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はじめての武道館

こんなにハマると誰が予想したでしょうか。

ほんの4ヶ月前でした。
火がついたきっかけは、あの漫画とあの曲で間違いありません。

自分でもちょっと意外でした。
なぜなら、バンド名についている「髭」にずっと抵抗があったから。

そう。
4ヶ月前から私は「Official髭男dism」(通称:ヒゲダン)にハマっています。

それまでにも2回「ハマりかけ」たことはありました。
1回目が「I love…」。
2回目が「cry baby」。

どちらもヒットして話題になっているその時ではなくて、世間が次の曲を話題にしている時に一足遅れて聴いていました。

もう何年もテレビをつけない生活をしているので、ヒット曲の情報はたいていYouTubeで仕入れています。
この2曲を知ったのも、好きなユーチューバーさんが「歌ってみた動画」をアップされていたのを見て、「本家を聴いてみよう」とYouTubeでミュージックビデオを見たことがきっかけでした。
「cry baby」は私が初めて聴いた時、発売されてから既に1年弱が経過していて、この曲を含んだアルバムまでもが発売されたあとでした。

自分のペースで、まさに自分の中だけでマイブームを起こしながら気に入ったその1曲だけを聴く。
だから他の曲は聴いていませんでした。
2曲以外に聴いたのは、大ヒットしていた「pretender」くらいでしょうか。「宿命」も知っていましたが、聴いたことがあるという程度でした。

一品料理をつまむようなかたちでヒゲダンの音楽と触れあっていた私でしたが、今年の6月頃転機が訪れました。

ヒゲダンをつまむきっかけになっていたユーチューバーさんが、「『SPY×FAMILY』が面白い」と仰っているのを目にしたのです。
当然「SPY×FAMILY」も私は知らず、どんな漫画なんだろうとネットを検索していたら、なんと第1話から最新話まで全てがアプリで読めるというではありませんか!
すぐに「少年ジャンプ+」というアプリをインストールし全て読みました。

お、面白い!!!

一気に「SPY×FAMILY」にハマりました。
調べるとちょうどその頃テレビアニメをやっていて、来週のを見ようと思ったらなんと次回が最終回。
とりあえず録画の準備をして「SPY×FAMILY」のことを色々と調べました。

するとここでも「Official髭男dism」の名前が。主題歌を担当しているのがヒゲダンで、曲は今年大ヒットした「ミックスナッツ」でした。

これまでに2回好きな曲に出会っていた実績から、すぐにYouTubeのミュージックビデオを見に行きました。
実は最初聴いたときはそうでもなかったのですが、何回か聴くうちにBメロがやけに耳に残り、頭の中をリピートするようになりました。Bメロは「♪幸せのテンプレートの上~」の辺りです。
頭の中で流れ続けるので、本家でお口直しがしたくなりミュージックビデオを見る。するとまた頭の中で別の箇所が流れ続ける。そしてまたミュージックビデオでお口直し。
そんなことをしているうちに、「ミックスナッツ」もほんのりと好きになっていました。
「I love…」と「cry baby」ほどにはハマらなかったのですが、なぜか「他の曲も聴いてみたいな」と、その時ふと思ったのです。

そこからヒゲダンの過去曲を、シングル中心に聴いていきました。YouTubeでです。シングルもアルバムも、全ての曲がYouTubeでアップされていました。様々な曲を次から次へと聴いていきました。すると1曲、自分の好みにドンピシャな曲に出会ったのです。

その曲の名は「イエスタデイ」。

1曲通して聴いたその瞬間、この曲に「ひとめぼれ」ならぬ「ひとみみぼれ」してしまいました。
「すごい曲に出会ってしまった!」と興奮してTwitterにもつぶやくほど。
世間では、約3年前にこの曲は配信されていたにもかかわらず。
流行から随分遅れて時代遅れなツイートをしましたが、誰かにこの感動を伝えたかったのです。それから何度も何度も繰り返し聴きました。

メロディが綺麗でうっとりするというのもあるのですが、私がハマったのは歌詞でした。この曲の主人公となっている男の子が、好きな女の子を想う気持ちが切実で誠実で、少女漫画にも繋がるような風景が思い浮かび、胸をギュッと鷲掴みされる歌詞でした。

この曲に出会って、ヒゲダン熱が一気に最高潮に達しました。
引き続き、芋づる式に他の曲を聴き漁りました。
シングルはもちろん、アルバム曲も。
とりあえずメジャーデビュー曲の「ノーダウト」までさかのぼった時、「大好きだ!離したくない!」と思える曲が10曲以上ありました。

こうしてヒゲダンを好きなファンの総称「髭団」の団員が、ここに一人増えました。
なんというか、運命を感じてしまいました。
「それまでそんなに気にしてなかったのに、あるきっかけで気になり出して恋に落ちる」といった運命の恋を体験した気分です。

そこからはバンド自体を知りたくなり、YouTubeを見たり、Wikipediaを読んだり、Twitterをさかのぼったりして情報を集めました。

メンバーは4人。
なかでも、ボーカル兼ピアノ担当の藤原聡ふじはらさとしさんは、ヒゲダンの曲作りもほとんどされていて、歌詞にハマった私は藤原さんの天才加減に惚れました。

藤原さんの書かれる歌詞は独特な単語が出てくることが多いです。
一見難しそうで歌詞にはあまり使わなそうな言葉が、どの曲にもたくさん含まれています。

現在ヒットしているドラマ「silentサイレント」の主題歌である「Subtitleサブタイトル」にも、例にもれず以下のような言葉が出てきます。

不条理、一挙手一投足、理論武装
過剰包装、不特定多数、一言一句

また表現の言葉も独特です。
「じんわり熱いもの」とか。

アルバムに収録されている「ペンディング・マシーン」という曲は、SNSまみれの現代に疲れている気持ちを歌った曲なのですが、この曲でも表現の言葉が光っています。

「プライベートの誇り合い」とか、「マウンティングの泥試合」とか。

そのほかにも
多様化した現代、型落ちの前頭葉
葬られた叫び声、常識の範疇
……歌詞で使われてるの初めて見ました。

歌や物語で使われる定番のありきたりな言葉ではないのが、非常に新しさを感じさせます。藤原さんの語彙の豊富さと、それをピッタリな場面で使われていることに感心させられます。
小説を書き始めて日が浅い私には大変衝撃で、とても勉強になっています。藤原さんが小説を書かれたら、相当すごいものが出来るのではないかとひそかに思っています。
「世界線」という言葉も、藤原さんが「pretender」で使われてから、世間でもこの言葉が飛び交うようになった気がします。

近年、好きなアーティストがこれといって定まっていなかった私でしたが、「好きなアーティストは?」と聞かれると「Official髭男dismです!」と言えるような状態になりました。

YouTubeではライブ映像もアップされており、次々に見ていきました。
ライブでも藤原さんの説得力のある感動的なMCや、他3人のメンバーの楽しげで音楽が大好きな雰囲気にとても魅かれました。
4人がいつもニコニコしていて仲が良くて信頼しあっていて、4人全員がとても誠実そう。
そして一人一人ちゃんとキャラがあって、キャラ立ちしている。

4人を見ているだけで癒されました。
かいつまんだ場面だけをアップされているYouTubeのライブ映像を見て、全体を通して見てみたくなり、DVD付きのシングルを「ミックスナッツ」「Universe」「HELLO」の3枚購入しました。DVDを見ることで、ライブに行ってみたいという想いもふくらんでいきました。

そんな頃、ヒゲダンが9月からホールツアーにまわることを知ったのです。

生でヒゲダンの音楽が聴きたいなぁ…
今からチケットを手に入れる方法はないのだろうか。

この想いは、再び私を動かしました。

調べてみると、チケットを購入した人がライブに行けなくなった際に公式サイトを通して欲しい人に売る、「トレード」が行われていることが分かりました。
以前、別のアーティストでこのシステムを知っておりサイトの会員登録もしてあったため、近隣の大阪でのヒゲダンライブにエントリーしようと思い、トレード時期になるのを待っていました。
ですが、その1週間前にある日本武道館でのライブで多くのチケットがトレードに出されていることに気付きました。

日本武道館は大阪のホールに比べて収容人数が多いので、当選の確率が高いように思われました。逆に大阪は当たるのが非常に難しそうに思えたのです。
ちょうどこの頃私は、好きな時にどこにでも行ける自由さを手に入れており、大阪住みではありますが、行こうと思えば東京でも北海道でも沖縄でもいつでも行ける状態でした。
そしてこの機会を逃せば、おそらく10年後くらいまでライブなど行けないことも分かっていました。
今しかないのです。
そうなればすぐに気持ちは固まりました。
武道館のチケットトレードの抽選にエントリーしました。

毎日お昼12時に、それまでにトレードに出されたチケットの抽選が行われます。それがライブの前日まで続きます。
抽選に外れると自動的に翌日の抽選に回されるので、毎日抽選結果を確認していました。でも…

当たらない……

なかなか当たらない日々が続き、ついに武道館での4日間のうち1日目当日になりました。この日が2日目ライブの最後の抽選日になっていました。
当たったらメールで連絡がくる、とどこかで読んでいたのでメールを待っていましたがやはり来ません。1日目に続き、2日目もハズレたとがっかりしつつ過ごしていました。
この頃ちょうど公募の〆切直前だったので、明日も小説が書けるじゃないか、よかったよかったと自分をなぐさめていました。

そうして迎えた武道館ライブ2日目当日。
まだ3日目、4日目があるからとトレードの様子を見に関連のサイトを見に行ったところ、そこに見たことのない表示が……

え?
「購入完了のお知らせ」?
え? え?
同じタイトルのお知らせがもう1通ある?
これって! これって!!!!!!!

そう、昨日の抽選でチケットが当選していたのです。
しかも別々の日程で合計2枚!
1枚は4日目のステージバックサイド席。
そしてもう1枚は、なんと2日目の指定席。
2日目と言ったら、この日の午後6時から実施のライブです。
この時すでに午前11時。7時間後にはライブが始まるのです。

「行こう!東京!!!」とすぐに決断し、急いで準備をしました。

メールソフトにメールが届くと思っていましたが、専用サイトに届くお知らせがそのメールだったのかもしれません。
このサイトを見に行ってなかったら「当たってたのに行かなかった」というもったいないことをするところでした。
チケット代は既にカード決済ずみで返金されないし、行きたくても行けないファンがたくさんいる貴重な席を無駄にするという贅沢極まりない行為をしてしまうところでした。
とにかく気付いてよかったです!本当にありがとう、神様!!!

急いで準備を終え、電車で東京へ向かいました。
新幹線で東京に行くのは随分久しぶりです。それだけで興奮しました。
窓際の席はとれましたが、方向が違ったのか見逃したのか富士山は見えず。
それでも終始ウキウキしていました。

そして4時半頃に東京駅へ到着。
その日の夜の夜行バスで大阪へ帰るつもりでしたが、万一のことを考えて宿泊に必要なものも最低限持ってきていました。武道館に行く前に、その荷物をどこかのコインロッカーに預けなければなりません。
コインロッカーはどこもいっぱいで、ようやく見つけたロッカーへ荷物を入れました。既に5時をまわっていました。

ライブの開場時間は5時。それを過ぎました。早く行かなければ!
記念にグッズも買いたい!

電車のルート検索で出てきた方法によると、次は東京メトロ東西線もしくは半蔵門線の大手町駅から、武道館最寄りの九段下駅まで乗らなくてはなりません。

ところが。
いくら探してもこれらの乗り場がないのです。
「あっちにあるよ」という誘導はされているのですが、行ってみてもない、というパラレルワールドに迷い込んだかのような有り様。
この時すでに時計は5時半くらいになっていました。あと30分でライブが始まってしまいます。
せっかく東京まで来たのに武道館にたどり着けない!

間に合わへん!!!嘘やろーーー?!

頭の中は関西弁丸出しで、売店の方や駅員さんに尋ねながら小走りで東京を駆け抜けました。

そして、なんとか東西線の大手町駅へたどり着きました。
あとから気付いたのですが、迷った原因はJR東京駅の改札を出ていない状態でメトロの乗り場を探していたことにあったようです。東京駅が広すぎて、改札を出てなかったことに気付いていなかった。多分そんなところだと思います。

ようやく東西線に乗り込み、いざ九段下駅へ!
到着した時、時計は5時40分くらいになっていました。
ライブに向かうファンであろう人達も、九段下駅からダッシュで向かわれています。私もそれに続くように再び小走りしました。

しばらく走ると、武道館てっぺんの玉ねぎが見えてきました。
初めて本物を見ました。
バンドマンでもないのに「ぶどうかーーーん!!!」と叫びたくなるほど、建物を見ただけで有名人に会ったかのような興奮がやってきました。

そしてあの中に入ると、この4ヶ月、私を奮い立たせ、新しい世界を与えてくれていたヒゲダンに会える!
イヤホンを通して聴いていた音楽を、イヤホン無しで聴ける!
大好きな音が降り注ぐ場所へ行ける!

急いで電子チケットを確認してもらい会場へ入りました。
私の座席は2階南側のS列の席。
この時までよく分かっていなかったのですが、南側(ステージ正面)とはいえ、列はA列から始まりB列、C列、D列と後ろへ進むので、私の席は後ろから4列目くらいでした。観客席の傾斜が急なのでステージは遥か下の方にあります。手を伸ばせば天井に届きそうなくらいの高さでした。

この席にたどり着くまでに、会場内でまた迷いました。
まもなくライブが始まるというのに!
2階南側の席に座られていた二人組の女性が親切にも「あの辺りですよ」と教えてくださって、無事開演前に自分の席にたどり着くことができました。ヒゲダンのファンの方、優しいです!感謝でいっぱいです!!

席に着くと、私の左隣は空席でした。
私と同じように、トレードで当たったことに気付いてない方がいらっしゃるのかもしれません。空席のままライブが始まりました。

ネタバレになってはいけないのでライブの内容を詳しくは書けませんが、ヒゲダンメンバーは私の席から見ると5ミリくらいの大きさで、表情は全く見えませんでした。私の視力が悪いせいもありますが…。
オペラグラスでも覗いてみましたが、オペラグラスで見るよりも直に見る方が大きくはっきり見えた気がします。…なぜ……?

けれども生の歌唱と演奏は非常に楽しめました。
藤原さんの歌唱力はやはりすごかったです。
ドラムのちゃんまつさんが演奏しているのも、動きが大きくて遠くからでもよく見えるので「あぁ、私いまヒゲダンを生で見てる」という実感が湧きました。ならちゃんの笑顔とか、大ちゃんの弦さばきまでは見えずでした。
声出しはできないので、ひたすら手をたたいたり振ったりでしたが、とても楽しめました。藤原さんのMCもとても良く「がんばって生きよう」と思える言葉をくださいました。

そんなこんなで、ライブは3時間ほどで終わりました。
午後9時です。
結局グッズは買えませんでしたが、4日目にまた来るからその時に買おうと思って帰りの電車を調べました。
夜行バスで帰るために、実は東京駅に着いた時に座席をとろうとしたのですが、とれなかったのです。
細かく言うと、バスはあったのに、購入する際に必要なクレジットカードのIDが分からず購入できなかったのです…。普段使わないIDなので覚えてなかったのでした…。

というわけで電車を調べましたが、自宅に帰りつくことまでを考えると、新幹線は8時50分くらいが最終でした。
すでに過ぎています。
それより後の新幹線に乗ったとしても、京都駅で朝まで野宿することになります。さすがにそれはもったいなさ過ぎました。
ですので、その夜は東京でどこかに泊まることにしました。

急遽ビジネスホテルを探しましたがどこもいっぱいでした。
「東京で野宿するの!?それは避けたい!」と不安になりながら探しました。
そんな時、近くに完全個室のインターネットカフェを偶然ネットで見つけ、行ってみると空室があったので、そこで一晩明かすことにしました。
そのネットカフェがかなり快適で、使おうと思えばシャワーもできるし、大画面のテレビを見ることもできます。また、ドリンクが1杯無料でサービスされ、カレーがいつでも食べ放題でした。初めてネットカフェに泊まりましたが、いい所だと思いました。

ヒゲダンライブの余韻に浸りたい、そんな夜でしたが、私には切羽詰まっているものがありました。そう、公募の小説です。
パソコンを持参していたので、ネットカフェで推敲しました。
素人なのにそこまでする?っていう感じですが、この公募もどうしても間に合わせたかったのです。2~3時間睡眠をとっただけで朝になりました。

ヒゲダンライブのもう1枚のチケットは4日目ですが、2日目と3日目の間が数日開いていましたので、ライブの翌日に大阪に帰ってきました。
帰る前に観光もしました。
八重洲ブックセンターと、スカイツリーへ行きました。
どちらもたっぷり楽しめました。

4日目のライブまで、まだ楽しみは続きます。

ところが、そこで衝撃の出来事がありました。
長くなってしまいましたので、そのお話はまた次回の記事で~。


◆後日UPした続きの記事はこちらです。
noteさんのおでかけマガジンにピックアップされました~!↓

そして、八重洲ブックセンターで起こったちょっと不思議な出来事を書いた記事はこちらです。↓


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