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かくれすぎんぼ

 僕の家の近くには公園があります。運動公園ほどではありませんが、田舎にしては割と大きいほうではないかと思います。体調も回復したので気分転換に散歩でもしようと思い立ち、久しぶりに公園へ足を運びました。桜の季節を迎え、ピンク色に衣替えした公園の坂を上ると、学生の頃何度もランニングした河川敷が思い出のまま残っています。当時よりだいぶ背は伸びたけど、それでもまだ追いつけないの桜並木の高さに背中を押され、僕は河川敷の坂を下りました。

 その日公園には誰もいませんでした。声も聞こえませんでした。平日は学校帰りの寄り道スポットとして秘密にし、休日は学年なんて気にせずみんなで走り回った、そんな僕らの居場所は、今の子供たちの人気者にはなれなかったようです。時代は変わり、室内で遊ぶ子が増えたという噂をたびたび耳にします。ゲームか、勉強か、読書か、おそらくこの順ですが、僕らはゲームすら誰かの家に持ち寄ることはなく、通信対戦のリングはいつも公園にありました。休日は平日にレベル上げしたキャラの自慢大会から始まり、お菓子を食べてからは誰かが持ってきたボールを投げ合い、それも飽きたら隣の子にタッチして逃げて捕まって追いかけて、それが僕らの日常でした。

 高校当時、夜遅く学校から帰宅すると公園にはまだ明かりがあり、テニスコートからはよく楽しそうな声が聞こえていました。テスト週間でちょっと早めの時間だと、地元の学生が部活動に励む姿を横目に懐かしむこともできました。今はスポーツも憚られるご時世で、テニスコートからは汗のにおいが消え、公園内からは子供たちの遊び声も忘れ去られてしまいました。

 僕は陸上部だったので、小学校の頃から鬼ごっこがお気に入りなことは読者の皆さんにバレバレかもしれません。実はもう一つかくれんぼも好きでした。草木の中や物陰に息をひそめることが、アマゾンを冒険するハンターや探偵から逃げる怪盗のようで、たまらなく楽しかったです。僕は少年心はいつの時代も変わらないと信じています。きっと今の子供たちもかくれんぼが好きなはずです。僕が見つけられていないだけで、公園のどこかにはまだ隠れている子がいるのかもしれません。それとも本当に公園で遊ぶという文化は昔に隠れてしまったのでしょうか。隠れすぎです。もーいーよ。

最後までお読み頂きありがとうございました! 2022年 4月21日(木)

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