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火の玉の如く6(小説)

次の日、俺はオッサンと一緒にグラウンドに向かった。グラウンドまでランニングで行くとオッサンが言う。本当に走るの好きだな、このオッサン。

いろいろと複雑に思いが交差する。これから本当に俺は何も知らないサッカーの世界で生きていけるのか?
いろいろ思いながら走っていたらグラウンドに着いた。

「俺は監督室に行く。お前はロッカーで着替えたらウォーミングアップをしてろ」

オッサンがそういうので俺はうなずいた。
そのままロッカールームに行く、俺のロッカーを開けてジャージに着替える。

「上山くんですね。はじめまして、私、トレーナー兼マネージャーの増田真由です。よろしくお願いします。あ、着替えは洗ったの新しくロッカーに入れときました」

女の子がトレーナーもやってるのか。すげーなあ。俺は頭を下げて挨拶した。

「上山蓮です。よろしくお願いします!」

増田さんはニッコリ笑って言った。

「真由でいいです。気さくな関係でお互い頑張りましょう」

俺は「はい」と言って、また頭を下げた。
真由さんが向こうに行った。俺は着替えた。
すると昨日、オッサンにもらったスパイクが無い。
おかしい、昨日もらって置いておいたはずだ。

俺は真由さんのところまで走って行った。

「真由さん、俺のスパイク知りませんか?スパイクが無いんです」

「私が着替えを確認した時はあったわ。赤いスパイクよね」

俺はうなずいて考えた。真由さんがスパイクを隠したりするわけない。だったら誰だ?

「真由さん、時間無いから俺、このシューズで行きます。ありがとうございます」

「ちょっと上山くん!」

真由さんは何か言いたげだったが、俺は急いでグラウンドに行った。
グラウンドには皆集まっている。

俺の足元を村上が見てニヤつきやがる。まさかあいつか?

オッサンが来た。オッサンは俺のシューズを見て言った。

「上山、昨日俺がやったスパイクはどうした?」

「それが無いんです」

オッサンは怒りに満ちた顔をして俺に言った。

「上山!道具を大切に出来ない奴はプレーヤー失格だ!何故持ち帰らない!お前、またランニングシューズ履いているのか。よっぽど走りたいみたいだな。よし、お前は今日は1日中走れ!」

オッサンはそういうと俺のケツに蹴りを入れてきた。俺はオッサンのいう通りに走りだした。それを見てさらに村上がニヤニヤしてやがる。

俺は犯人は村上と確信した。あの野郎!後でやってやるぜ!

俺が走りだすと真由さんがオッサンの前に走り寄り、言った。

「監督!待ってください!私が確認した時にはスパイクはあったんです。何かトラブルがあったんだと思います」

真由さんの言葉にオッサンは難しい顔をしている。

「増田の言うことはわかった。上山が故意にスパイクを無くしたわけでは無いということだな。しかし、上山、お前は今日は1日中走れ」

何故だ!俺が故意にやってないのに、また走れとは?オッサンは俺にサッカーの技術を教える気が無いのか。

「オッサン!いつになったらサッカー教えてくれるんですか!俺は走りを教えてもらいにきてないッスよ!」

「やかましい!いいから走れ!」

俺はまたその日は1日中走った。クタクタだ。
俺はそのままロッカーに行き、村上に言った。

「俺のスパイク隠したの村上さんですよね。あんなに嬉しそうにニヤニヤしてるんですから。犯人はあんただ!」

「何の証拠があって言っているんだ。人を犯人扱いするんだ、覚悟はできてるだろうな!」

俺はボクシングの構えをした。その瞬間村上がたじろいだ。コイツだけは許さねえ。
ボコボコにしてやるぜ!

「何してるんだ!馬鹿野郎!」

オッサンがそう言って、俺の頬にビンタした。

「俺だってね……」

俺はそこまで言って黙ってしまった。真由さんが俺の腕を握って離さない。

「上山くんダメ!ここで村上さんを殴ったらクビよ。村上さんも上山くんにあまりつらく当たるのはどうかしてます。同じクラブ、そうチームなんです」

真由さんはそういうとさらに俺の腕を強く引っ張った。

「スパイクの件は俺が預かる。皆はもう帰れ」

オッサンがそういうと皆、家路についた。
俺は真由さんに引っ張られ、ロッカールームの隅っこに連れて行かれた。

「上山くん、ダメよ。先輩を殴っちゃ。それにチームメイトよ。たとえ村上さんが隠したとしても我慢して。帰りに私と一緒にスパイク買いに行きましょ」

俺は真由さんの言葉にうなずいた。犯人は村上だ。必ず、証拠をつかんでやる。
俺は怒りをおさめ家路につくとスパイクを買いに真由さんと出かけた。

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