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火の玉の如く23(小説)

相手のカルロスが俺に食い下がる!くそ!負けてなるものか!

カルロスをかわしてボールをボランチの天野さんに渡す。それを今川が奪いにくる!

前を見ると立石さんの横が開いている。俺は手を上げた!
それでも今川はボールに食い下がる!

俺は走り出し、今川とボールの奪いになった!

「今川さん、俺は素人だろうが、根性じゃ負けられないんだよ!特にあんたにはな!」

俺はそういうと無理矢理ボールを奪った!そのまま駆け上がる!さらに!さらに!前に前に!

行くんだ!今この瞬間も燃えろ!俺は見据えたゴールに向かって大きく蹴り出した!

ボールはゴールに向かって一直線に飛んでいく!GK正面に飛ぶ!しまった!捕られる!

次の瞬間ボールはドロップしワンバウンドした!ワンバウンドしたボールはGKの頭を越し、そのままゴールの天井に突き刺さり、次の瞬間ゴールの中に入った!

『ゴォォォール』

「「「やった!」」」

「「「うぉぉー!」」」

ゴールのアナウンスと共に俺たちは歓喜の叫びをあげ、それをかき消す歓声がスタジアムを包んだ!サポーターの旗が嵐のようにスタンドで閃く!

「上山!ナイスゴール!」

天野さんが駆け寄る。続いて谷内さん、岩橋さんも駆け寄る。

今川が呆然とその姿をみている。信じられないような表情で。

その後、試合は前半を終えた。ベンチに戻る俺たちに真由さんとスタッフがボトルを渡した。各自水分補給する中オッサンが俺たちに話す。

「前半はなんとかしのいだ。上山のゴールでなんとかリードしているが、相手はスタリオンズだ!今川を特にマークだ!谷内、天野、上山!3人でマークだ!しのぐだけではダメだ!攻めろ!波は俺たちにきている!よし!いけ!」

「「「おおー!!」」

俺たちはいつも以上に気合いを入れて吠えた!
このまま後半も俺たちがボールを支配する!

後半が始まった!ホイッスルが鳴る!

しかし、俺たちが攻めたと思うとスタリオンズに奪われ、また俺たちが奪う展開のままいたずらに時間だけが過ぎる!

一進一退の攻防で時間が過ぎてゆく!気がつくと終了も近づいている。なんて早く時間が過ぎるんだ!

しかし、次第に相手が押してくる!残り時間は?ロスタイムは?

主審が時計を見た。時間か?

そう思っていた時、一瞬の隙を見逃さず今川が駆け抜ける!

『ゴォォォール』

「「「うぉぉー!」」」

やられた!時間なんか考える暇無いんだ!くそ!今川が不敵な笑みで俺を見据える。

「どうやら延長のようだね」

今川がそう言って俺の横を走り去る。くそー!

ホイッスルが鳴り、試合が再開された。
延長なんて関係ねー!

立石さんは岩橋さんにパスしボールを渡す。同時に俺は走り出した!

「岩橋さん、パスだ!」

俺の声に岩橋さんは驚いたが、そのまま走る俺にパスした!俺はボールを奪うとそのまま二人の間を走り抜けた!

「何!?」

今川がそう言った。俺は構うことなく今川の横をすり抜け、敵陣中盤まで上がった!

そこからシュート!ボールは一直線に真っ直ぐ放たれた!

そのままゴールネットが揺れた!相手GKは唖然と立ち尽くしている!

『ゴォォォール』

「「「ウォォォー!!!」」」

アナウンスと共に歓声がスタジアムを揺らす!
同時に試合終了を告げるホイッスルが鳴る!

「「「やった!!!」」」

「「「優勝だ!!!」」」

俺に向かって皆が走り寄る。

「ナイスゴール、上山!やったな」

皆が俺を祝福する。やった、やったんだ。俺たちは頂点に立った!

今川が俺に向かって走ってきた。

「負けたよ"火の玉"。最後のシュートはボールまで"火の玉"だな。これからはどえらいライバルとの闘いに手こずりそうだな。」

そういうと今川は俺と握手した。続いて東山、小竹、カルロスと言ったスタリオンズの面々と健闘を称え合う握手を交わした。

「本当に何をするかわからない奴だな。だが俺も負けない。また闘おうぜ!"火の玉"」

そういうと今川はとてもさわやかな笑みを浮かべ俺の肩を叩いた。

「ああ。次も負けないぜ!」

俺は今川にそう言うと再び互いに健闘を称え合った。

「せい、のう」

その声と共に村上さんが俺を肩車する。

「「「上山!!上山!!上山!!上山!!」」」

サポーターが立ち上がり上山コールと手拍子を始めた。凄まじい熱気だ。

「おい!ボーっとするな!歓声に応えんかい!」

村上さんのその言葉に俺は両手をあげて応えた。さらに大きな歓声がスタジアムを包む。
スタジアムが壊れんばかりの歓声が俺たちの周りを包み、こだまする。

「やっな!"火の玉"!」

村上さんが俺に嬉しそうにそう言った。俺も心からの感謝と健闘を込めて言った。

「はい!おかげさまで!」

俺はいつまでも村上さんに肩車されていた。サポーターの歓声は止むことなく、表彰式の準備が静かに進む中、熱気に包まれたスタジアムを揺らし続けていた。


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