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火の玉の如く

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スポーツ選手としてボクシングで頂点を目指していた主人公は事故によりボクシングができなくなったとき、新たなスポーツとしてサッカーと出会います。サッカーには全くの素人でしたが、かつて…
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記事一覧

火の玉の如く1(小説)

火の玉の如く1(小説)

新たなる挑戦

スポーツ選手としてボクシングで俺は頂点を目指していた。そうあの出来事までは。

俺は男としての生きがいをボクシングに見た。
必ず世界を取る!俺の拳一つで!練習も誰にも負けないくらいやった。俺は誰にも負けない自信があった。
パンチ力だって負けやしない。
コーチが持つパンチングミットに打ち込む!

「上山!もっとだ!ワンツースリーフック!」

コーチの顔が歪む。パンチングミット越しでも

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火の玉の如く2(小説)

火の玉の如く2(小説)

俺より軽い足取りでオッサンは俺のボールを奪う。
奪われたボールは俺の背中の後ろのゴールに軽く入れられた。
嘘だろ?フットワークじゃ誰にも負けたことの無い俺があんなオッサンに……。

「おう、もう一回やるか?それとも、俺が攻めるか?」

「もう一回だ!さっきは油断しただけだ!怪我するかもしれないが覚悟しろよ!」

俺はそういうとオッサンはニヤっと笑った。
くそ!なめやがって!

俺はオッサンの足を思

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火の玉の如く3(小説)

火の玉の如く3(小説)

試練

あれから数ヶ月経った。俺は腕も完治し、あのオッサンのいるグラウンドに向かった。3日前に腕が完治したことはオッサンに伝えた。ただ3日後に来いとだけオッサンは言った。

スパイクは無いからランニングシューズを履いて行った。

グラウンドに近づいてきた。照明灯が近づいてくる。俺は今日こそあのオッサンに一泡吹かせてやると思った。

入口に着き、俺は大声で言った。

「今日からお世話になる上山蓮です

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火の玉の如く4(小説)

火の玉の如く4(小説)

俺はその後も休むことなく走り続けた。途中で少しでも動きが鈍るとオッサンが俺のケツに容赦なく棒を叩きこむ。

「おい!ダッシュだ!なにジョックしてんだ!」

オッサン怒号の中、俺は頭がぼーっとしてきた。喉が渇き、唾を飲み込もうとしてもガムのようになり、飲み込めない。体が変に冷えてくる。歯がガタガタ鳴り始める。

「おら!ダッシュがダッシュでなくなってるぞ!」

オッサンの怒号と共に棒がケツに叩き込ま

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火の玉の如く5(小説)

火の玉の如く5(小説)

翌日は普通に練習した。俺だけ初心者だから基本からだが、矢野さんがボールの蹴り方を教えてくれた。

「上山、これがインステップキック、インサイドキックはこうだ。この2つをとりあえず練習しよう」

「はい!」

俺は矢野さんのいうとおり丁寧に矢野さんに向かってボールを蹴る。矢野さんが少し下がった。

「そこからインサイドで俺にボールを通せ」

俺は矢野さんに丁寧にボールを蹴る。矢野さんはうなずきながら

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火の玉の如く6(小説)

火の玉の如く6(小説)

次の日、俺はオッサンと一緒にグラウンドに向かった。グラウンドまでランニングで行くとオッサンが言う。本当に走るの好きだな、このオッサン。

いろいろと複雑に思いが交差する。これから本当に俺は何も知らないサッカーの世界で生きていけるのか?
いろいろ思いながら走っていたらグラウンドに着いた。

「俺は監督室に行く。お前はロッカーで着替えたらウォーミングアップをしてろ」

オッサンがそういうので俺はうなず

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火の玉の如く7(小説)

火の玉の如く7(小説)

あれから数ヶ月が経った。
俺は猛練習を重ねていた。選手やコーチ、スタッフの皆さんとも打ち解け順調に日々を重ねていた。

今日は休みの日だ。俺は昔から馴染みの喫茶店に向かった。マスターとはボクシングの時から親しくしている。喫茶店のドアをあける、ガランゴロンとベルが鳴る。

「やあ、上山くん久しぶり。元気そうじゃない、よかったよ!」

「ご無沙汰してます。ちょっといろいろありまして」

俺がそういうと

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火の玉の如く8(小説)

火の玉の如く8(小説)

翌日になり、俺はいつものように練習に向かった。ロッカールームに行く前にクラブハウスに寄る。
チームメイトと共に真由さんもいる。俺は真由さんに挨拶した。

「真由さん、おはよう」

「…………………」

真由さんは全くの無言だ。黙ったまま、チームメイトの岩橋さんのマッサージとテーピングを行っている。
岩橋さんが、終わったので俺もテーピングを頼んだ。

「真由さん、俺もテーピングお願いします」

「私

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火の玉の如く9(小説)

火の玉の如く9(小説)

初めての試合

3日後、試合の日が来た。みんなは軽い調整のような顔をしている。
M大の連中が緊張した面持ちでグラウンドに来た。

キャプテンの足立さんが俺達に集合をかけた。

「よし、リーグ戦を前にして、相手は大学チャンピオン。いい調整相手だ。だが油断はするな、しっかりしめろ。今回は監督の意向で今からユニホームを配る。まずは大沢」

ユニホームが次々に配られていく。名門クリムゾンウォーリアーズのユ

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火の玉の如く10(小説)

火の玉の如く10(小説)

後半が始まった。立石さんが岩橋さんにボールを回して、そのまま谷内さんにパスし、M大に大きく攻め込む!

相手がボールを取りにくるのを谷内さんは軽快な動きで抜き、俺にパスする!俺はボールを受け取るとそのままドリブルで攻め込む。

相手はドリブルで攻める俺のボールを取りにくる!俺はそのまま、攻め込んだ!

「上山!立石が手をあげている!大きくパスしろ!」

後ろからディフェンダーの戸田さんが叫んだ!

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火の玉の如く11(小説)

火の玉の如く11(小説)

俺が河川敷に座りボーっとしていたら俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「蓮くーん!そんなところにいたの?さあ帰りましょう。ご飯もできてるわよ」

ほのかさんが俺にそう言ってきた。探してたのか?

「ほのかさん、俺を探してたんスか?」

ほのかさんは俺の横に座り、静かな表情で俺に話し始めた。

「父から聞いたわ。今日の試合負けたんだって。蓮くん、今までは父もメンバーのみなさんもわかりやすくチームと呼んでい

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火の玉の如く12(小説)

火の玉の如く12(小説)

翌日、俺は喫茶店に向かった。ほのかさんに励まされ元気にはなったが、まだみんなの冷たい視線は気になる。
喫茶店のドアを開ける。あいかわらず大きな音でベルが鳴る。

「よう。上山くん。聞いてるよ、練習試合、M大に逆転負け」

ずけずけ言ってくれるぜ。マスターは。
俺は黙って座るとマスターが飾っているオッサンの写真を見た。

「なあ、マスター、秋山譲治って凄い選手だって言ってたけど、そんなに凄かったのか

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火の玉の如く13(小説)

火の玉の如く13(小説)

リーグ戦直前の練習が始まった。俺はいつも以上に張り切った。負けるわけにはいかないんだ!俺を応援してくれる人の為にも!

あんな無様な試合をしたにもかかわらず矢野さんはあいかわらず俺を指導してくれる。

「上山!だいぶ上達したな!信じられないぐらいの成長だぜ!」

矢野さんが俺を教えながら言った。俺もあの練習試合の後、自分で反省した。何がたりないのか?俺の武器はなんなのか?
今、俺の中には俺なりの答

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火の玉の如く14(小説)

火の玉の如く14(小説)

リーグ戦開始

数ヶ月経った。いよいよリーグ戦が始まった。あの練習試合から俺はさらに鍛え抜いた。以前とは数段比べようの無いほど力はついた。

俺はロッカールームで背番号8のユニフォームに着替える。この日の為にやってきたんだ!
必ず優勝する。それまでは意地でもやってやる!

オッサンがみんなを呼ぶ、スターティングメンバーを発表するみたいだ。

「今日はいつもの連中で戦ってもらう。ただし、左のサイドハ

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