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「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは、
「不思議な薬箱を開く時」です。
甘いお薬、苦いお薬。
いろいろありますが、美味しいお薬なんて、
あるのでしょうか?
薬膳料理は、美味しく作られていますが、
あれは、健康維持のため、
または、特定の病気を持っている人たちのためのものです。
では、今日もお薬箱を開けてみましょう。

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「植物のように生きられる薬」

このお薬は、ローマ時代に発想され、
実際に開発、完成しましたのは、
教皇クレメンス3世の呼びかけで発足した、
バルト十字軍の時代です。
リヴォニア帯剣騎士団、
正式名称リヴォニアのキリスト騎士修道会が、
異教徒との激しい小競り合いを繰り返していた頃のこと。
記録には、ふらりと現れた医師、
ウシャウレイ・セヴィーレが、
戦争において、重要かつ一番に深刻になりがちな、
食糧や睡眠の問題を
速やかに解決する薬があると、
騎士団長、アルフレード・ハンケルに申し出たそうです。
その薬を服用すれば、
体調の不良や怪我を
植物のように、土に埋めることで、
治してしまう上に、
水分を摂取したり、日光浴をするだけで、
食べる必要はなくなると言うのです。
疑いを持たれるのは当然です。
しかし、ウシャウレイは、
騎士団長の前で、持参した薬を服用し、
土を掘らせて、その中に横たわり、
埋めてしまうように言いました。
一日に一度、土の上から水を撒いてくれ、
それだけでいいと。
驚きの中、ウシャウレイに土がかけられ、
完全に埋められてしまいました。
皆は、とりあえず水を撒いていましたが、
ウシャウレイは、死んでしまったものと思われました。
しかし、一週間後、土の下から、
ウシャウレイは、元気に出てきたのです。
気持良さそうに太陽の光を身体に浴びるだけで、
とても快調だと笑いました。
騎士団長は、ウシャウレイに大枚を払い、
その薬を調剤させることにしたのです。
不死身の騎士団と恐れられた理由は、
この薬のおかげと言えるでしょう。
兵站にかかる負担は、ほとんど無いわけですから、
勝ち戦になる確率は否応なく高まります。
しかし、時代とともに異教徒との戦いは平定し、
バルト十字軍が歴史の闇に消えていったように、
謎の医師、ウシャウレイの存在も、
消えてしまいましたが、
この薬の調剤法は、ドイツの大学の書庫に残されていました。
それも、異教徒の資料としてです。
効果が効果だけに、魔術的に思われてしまったのでしょうか。
では、調剤料をご紹介しましょう。

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「植物のように生きられる薬」処方

鯨の肝油・・・・・・・・・・・小カップ2杯
アサラバッカの煎じ汁・・・・・小カップ1杯
ティシマールの実・・・・・・・片手のひら分
胡桃の煎じ汁・・・・・・・・・小カップ1杯
ワイルドタイムのピューレ・・・大匙1杯
リス肉・・・・・・・・・・・・1匹分
黒牛のバター・・・・・・・・・大匙1杯
蜂蜜・・・・・・・・・・・・・大カップ一杯
ブランブル・・・・・・・・・・片手のひら分
アーモンド油・・・・・・・・・小匙1杯
クサリヘビの胆嚢・・・・・・・1個
芥子の実油・・・・・・・・・・大匙1杯

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諸注意
クジラの肝油は、新鮮なものを使用し、
煮過ぎないように注意しましょう。
調剤料を煎じたり、煮たりする器具は、
すべて鉄製のものを使用すること。
蜂蜜は、5月に採集しましょう。
すべてを丹念に混ぜ合わせ、
澱や滓が残らないように、
何度か濾しましょう。

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備考欄
植物のようになるということです。
多少のケガや体調の不良も、
大地や太陽の恩恵だけで、
治癒されてしまうなんて、
たしかに、奇跡に近い効果に思えます。
しかし、このお薬の困った副作用に、
一度でも服用すると、
2度と元の体質には戻れない。
つまり、一生涯、植物のように、
生きていかなくてはならないのです。
口から摂取するのは、水だけ。
固形物を消化するシステムは、
見る見るうちに退化してしまうとのこと。
食べることにまったく興味や楽しみもない。
そんな方なら、いいお薬かもしれませんが、
人生の楽しみの一つとしている方には、
かなり辛い事態になってしまいます。
記録には、肌の色は生白くなり、
活き活きとした風情も消え、
まるで死者を見ているようだと記されています。

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