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火の玉の如く5(小説)

翌日は普通に練習した。俺だけ初心者だから基本からだが、矢野さんがボールの蹴り方を教えてくれた。

「上山、これがインステップキック、インサイドキックはこうだ。この2つをとりあえず練習しよう」

「はい!」

俺は矢野さんのいうとおり丁寧に矢野さんに向かってボールを蹴る。矢野さんが少し下がった。

「そこからインサイドで俺にボールを通せ」

俺は矢野さんに丁寧にボールを蹴る。矢野さんはうなずきながらボールを受ける。

「ハハハ。プロがガキの球遊びか。笑わすな!」

村上が俺に叫ぶ。俺はぶっとばしてやりたかったが、我慢した。今に見てろ村上!貴様を必ずぶっ倒す!
俺は村上に言われたことで心が熱く燃えた。
やがて練習は終わった。

「上山、いい感じだ。その感じで一つ一つ丁寧にマスターしていこう」

「はい!」

俺は矢野さんに頭を下げるとロッカールームに向かった。ロッカールームにはオッサンが立っている。

「上山、明日からこれを使え、ちょっと履いてみろ。どうだ?」

オッサンが俺にサッカースパイクを渡した。俺は喜んで、そのスパイクを履いた。
ピッタリだ。感じもいい。

「ちょうどいいです」

「それはよかった。明日からはそのスパイクで練習だ。それから、今日から俺の家に来て俺と住め」

ええー?なんでオッサンと一緒に住むんだ?
俺にはゆっくり俺だけの時間を過ごすアパートがあるんだよ。

「あの、俺、家ありますけど?」

俺がそういうとオッサンは目をギラリとさせて

「アパートは時々帰ればいい。とにかく俺と住め!」

「はい」

しょうがない。オッサンがいうんだからな。しかしなんでオッサンと住むんだ?
俺は首を傾げながらオッサンと一緒に帰った。

オッサンの家を見てびっくりした。すごい豪邸だ。何したらこんな豪邸建てられるんだ。

オッサンは大きなドアを開けると俺を招いた。

「ただいま。言ってた奴も一緒だ」

すると奥から女の子が現れてきた。えっ?なんでこんなかわいい子がいるの?
俺はまた首を傾げた。

「おかえりなさい。上山さんですね。初めまして、娘のほのかです。よろしくお願いします」

その声がまたかわいい!俺はしばらくぼーっとしてしまった。

「何ぼーっとしてるんだ。お前も挨拶せんか」

「あ、俺、上山蓮と言います。よろしくお願いします」

オッサンの言葉に俺は頭をかきながら応えた。

「お父さん、ごはんできてるわよ。蓮くんもご一緒にどうぞ。あっいきなり蓮くんって失礼かしら。上山さんもどうぞ」

「いや、蓮でいいです。お気遣いなしで、はい、タメでいいです」

ほのかさんがニコッと笑って俺に言った。俺もニコッと返してほのかさんにそう言った。オッサンは俺に鋭い眼光をむけている。

「お前のメシはトレーニングの後だ。俺も付き合ってやる。ついてこい」

そういうとオッサンは俺の手を引っ張って無理矢理別の部屋に連れて行った。
部屋に入りびっくりした。ジムなみに器具が揃っている。

「よし、今からウェイトだ。それからメシ、いいな」

俺は黙ってオッサンの指示通りにウェイトをあげる。練習の後だっていうのになんでこんなに鍛えるんだ?
また内容がすごくキツイ。こんなにキツイ筋トレははじめてだ。

「相手のプレッシャーは相当なものだ。当たり負けしない体を作れ!俊敏に動けるように鍛えるんだ!」

オッサンはそう言いながら俺と一緒にウェイトをあげる。これ重すぎないか?
俺はうめき声をあげているが、オッサンは鼻歌まじりだ。このオッサン、バケモンだな。

やがて筋トレは終わった。種目は少ないが内容が濃い。しかもこのマシンは何か細工してるみたいでめちゃくちゃ効く。

「よし、メシ食うか!」

オッサンがそう言って俺の背中を叩く。
キッチンに行くとほのかさんがニコッと笑って俺たちを待っていた。

「蓮くん、お疲れ様。お口に合うかどうかわからないけど」

俺はふらふらで味も何もわからないままメシを口に運んでいた。しかし、"蓮くん"っていいなあ。うん。いいなあ。するといきなりオッサンが俺の背中を叩いた。

「ほのかがうまいかと聞いているんだ。ちゃんと応えろ!それに何ニヤニヤしてるんだ?」

「お父さん、乱暴よ。蓮くん、たくさん食べてね」

俺はほのかさんにニコッと笑った。ほのかさんも俺にニコッと笑う。

「うまいっス。めちゃくちゃうまいっス」

「よかった。はい、これも食べてね」

ほのかさんが俺の前にシチューを置いてくれた。本当はふらふらで味も何もわからないがとにかく愛想よくと思っていた。

しかし、よく味わってみると、このシチューうまい!いや、他のメシもうまい。こんなうまいメシが食えるならオッサンの家にいてもいいか。

オッサンが呆れた顔をしてる中俺はふらふらしながらメシを食っていた。

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