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困った時の話し方・モノの言い方④「叱る」

 「ほめる」と「叱る」のコミュニケーションとは、人を動かす「育成のコミュニケーション」という部類に入ります。両方の共通の「プロセス」があります。

 それは、相手の「存在を肯定」して、「意欲・やる気」を換気し、最終的には相手の「成長を促す」コミュニケーションなのです。

 私の話し方講師の大先輩が見事に「ほめる」と「叱る」を短い言葉で表現したのを私は忘れることができません。

 「“ほめる”は成長の促し」「“叱る”は挽回への励まし」と表現したのです。特に今回のテーマである「叱る」については上司・先輩・リーダーなどが、彼らの部下、後輩、メンバーに対して、十分自分の能力を発揮していないことが明らかな時、例えば、100の実力があるところを「手抜き」して「楽に済ませるために」80%くらいの力しか発揮していないことが明らかな場合、「どうしたのだ、いつも手抜きをしない君が、今回80%の力しか出していないじゃないか。そして、手抜きをすれば、手抜きをした結果しか出てこないということも、君が一番よくわかっているはずだ。そんな姿を周囲の人間が見てわからないとでも思っているわけではないだろうね。このままだと、周囲の信頼や協力を獲得し目的を達成することができなくなってしまうぞ。問題や手伝うことがあればいつでも相談に乗るから、気落ちを切り替え、いつもの君のように120%の結果を出して、周囲の人たちの信頼を取り戻し、さらに尊敬される存在になってくれることを強く希望する。今回のことをきっかけに、きっと飛躍的に成長してくれることを大いに期待しているぞ。」などと、「挽回への励まし」をしましょう。

 よく「最近の人は打たれ弱く、下手に叱ると、本人が落ち込んで立ち直れなくなりかねない。」「急に叱ると、周囲の人間は冷ややかな目で見て"何一人で興奮しているの?”“もしかして、それってパワハラ!ですか?”と思われやしないだろうか。」「変に叱るとそこで、職場の雰囲気が悪くなってしまう。」などと考える結果、なかなかしからなくなてしまうのではないだろうか?

 しかし、もう一度思い出して欲しいのですが、「叱るは挽回への励まし」であり、そのために、相手の存在を肯定し、意欲ややる気を喚起して、最終的に相手の成長を促すというとても重要であり、上司やリーダーにとっては不可欠なコミュニケーションなのです。なぜならば、部下や後輩たちが「成長」してくれないと、チームや組織としての力を十分に発揮できないからです。

 そして、「ほめる・叱る」というコミュニケーションと「おだてる・怒る」というコミュニケーションは、全く別物と認識したいものです。一言でその違いを表現してみると、「おだてる・怒る」は「自己中心」であり、「ほめる・叱る」は「相手中心」のコミュニケーションということもしっかりと肝に銘じておきたいことです。「相手のことを考える」というコミュニケーションの大原則は常に変わりありません。しかし、人間はどうしても自己中心的な存在であり、自分中心で考えがちなので、『「ほめる・叱る」は相手の成長を促す相手のための、リーダーとしてとても重要で不可欠なコミュニケーション能力なのだ!』と自分自身にいいっ聞かせたいものです。

 そこで、今回は「叱る時のポイント」を3つほど示したいと思います。「急に」「頭ごなしに」「変に」という「下手に」叱るから心配や不安が先立つのであってそれなりの「叱るための状況や環境」を整えて、相手のことをよく考えて、上手に叱ることによって、相手の受け取り方が変わり、結果も変わることを忘れないでください。

⒈【相手の受け入れ態勢・聞いてもらう状況づくり」をつくって叱る。:いくら「叱る」ということコミュニケーションが「相手のため」「良かれ」と、あるいは「自分が正しい」という気持ちが全面に出過ぎてしまうと、相手はいくら正しいことを言ったとしても、きちんと聞く耳を持てないでしょう。むしろここでは部下に「自分がもっと早く気づかないで済まなかった」という「詫びる気持ち」を持って接したいものです。

⒉【よく聞いて事実を確かめる。】:人間の行為や考え方や言動というのは、その裏に必ず「理由」や「背景」があるものです。まずは、叱る前に周辺や前後の「事実関係」をしっかりと確認しなければなりません。責任感の強い上司ほど自分の経験ばかりに照らし合わせて、自分の「正義感」「責任感」を全面に出しがちです。しかし、こんな時は「人の数だけ正義はある!」と自分自身に言い聞かせ、「冷静に事実を確認」して、「客観的なモノの見方」ができるよう心がけましょう。

⒊【叱る時の原則は1対1、但し、あえて人前で叱る場合もある。】:上記でも触れたように叱る時には「詫びるように」というポイントがありました。この理由は相手の「自尊感情を守る」「相手に恥をかかせないようにする」ということです。そのための具体的な方法の一つが「叱る時には1対1」が原則になります。大勢の前で叱るだけで、相手の自尊感情を一気に傷つけてしまいます。見ている周囲の人間からしても、自分も「晒され者になるのは嫌だ!」と思い、萎縮してチャレンジもしなくなることでしょう。こうなると組織やチームとして、「イエスマン」が多くなって期待した成果が燃えられず低迷してしまうことでしょう。そして、いつも成果を上げている「スタープレーヤー」としての存在感があって、叱られてもあまりクヨクヨせず打たれ強い人間であれば、「敢えてみんなの前で叱る!」という方法も考えられます。この辺の使い分けの判断は相手によって見極めていく必要がありそうです。

この他にも、気をつけるポイントはありますが、覚えることが目的ではなく、実際に実践するのが目的ですので、まずはこの3つからクリアーしながら、まずは相手と対等で公平に話し合うためのステージやテーブルを作ってから叱るようにしたいものです。「パワハラ」「セクハラ」と言われない状況を整えて、日常の人間関係という土台をしっかりとつくった上で、「体験」の積み重ねとしての「経験」を通じて、身につけていきたいものです。



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