沢渡あまね氏が語る!半径5mからはじめる営業DX|まずはデジタルを体験せよ
こんにちは。イノベーションの池上です。今回は、作家でありワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまねさんに『半径5mからはじめる営業DX(デジタルトランスフォーメーション)』について聞いてみました。
この記事で分かること
・DXって結局なんなの?それっておいしいの?から、これがDXなんだ!と腹落ちします。
・営業組織にDXを適用したら、どうなるの?の成功事例が分かります。
・何からはじめればいいですか?大変ですよね…が、なるほど!これならはじめられる!と思えます。
沢渡あまねさんの紹介
沢渡 あまね(さわたり あまね)
作家/ワークスタイル&組織開発専門家
あまねキャリア代表取締役CEO、なないろのはな取締役(浜松ワークスタイルLab所長)、NOKIOO顧問ほか。
350以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。
【著書】
『バリューサイクル・マネジメント』『職場の科学』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』ほか。
note|沢渡あまね
Twitter|@amane_sawatari
世界一分かりやすい『DX』解説
DXっていろんなところで定義付けがされていたり、小難しく解説がされていたりしますが、はっきりいって明確な定義はないんです。それぞれの業界や職種によって環境が違い、求められていることが違うので、違って当たり前なんです。
なので、一つの定義に引っ張られるのではなく、自分たちの課題解決に役立つと思えるものを自分たちなりに定義づけすればいいと思います。私は難しいことを考える必要はないと思っていて、「DXとは何か?」という問いには、つぎのように解説しています。
【DXとは(沢渡の定義)】
垣根を越えて、新たな「勝パターン」を生み出すこと。
ー垣根を越えて
自分の組織内の部署間、組織外の人たちと垣根を超えられているだろうか、垣根を超えるためのハードルはないだろうかを考えてみてほしいです。例えば、テレワークでコミュニケーションをする機会が少ない、データを一元化していないから情報共有がうまくいかない、というのが代表的な組織内部の垣根です。そして、潜在顧客などターゲットになり得る人と接点をもてていない、あるいは情報をリーチさせられていない。これらは組織外の垣根と捉えることができます。
ー新たな勝ちパターンを生み出す
今までの仕事のやり方が負けパターンになっていないか、必要な人材が採用できているのだろうか、ビジネスモデルや雇用、売り方などが今も勝ちパターンなのかも改めて考えてみましょう。
これからの時代、新たな勝ちパターンはイノベーションによってもたらされます。イノベーションは単体では起こらないものなんです。自分と他人、自部署と他部署、自社と他社、自社と個人(フリーランスなど)のように、越境して他とつながりコラボレーションをすることよってイノベーションが生まれる。そうして、既存の問題や課題を解決することが出来たり、新たな価値を創出することが出来ます。
垣根を越えていける環境や風土があることが、これからの勝ちパターンの前提条件になります。そして、現代では「垣根を越える」一番の近道がITを利用することなんです。
SlackやTeamsなどのコミュニケーションツールを利用すれば、部署を越えたコミュニケーションが円滑に行えます。地方企業が首都圏の企業にものを売ることもITを活用すれば実現可能です。だから、デジタルワークシフトが必要なんです。
これまでの話のまとめです。
DXという手段を使って、何ができるのか
これまでの話をまとめると、DXって手段なんです。じゃあ、何のためにするのか、目的はなんなのか、6つの観点で解説します。自分たちはここが足りていないから、ここに課題があるから、そのためのDXをしようという考えを持ってもらいたいと思います。
1.デジタルで「すっ飛ばす」
デジタルを活用すれば、
〇地域や時間の壁(デジタルマーケティング、動画広告などの活用)
〇業界の壁(アグリテック(農業×IT)など異業界のコラボレーション)
〇業務プロセスや間接業務(契約手続きを紙・ハンコ・郵送から電子署名へ)
〇育成や開発にかかる時間(習得が難しい技術をAIを活用する)
〇旧来のヒエラルキー構造(他地域へのビジネス展開)
をすっ飛ばすことが可能です。
2.「ペインポイント」を解消する
ペインポイントとは問題・課題・悩みのことです。自社や自部署のペインポイントが人材採用・定着・育成なのか、顧客開拓なのか、利益率なのかを発見して、名前を付け、デジタルで解消することが目指せます。
3.他人の土俵に飛び込んで新たな価値を出す
他の業界をつながって新しい価値を生み出す、自分たちは苦手な分野を他社に担ってもらい価値を生み出すために、自分たちのナレッジやノウハウをデジタル化、標準化しておくとつながりやすいというメリットがあります。自分たちは特別だからと閉じこもっていると、他社とのコラボレーションは難しいです。他社とのコミュニケーションを促進・円滑にするための基盤づくりが必要です。
4.今までとは異なるプレイヤーが活躍する
デジタルを活用する、デジタルをベースにした稼ぎ方に変えることによって、これまでの働き方では活躍できなかった人材(例えば、子育て期女性など)が活躍でき、新たな勝ちパターンを生み出すきっかけにすることができます。そういった組織は女性活躍、副業人材の活躍、越境人材の活躍が期待できます。
5.「ホームポジション」を研ぎ澄ます
他社とのコラボレーションをするとき、ホームポジション(自社らしさ、最も得意とする領域、勝っていきたい領域など)を研ぎ澄ませておく必要があります。そうでないと、相手はあなたの会社とつながる理由を見出すことが出来ません。また、ホームポジションがぼやけている企業は価値がぼやけます。そうすると、価格競争に巻き込まれた負けパターンに陥るだけになってしまいます。
6.テクノロジーに合わせてルールを変える
これまでのように気合と根性、対面・アナログ型の仕事のやり方を前提のルールは、デジタル化が進むときの足かせになってしまいます。例えば、紙・ハンコ・郵送の文化が残ったまま、テレワークをしようとしても足かせになってしまいます。マネジメント、コミュニケーション、人事評価制度、バックオフィス、組織文化そのものさえ、テクノロジーを取り入れたときの当たり前に合わせて変えていくことが必要です。
この6つすべてをやる必要があるということではなく、、自分たちの組織の問題・課題にフィットするものはどれかを考え、手を付けていくのがいいと思います。
営業に当てはめると?『営業DX』成功事例を紹介
「営業」という言葉を聞くと、ノルマがキツイ、気合と根性、足で稼ぐなどマイナスのイメージがありますよね。これも、デジタルを活用することによって、営業職を「マーケティング(=リード獲得)」「インサイドセールス(=商談獲得)」「フィールドセールス(=受注獲得)」「カスタマーサクセス(=契約継続)」のような新しくかつ新たな価値を創出する職種にアップデートすることが出来ます。
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスって言葉がかっこいいじゃないですか!?そういう仕事に就きたい、そういう仕事をしている自分が好き、そんな人を増やしていくことが営業DXです。営業をかっこいい&イケてる職種に変えることができます。
ある地方の中小企業が営業DXに成功した事例を紹介します。これまでは展示会に出展してリードを獲得し、訪問営業やルート営業の足で稼ぐ営業スタイルだったのですが、COVID‑19の流行で展示会は軒並み中止、訪問もできない状況になりました。
そこで、新しい営業スタイルを取入れるため、女性採用を促進させ、デジタルマーケティングやインサイドセールスに関する学習機会を提供したんです。また、マーケティングオートメーションツールやSFAを導入し、WEBやSNSを活用したリード獲得、非対面営業の営業スタイルにガラリと変えました。
結果、COVID‑19流行前は6割が県内の顧客でしたが、営業DX後に新規顧客開拓に成功し、7割が県外の顧客と劇的に変化したんです。デジタルを活用して、「地域をすっ飛ばす」「今までとは異なるプレイヤーが活躍する」に成功した事例です。また、営業職をデジタルワークにシフトしたことで、テレワークで対応できるようにもなりました。
◆以前の営業スタイル
人材:残業ができる男性中心
活動:展示会営業、ルート営業、訪問営業など足で稼ぐ気合と根性の営業スタイル
顧客:県内6割、県外4割
↓
COVID‑19をきっかけに営業DXを推進
↓
◆DX後の営業スタイル
人材:女性を採用し、デジタルを活用した営業手法の学習機会を提供した
活動:マーケティングオートメーションやSFAを導入し、インサイドセールス部門を立ち上げ、知的な営業スタイル
顧客:県内3割、県外7割(新規顧客の開拓に成功)
半径5mからはじめる営業DX
経産省やさまざまな専門家がDXについて指南しています。もちろん、それらも貴重な情報源です。一方で、実際にDXを求めら得る現場の私たちにとっては「難解すぎる」「ピンと来ない」ことも多いと思います。当然です。ビルで例えるなら、アカデミックな専門家が議論するDXは、いわば30階の会議室で行われています。一方で、これからDXをはじめる企業の現場はビルの1階にいるようなものですから、まるで感覚も見えている景色も違います。
ですから、ビルの30階にいる人たちのDXの定義や難しい話にひっぱられすぎないようにしたいです。ビルの1階にいる企業がDXをはじめるぞ!っとなった時にはじめることはこの2つです。階段を登るには、泥臭いことを積み重ねるほかありません。
1.まずデジタルを経験してみる。
例えば、無料で使えるSlackを使って部署内のコミュニケーションをやってみるくらいでいいんです。あるいは、SFAやマーケティングオートメーションなどの無料トライアルを試してみるでもいいんです。
体験してみたときに感じたこと、よかったこと、悪かったこと、学び、課題を言語化していって、デジタルでこんな売り方ができるんだ、こんな働き方ができるんだという成長体験を作っていくことが大切です。
DXはまずはデジタルエクスペリエンスだと思っています。デジタルを使って、垣根を越えて仕事をする、新しい経験をするっていう経験がないと、DXなんて考えられないですよ。まずは経験すること。これが大事です。
2.ペインポイントに名前を付けてみる。
例えば、営業マンが育たない、よい人材が採用できない・定着しない、新しい製品・サービスの認知が拡大しないなど、自分たちの困りごとに名前を付けてみてください。
デジタルを経験した中で名前を付けたペインポイントの解決策がないか、他社とつながった方がペインポイントを解消できるんじゃないか、そういった議論に発展してほしいと思っています。
変革に必要なのは、成長体験と快感体験です。これまで泥臭い営業だったのが、インサイドセールス、フィールドセールスという名前になると、かっこいいじゃないですか。そして、マーケティングオートメーションやSFA、CRMを使ってデータ活用や分析ができるようになったら、うれしいじゃないですか。
こういう個人の小さな成長体験と快感体験が組織を変革するエンジンになっていくんです。まずは自分の半径5mを変えてみる。そこが出発点です。
この記事のまとめ
今回、沢渡あまねさんに伺ったポイントをまとめます。
この記事のまとめ
・DXとは「垣根を越えて、新たな「勝パターン」を生み出すこと。」
・DXでできることはこの6つ!
1.デジタルで「すっ飛ばす」
2.「ペインポイント」を解消する
3.他人の土俵に飛び込んで新たな価値を出す
4.今までとは異なるプレイヤーが活躍する
5.「ホームポジション」を研ぎ澄ます
6.テクノロジーに合わせてルールを変える
・DXはここからはじめよう!
1.まずデジタルを経験してみる。
2.ペインポイントに名前を付けてみる。
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インタビュアー自己紹介
池上 朋子
2021年7月、株式会社イノベーション入社。
セールスイネーブルメントツール「Sales Doc(セールスドック)」のマーケティング担当。
セールステック業界ド新人の視点で「法人営業ってかっこいいな」を伝えていきたいと思っています。
Twitter|@tomoko_ikegami