港の抗議デモについて、中国の習近平国家主席が、安倍首相との会談でアメリカを念頭に、「一部の外国勢力が混乱を引き起こしている」と批判していたことがFNNの取材でわかった。》
と、習近平自身が安倍首相に告白しています。

《香港で大規模デモが始まった2019年6月、大阪で行われた日中首脳会談で、安倍首相は「早く落ち着くことを願っている」との考えを伝えた。日中の関係筋によると、これに対して習主席は「一部の外国勢力がかき乱し、混乱を引き起こしている」と、アメリカを念頭に不満を示し、「香港の件は、完全に中国の内政だという事実を変えることはできない」と強調したという。》

というわけで、中国政府は香港デモについて
アメリカ→香港民主派→100万人〜200万人のデモ参加者
という流れでみています。

香港国家安全維持法によって、アメリカと香港民主派の繋がりを断てば、
「デモもなくなるだろう」
という思惑です。

では、今回の周庭氏や黎智英氏逮捕の影響を考えてみましょう。

まず、短期的影響について…

香港国家安全維持法によって、『反政府デモ』は禁止されました。

これからは、デモに参加すると逮捕される可能性が高いですし、周庭氏や黎智英氏逮捕で、香港国家安全維持法は実際に適用されることが分かりました。

これで、香港で大規模デモはなくなっていくでしょう。

「法律に違反してもデモに参加する」
「逮捕されてもデモに参加する」
という人は、そう多くないはずです。

これで中国政府は、“大規模デモ阻止”という目的を達成します。

これが、短期的影響で“中国政府の勝利”と言えるかもしれません。

しかし、長期的影響について見ると中国政府には不利です。

そもそも、香港国家安全維持法の成立と今回の逮捕劇で、中国の異常性が全世界に知れ渡ってしまいました。

今、世界は米中の覇権争いを軸に回っています。

そして、その他の国々は皆、
「アメリカに付くか?それとも中国に付くのがいいのか?」
と悩んでいます。

中でも、米中以外の大国群である日本、欧州、インド、ロシアがどちら側に付くかは、とても重要なことです。

これらの勢力がどちらの側に付くかで、米中の勝敗が決まると言っても過言ではありません。

周庭氏や黎智英氏の逮捕は、特に日本と欧州で非常にネガティブな反応を引き起こしました。

今回の件で、米中間をフラフラしていた日本の政治家も、
「やっぱり中国は異常。アメリカの方がマシだ」
となっていくでしょう。

欧州でも同様の動きがみられます。

つまり、中国は香港大規模デモを抑え込むことに成功はしたものの、その一方で日本や欧州をアメリカ側に走らせ、さらにインドまで離れてしまったのです。

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