見出し画像

【リリース20周年】スガシカオ/8月のセレナーデ

早いもので、リリースから20年が経過しました。当時小学5年生、J-WAVEの帯番組も毎週欠かさず聞いていて。時折母の送ったFAXが読まれるとそれはそれは大騒ぎになったものでした。スマホもラジコもない時代、スカパー!のサイマル放送(もはや死語ですか?笑)をVHSに録画して翌日じっくり観る独特なスタイル。夜更かししない良い子でした。たまーに録画し損ねて。

過度な身バレは避けたい所存ですが主宰は8月生まれでして、勝手に自分のテーマソングと位置付けている1曲。去年の今頃は「Affair」を取り上げあれこれと書き連ねたものでした。ちなみにリリース日は8月2日。対して「8月のセレナーデ」は翌年8月1日のリリース。アクの強さやエグみといった共通項は持ちながらも非常に好対照な2曲。

ループ主体の打ち込みサウンド、この宅録感こそスガシカオの真骨頂です。ラテン語で「穏やか」という意味を持つserenusが語源、淡々と進む楽曲の中にも鋭利な場面転換が感じられて。夜想曲というよりは昼間の和室、まさにMVの世界観そのままだと思います。東洋文化の文脈で描かれたセレナーデの中では屈指の完成度ではないでしょうか。

森俊之氏のアレンジも冴え渡る。有機質なピアノソロが絶妙に効いていて、開け放った窓から涼やかな風が吹き込んでくるよな感触が非常に心地良い。暑中見舞い的な一手。森山直太朗「夏の終わり」や井上陽水「少年時代」は時期的にはもう少し後、恐らく9月頃をイメージした楽曲ではないかと個人的には思ったりしています。

そういった意味でも8月を題材にした作品って意外とありそうでなかった。バレンタインソングや卒業ソングはあれど正月をテーマにした曲は少ない。不思議となかったことにされている。そこを突いていくのがクリエイター魂というもの。例えば、堀込高樹「冬来たりなば」がその隙間を埋めてくれる妙手であったことは間違いない。主宰は勝手にスキマ理論と呼んでいます。

それなのに、オリジナルアルバム未収録。

レーベル移籍に伴う権利問題などでこぼれ落ちるケースは散見されますが、しかしバリバリのキティ在籍時代。ベストアルバムこそ発表されましたが、翌々年の5月まで新作のリリースは滞ることに。自身も認める難産の時期。カップリングにカバー曲が収録されるというのも当時は驚きでした。主宰はファンクラブ会員でしたから、氏の苦しみが間接的に伝わってきていた。

会報がパッタリ届かなくなった時期、今でもはっきりと覚えています。親交の深いミスチルのような、深海→BOLERO的展開もあるのかなどと淡い期待を抱いたりもしたのですが『SMILE』にも収録されず。結果的には、先程のスキマ理論がフックとなり、サイマル放送リスナーだった自称古参にも長年愛される楽曲へと(自分勝手に)昇華されていくこととなりました。

「黄金の月」よりずっと好きですよ。なんせ自分のテーマソングですから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?