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銘柄分析:楽天グループ(4755)

楽天グループ


概要

今回紹介する銘柄は楽天グループ。
Eコマース、金融業、スポーツと幅広い業界で活躍をする日本を代表するコングロマリット企業である。
金融業の本丸である楽天銀行を4月21日にプライム市場に上場させたのを皮切りに7月に楽天証券の上場も申請するなど金融面での強化を図っている。
これは楽天モバイルという携帯キャリアへの投資に莫大な費用がかかるため、財政面の強化を図っているのである。
しかし楽天グループと言えば全盛期には時価総額2兆円を誇った大企業。
創業以来26期連続増収を達成した挫折知らずのやり手だ。

出典:楽天グループ 会社紹介

これほどの企業であってもキャッシュの強化が必要とは空恐ろしい。

会社業績

出典:IR BANK

売上の伸び率は凄まじいものがある。
営利率も年によっては優秀な数字が並ぶ。
しかし、やはり目を引くのは純利益のマイナスである。
携帯キャリアに参入したのが2019年なので時期も符号する。
売上が過去最高を記録しているにも関わらず赤字になるほどの投資である。
携帯キャリア事業の投資が終わるまで黒字にならないのは誰の目にも明らかである。

4/10点

財務状況

出典:IR BANK

総資産が15年で20倍になっているのは好材料。
とはいえ自己資本比率3.9%はいくらなんでも頂けない。
これでは銀行業のようだ。
例えば以前紹介した三菱UFJフィナンシャルグループの自己資本比率は4.5%だ。

リース業・金融業は業種柄、自己資本比率が低く出やすい傾向にあるが楽天グループはコングロマリットだ。
一桁はどう見ても危うく、総資産20倍を差し引いて余りあるマイナス材料だろう。

出典:楽天グループ 会社紹介
出典:楽天グループ 会社紹介

資料からも察せられる携帯キャリア以外の事業は絶好調だ。
さらに付け足せば、これらの多くは買収した事業というのが特徴だ。
楽天クレジットカードは旧あおぞらカード。
楽天銀行は旧イーバンク。
楽天証券は旧DLJディレクトSFG証券。
ここにはないが楽天生命は旧アイリオ生命保険だ。
本丸のEコマースで儲けてM&Aで裾野を広げていく。
買収元の客とインフラを手に入れEコマースと紐づけていくことでいわゆる「楽天経済圏」を築き上げてきたのである。
これが楽天グループの勝ちパターンだったのだ。
楽天はM&Aで大きくなったのである。
しかしその成長は楽天モバイル事業のスタートと同時にストップがかかってしまう。
M&Aする余裕など残されていないからである。

4/10点

キャッシュフロー

出典:IR BANK

とても健全とは言い難い。
利益が出ていないにもかかわらず投資CFが9000億円を超えている。
増えているのは財務キャッシュフローだけ、つまり借金だけという状態だ。
売上高に対する現金収支を表す営業キャッシュフローマージンがついにマイナスに陥っている。
ここ4年で設備投資に2兆円近くかけているのも気がかりだ。

出典:楽天グループ 会社紹介

図のようにモバイルセグメントがすべてを台無しにしている。
2023年から2025年にかけて合計で3000億円の設備投資を削減できると豪語するが、株主の立場からすればいつ設備投資が終わるのかが聞きたいのではないだろうか。
いったいいくら注ぎ込むつもりなのか、いまいちゴールが見えない。

出典:楽天グループ 会社紹介


1/10点

配当

出典:IR BANK

正直、配当を出しているどころではないはずだ。
減配だけは避けたい意図が伝わってくる。
総還元額は71億と少額であり設備投資9000億とは比較するまでもない。
株主への還元を考える状態にはないだろう。

1/10点

将来性

将来性という観点では評価が難しい。
事実、売上は伸び続けており業績面で問題はない。
モバイル事業さえなければ10点だっただろう。
M&Aを絶えず繰り返すモンスター企業になっていたかもしれない。
しかし現実には大きな負債を抱えてしまっている。

楽天は今後5年間で1.2兆円の社債を償還しなければならない。
当然、借り換えをしなければならないだろう。
しかし米国格付け会社S&Pグローバルによると楽天グループは投資不適格とされるBBと評価されてしまった。
昨年末に発行した社債の利回りはついに10.25%となっている。
2019年に発行した社債の利回りは3.5%だったにもかかわらずである。

今年は公募増資、新株発行で3000億円の調達も行っている。
三木谷興産およびスピリットは三木谷氏親族の資産管理会社である。
東急は楽天本社ビルの運営元だ。
サイバーエージェントは以前、三木谷氏にホワイトナイトとして助けてもらった恩返しだろう。
これまで培ってきた縁を動員する形だ。
しかし社債の償還にはまだまだ足りない。
そこで楽天銀行、楽天証券と矢継ぎ早に親子上場を行いなんとか現金を捻出しようというわけだ。
これはタコが自分の足を食っている状態ではないだろうか。
自転車操業に思える。
そして楽天証券の次に上場できるまともな弾が残されていないのである。
非常に、非常に厳しいように思われる。

3/10点

終わりに

楽天グループは本丸であるEコマースの実力を背景にM&Aで会社を大きくしてきたのは先に述べた通りである。
そう、携帯キャリア事業もM&Aでなければならなかったのだ。
当然、大手通信キャリアをM&Aなど叶わないわけで、そうであれば諦めるべきだったのだ。

成功モデルを紹介しよう。
かつてソフトバンクGは2006年にVodafoneを1.75兆円で買収した。
客とインフラを買い取ったに等しく、すぐに利益を出した。
また、iPhoneの日本における2011年までの独占販売権を得てさらなる集客にも成功した。
通話料、メール料金の無料を宣伝文句として謳い既存キャリアを慌てさせた。
これが成功モデルだ。

翻って楽天グループはどうだったか。
買収はせず0からのスタートとなった。
客もインフラも0からのスタートとなり、利益がいつ出るかも判らない状況だ。
また、プランに特色がある程度で独占的な新商品もない。
期間限定の0円プランで集客を行った。
被っているのは無料プランを宣伝文句として謳ったくらいだろうか。
むしろこれで成功するのは難しいのではないか。

楽天グループはなぜ裾野を広くできたのか、なぜ楽天経済圏を大きくできたのか。
それはいったいどのような手法だったのか。
楽天グループは今一度自身の成功体験を分析する必要があるだろう。
私は楽天モバイルは売却するしかないように思う。

会社業績:4/10点
財務状況:4/10点
キャッシュフロー:1/10点
配当:1/10
将来性:3/10点
合計:13点

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