『キャット・シック・ブルース』は奇妙だけどシリアスな映画だった
予告編(エログロ注意)
まず殺人鬼キャットマンのビジュアルが印象的にもほどがある。
丈の短い赤いタートルのセーターに黒猫の被り物、股間には猫の性器を象ったデカいペニスバンドをぶらさげ、両手にはカギ爪を装着している。
予告編やポスターでフィーチャーされているこの装いは、一度見たら忘れられないだろう。
そんな衣装を身に纏った主人公テッドが、「猫には9つの命がある。だから9人の人間を殺してその魂を捧げれば、死んだ僕の猫は蘇るだろう」といった狂った妄信を叶えるために、人を殺しまくる。
この映画はジャンル分けするとスラッシャー映画に分類されるんだけど、殺人鬼にあたるキャットマンのビジュアルのおかげで、どこかシュールな味わいがある。
そんな傍から見たら意味のわからない妄念を抱えた奇妙な格好の狂人なのに、本人の態度は至ってシリアスなのがギャップを産んでおかしい。
人を殺した後にその場を行ったり来たりと動いたり、床に寝っ転がって痙攣したようにバタバタと震えて見たりと彼の挙動もおかしい。
ただ、殺人シーン自体はきっちり力を入れて作ってあるので、かなり見応えがある。
冒頭の殺人からのタイトルバックには痺れたし、中盤の4人組のバックパッカーを殺戮するシーケンスも、思わず襟を正して画面に釘付けになるほどかなり凝っている。
また、もう一人の主人公クレアの境遇もシリアスだ。
飼い猫を殺された後にレイプされるという時点で最悪過ぎるのだが、その現場を偶然撮られた上に、映像がネットに流出してしまう。
いわばセカンドレイプの被害にも遭ってしまう。
そしてそのレイプ動画がリアクション動画のための素材になったり、彼女自身が凸の対象になるのだった。
彼女は飼い猫イメルダをネットのバズのために動画に撮って投稿していたが、今度は彼女が心無いネット民からのバズの材料になってしまう。
そういったネット時代の残酷な悲劇もこの映画では扱っている。
キャットマンのビジュアルはシュールだし、所々の演出もシュールなんだけど扱っているテーマはシリアス。
そんな独特のバランスを持ったのがこの『キャット・シック・ブルース』だ。
悲惨で凄惨な話なんだけど最後はなんだかしんみりしてしまう。不思議で奇妙な映画だった。
グロ耐性のある人に見てもらいたいが、視聴手段が限られている上に、まだ日本ではソフト化されていないので、それはなかなか難しい。
あと予告編でも流れている劇中のBGMがどれもセンス抜群なので、サントラをリリースしてください!!!!!
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