飲食店は一杯目のドリンクを最も高く設定しろ~直感と反するプライシングの話
今日は「直感と反するプライシングの話」について紹介したいと思います。
皆さんも居酒屋を利用したことがあると思いますが、「一杯目のビール」を一番高く、二杯目以降を安くした方が儲かると言われるとどう思いますか?
「嘘だろ。一杯目無料サービスは聞いたことあるけど、一杯目が一番高い店なんて聞いたことが無い!」と思ったのではありませんか?
しかし、このnoteを読めば「一杯目のビール(ドリンク)を最も高くすべき理由」が分かりますし、そこから一般化(抽象化)して飲食店以外のビジネスにも使える「効用(価値)と相場観を利用した利益を伸ばすテクニック」について学べます。
最後には「演習問題」を用意しているので本当に理解できているかを確かめる意味でも是非回答してください。
一杯目のビールを高くする理由
ここで質問です。次のどちらの状況の時、ビールが飲みたいですか?
重めのタスクも消化できてスッキリした会社終わりの華金、喉も乾いたし、居酒屋で気の合う友人と一杯やりたいとき。
既に居酒屋でしこたま酒を飲んで、おなかが一杯のとき。
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あなたが常人であるならば1番の方がビールが飲みたいはずです。
もうわかったと思いますが、「ビールを飲みたい。」という欲望は飲む前が一番高まっており、飲み始めたら徐々に欲望は満足していきます。二杯目、三杯目とビールを投入していけば徐々に、「次は別のに変えようかな。」とか「もう飲めません。」とビールの価値(効用)はドンドン下がっていきます。
以下は顧客が飲んだ杯数と累積満足度を表したイメージ図です。
1杯目に500円の価値を感じていた顧客が5杯飲んだとしても、2,500円分の満足度を感じてくれることはありません。それどころか、飲めば飲むほど1杯あたりの満足度は下がっていくのです※。
最大の利益を生むプライシングを具体的に考えてみよう
仮に、顧客の満足度が上のように推移していくことが分かっていた場合、最も利益を出すプライシングはいくらでしょう?簡略化のため、原価はゼロ円として考えてみてください。
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そうです、1杯目は500円、2杯目は400円、3杯目は300円ーーと顧客の満足度(効用)と一致するプライシングをすればいいのです。
そうすると顧客は9杯のビールを飲んで、店には2,030円の利益がもたらされます。これ以上飲んでも効用はゼロなので、提供する必要はありません。
ここで一つの物言いが。
「いや、1杯ごとに非線形に金額を変えるとか複雑すぎる。9杯で2,030円なら1杯あたり約225円なんだから最初から1杯225円でプライシングすればいいのでは?」
確かに、1杯ごとに金額を変えるのは現実的じゃないですね……。1杯225円で販売してみましょう。
おっと、1杯225円とプライシングしたところ、顧客は4杯しか飲んでくれませんでした……。さっきは9杯も飲んだ酒豪なのに。ちょっと話を聞いてみましょう。
「いやー、5杯目に225円を払うほどの価値はないかなと思って注文しませんでした。」
確かに、先ほどのデータを見てみると、5杯目のビールに感じる効用は200円となっています。200円の価値に対して225円を支払う人は居ませんよね。
つまり、225円で販売したときは4杯しか注文されないので利益は1,450円になるのです。
一杯あたりの平均価格は変化していないのに、利益は2,030円から1,450円へと約29%も減少してしまいました……。
ここで現実的な話に戻りましょう
と、ここまではあくまでファンタジーの話です。現実では顧客ごとの効用関数(1杯目の満足度はいくら、2杯目はいくらみたいな情報)を得ることはできませんし、顧客の効用と価格がぴったり一致していると「値ごろ感」が無くなってしまいます。
しかし、ファンタジーの世界とはいえ現実世界でも適用できる本質はあります。
その本質とは、「収穫逓減の法則」。つまりビールを飲めば飲むほど1杯あたりの満足度は下がっていくということ。
ハイボールが安い店(480円)でも一杯目はとりあえずビール(580円)を頼んでしまう。みたいな経験、皆さんにもありませんか?これはまさに1杯目に高い価値を感じていることの証左に他なりません。
真逆の事をやっているハッピーアワーや乾杯ドリンク無料は間違いなのか?
と、ここまで解説してきましたが、現実を見渡せばハッピーアワーや乾杯ドリンク無料などのサービスをしている店は沢山あります。
これは1杯目を高くするどころか、逆に価値の高い商品を安値で提供している行為ですよね。あれは間違いなのでしょうか?答えは「プライシング的には良くないが、マーケティング施策・宣伝戦略としては間違いと言えない。」です。
詳しく説明するとプライシングの話から逸れてマーケティングの話になってしまうので簡単に説明します。
ハッピーアワーや乾杯ドリンク無料などのサービスは「高い価値を持つ商品を値引きして顧客を引き寄せる広告」として利用しているわけです。つまり、プライシング的にどうこうという話ではなく、マーケティング施策の一つ、宣伝戦略としての側面が強いわけです。
なので、ハッピーアワーや乾杯ドリンク無料などが一概に間違っているとは当然言えません。ハッピーアワーで顧客を捕まえて、それ以上のお金を他の商品で使ってもらえばいいわけですからね。
複雑ですか?そうですよね。現実って複雑なんですよ。簡単に「一杯目は高くしろ!ハッピーアワーなんてやめろ!」と言えるほど単純じゃないんですよね……。笑
一杯目を高くする。を現実に落とし込んだのがこちら
「一杯目を高くする。がプライシング理論的には正しいことはわかったけど、実現するの無理じゃない?面倒くさいし……。」と思った方、安心してください。
キチンと現実に適用した事例があります。
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