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2022.6.12 フェルメールと“着物”の意外な関係

『真珠の首飾りの少女』(1666年頃 デン・ハーグ、マウリッツハイス美術館)

こちらの絵画をご覧下さい。

フェルメールの代表作『真珠の首飾りの少女』です。

この絵画の“不思議な点”にあなたは気付くことができますか?

じっくりと見て、是非考えてみてください…。


少女の服装にご注目下さい。

どこかで見覚えはありませんか?

この服装、なぜか日本の『着物』とそっくりなのです。

実は、着物が描かれているのは、この作品だけではありません。

『絵画芸術』(1667年頃 ウィーン、美術史美術館)
『天文学者』(1668年 パリ、ルーヴル美術館)
『地理学者』(1669年 フランクフルト、シュテーデル美術館)

これはフェルメールの作品のごく一部ですが、複数の作品において日本の『着物』が描かれています。

一体なぜフェルメールの作品に、『着物』が描かれているのでしょうか?

その理由の一つは、江戸時代の日本が、オランダと貿易をしていたこと。

フェルメールは、オランダ・デルフトの画家です。

日本の新しい服装がオランダに入ってきたことを、この絵から読み取ることができます。

しかし、それだけではありません。

絵画に描かれるものには、“何らかの意味やメッセージ”があります。

当時の日本は、オランダに大量の銀を輸出していました。

この日本の銀があってこそ、フェルメール時代のオランダは莫大な商取引が可能になり、貿易商人が大活躍する一大海洋国家となったのです。

フェルメールが描いた『着物』から、彼が日本の存在を強く意識していたことを感じ取ることができます。

さらに面白いのは、着物を『学者』に着せたというところです。

上で紹介した2つの絵画に描かれているのは、天文学者と地理学者です。

この学者のモデルになったのは、『無神論者』と思想界から排撃された哲学者のデカルトだと明らかにされています。

キリスト教世界で『無神論』を唱えたデカルトに、日本の『着物』を着せた意味とは…?

ここに、フェルメールの思想がよく表れています。

デカルトは『汎神論』を唱えました。

これは、“森羅万象あらゆるものが神である”という考え方です。

この考え方、私たち日本人には非常に馴染みが深いと思いませんか?

『八百万の神』という日本的な考え方と非常に近いのです。

このような考え方のデカルトに、日本の着物を着せた絵をわざわざ描いたということは…?

このようなフェルメールの表現には、デカルトの思想への共鳴、日本の思想への共鳴が示されているのではないでしょうか。

知識があれば、1枚の絵から、これだけのことを読み取ることができます。

さらに、フェルメールの他にもゴッホ、モネ、セザンヌなど…。

実は、数々の西洋美術の巨匠たちが、作品の中に『日本』を暗示するものを描いていることが知られています。

西洋の美術作品を通して日本の歴史を覗いてみると、これまでとは違った新しい発見があるかもしれません。

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