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2020.9.7 2年越しの暗殺事件:真犯人の正体とは...

ロシアスパイを襲った悲劇…
国家間で食い違う“報道のカラクリ”

2018年3月4日(日)
暖かな春の陽気を感じる穏やかな休日…。
イギリスの小都市ソールズベリーでは突然、街中にサイレンが鳴り響いた。

そして、この小さな街は“二重スパイ”を巡る国際情報戦へと巻き込まれていくことになる…。

今回は、この街で起こった事件を焦点に書き綴っていこうと思います。

ショッピングセンター前のベンチで、泡を吹いて倒れていたのは、あるロシア人の父親と娘…。
2人はすでに意識不明の重体だった。

後の捜査で、自宅のドアノブから過去にロシアが製造していた高濃度神経剤“ノビチョク”が検出…。
なぜ彼らは祖国ロシアに狙われたのか?

そのわけは…、父親のセルゲイ・スクリパリ氏はかつてロシアを裏切り、イギリスに寝返ったスパイだったことにある…。

それらの事実から、この事件は、“ロシアの仕業”として世界中で報道され拡散されていった…。

しかし……。

その後の調査で、暗殺に使われた毒薬についての不可解な事実が見つかった。
被害者の様子が、“ノビチョク”によるものとは異なるという情報が、製造元のロシアから出てきたのだ…。

食い違うロシアとイギリスの主張。
小さな街で起きた不可解な事件は、大国同士の争いに発展していく…。

その詳細を紐解いていくと、私たち日本人にも深く関係する…。
支配者たちの洗脳操作の実態が見えてきた…。

この事件の主役であるスクリパリ氏は、元々ロシアの情報機関で大佐まで務めていた人物だったが、1995年、イギリスの情報機関:MI6にスパイとしてリクルートされる。

約9年もの間、ロシアのスパイになりすまし、機密情報をイギリスに提供していた…。

それを知ったロシアは、彼を国家反逆罪で起訴するも、その後、国家間で合意したスパイ交換協定により釈放…。

彼はイギリスに亡命し、家族と平和な生活を送っていた……

かのように見えた…。

平和に思えた生活が一転。

過去3年のうちに、彼の身内に次々と不自然な死が襲う…。
まず、実の兄が急激に体重を落とし死亡。
実の息子も、旅行中に突然の肝機能不全で死亡。
さらには、妻も突然の癌で死亡。
彼は、相次ぐ身内の不可解な死に、恐怖と疑いの気持ちで怯えていたという…。

そんな中、娘と出かけたショッピングセンターで、遂に自分にもその刃が向けられることとなる…。

この事件について、ロンドン警視庁の調べによると、
「スクリパリ氏の自宅玄関のドアノブから、高濃度の神経剤が検出された」
と発表…。

当時、イギリスのメイ首相は議会の場でこう発言した。
「イギリスの地で軍用レベルの神経剤が使われた。これは単なるスクリパリ氏に対する攻撃ではなく、イギリスに対する無差別で無謀な攻撃だ!使用された神経剤“ノビチョク”は過去にロシア政府が製造しており、かなりの確率でロシアが関わっている!」

イギリス大手のBBCをはじめとするメディアは、何の疑いもなく、その発言を支持…。
すぐさま『ロシア犯人説』を世界中に拡散していく…。

イギリス首相の発言を後押しするように、アメリカ政府もその見解を支持…。
「この事件にはロシアが関与している可能性が高い。我々はイギリスと共にあり、引き続き緊密に対策を練っていく」
と。

さらには、欧州を代表するメディアAFPも、
『英政府の見解:ロシア政府の関与があったことはほぼ確実』
と報道した…。

欧米を中心とした世界各国のメディアが、『ロシア犯人説』を報道した影響を受け、世界27の国々がイギリスと連携…。
合計150人以上のロシア外交官を追放する報復措置へと発展し、ロシアと欧米諸国の関係は戦後最悪となった…。

世界の誰もが
「ロシアの独裁者プーチンの指示の下、この暗殺事件を起こした」
と信じる中、肝心のロシア国内で『ロシア犯人説』を信じる人は、ほとんどいなかった…。

ロシア大手メディアのスプートニクでは、
「同事件はイギリス側の自作自演だ!サッカーW杯のロシア大会開幕を前に、欧米メディアがロシアの信用を失墜させる全面的なキャンペーンを行った」
と、ロシア外相の発言を全面的に報道…。
さらには、ロシアの関与を否定する別の主張も報道した。

「ロシアは“ノビチョク”の生産を中止したばかりか、その全ての備蓄を合意に従い、国際機関の管理のもと廃棄した」

理由はそれだけではない…。

「“ノビチョク”を一滴でも触った人は1分以内に死亡する。スクリパリはドアノブに塗られたとされる“ノビチョク”に触ってから、何時間も経った後に倒れている。イギリス政府の断定は矛盾が多すぎる」

ロシア国営テレビのロシア24は
「イギリス当局やメディアがロシアを悪者扱いしている」
と非難…。
番組に出演しているキャスターも
「イギリスの新たな陰謀論だ」
と発言した…。

確固たる証拠はないものの、これらの報道からロシア国内では
「ロシアの犯行に見せかけた挑発行為」
「イギリス情報機関:MI6の仕業」
と信じる国民が大半だった…。

そして、事件から1ヶ月が過ぎたある日、ロシアの無実を後押しする重要な証拠が発見される…。

「イギリスが調べた神経剤の調査結果から、“ある重要な情報”が抜け落ちている」
というもの…。
ロシア外相が、証拠付きで語った報道内容によると、
「スイスの権威ある研究所によると、暗殺に使用された物質は“BZ”と呼ばれるものであった。この物質は、過去にアメリカで発見された物質で、アメリカとイギリスの軍で採用されていたものである。イギリス政府は、この分析結果を意図的に発表しなかったのだ。イギリスが主張する神経剤“ノビチョク”は触れた直後に死に繋がるが、スクリパリ氏は、何時間も経ってからショッピングセンターで倒れている」

“BZ”の方は、30~60分後に効き始めることから、
「この事件のケースでは“BZ”を使ったと考えるのが適切であろう」
と。

強力な証拠を得たロシアは、
「ロシアが事件に関与したというのはイギリスのプロパガンダだ」
と、各国の大使館からTwitterによるメッセージを世界に拡散…。

ロシアの外相はイギリスBBCのインタビューに応じ、ロシアの関与説を真っ向から否定したどころか、今回の事件には、
「イギリス情報機関:MI6が関与しているのではないか?」
という疑いも漂わせた…。

小都市で巻き起こった大国同士の情報戦…。

肝心の事件の真相は謎のまま、その究明の目処は立っていない…。

ロシアの犯行だと主張するイギリス。
イギリスの犯行だと主張するロシア。

事実は1つしかないにもかかわらず、情報を流す国の都合によって、事件の犯人さえも大きく変わってしまう…。

最後に、この事件について日本ではどう報じられていたかというと、イギリスのBBCを始めとする欧米メディアの見解を中心に報道。
『ロシア政府の支援を受けた何者かが殺害を図ったとして捜査を進めている』(産経新聞)
『英首相の発言:暗殺未遂事件 ロシア情報機関員の犯行』(日本経済新聞)
『元スパイ暗殺事件 深まるロシアの闇』(毎日新聞)

日本の大手メディアを情報だけでは、ロシア側の主張はほとんど報道されず、私たちの耳に届くことはありませんでした…。

これが世界情勢の実態なのです。

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