ブサイクに生まれて良かった!!【2】夢の国で……
東屋で、イケメン君と二人きり。
至福ってこういうことなのね。
「そういえば、あなたのお名前を聞いていなかったわ」
「アンデルセンと申します」
アンデルセン!!
赤ずきんちゃん!! なつかしい!
ん?あれっ?赤ずきんは、グリム童話だっけ?
アンデルセンは~?えっと…… みにくいアヒルの子!…マッチ売りの少女!…人魚姫! それから、雪の女王!!
「どうかなさいましたか? 急に考え込んでしまわれたみたいで… 僕の名前がどうかしたのでしょうか?」
「アンデルセンか~いい名前だわ~ 童心に帰って汚れた心が洗われる感じ」
「…… うぅ…」
アンデルセンが泣いてる。
あちゃー なんかまずいこと言ったかな?
「名前をこんなに褒められたのは初めてです… こうやってお茶まで御一緒させて頂けて、ブー子さまはなんて心が広くてお優しい方なんでしょう」
それは、むしろ、こっちのセリフです。
「優しいなんて、とんでもない。 こうやってお茶に付き合ってくれて本当に本当に嬉しいわ」
って、お礼をいったとたん、
どうしたことか!アンデルセン!
おいおい声を出して泣き出してしまった…
そこへ、ブサイク男が現れ、
「ブー子さん、アンデルセンをいじめちゃダメですよ」
「アッ!だんなさま、失礼いたしました! ブー子さまがあまりにお優しいので感激して泣いてしまいました」
イヤイヤ、だから 何も優しいことしてないし…
「ブー子さん、ありがとう。アンデルセンがこんなに喜んでいるなんて。
こんどは、僕を喜ばせてほしい。お待たせしたね。さあ、出発しよう」
て、全然待ってないし…至福の時間、とりあえず中断。
「アンデルセン、帰ってきたら、またお茶に付き合ってね!約束ね」
また、アンデルセンががおいおい泣きながら、はいって言ってくれた。
ヨッシャー! ガッツポーズ!
玄関を出たら、スゴッ! 車寄せにながーい車、これがリムジンなるものか?
運転手さんがドアを開けてくれたのはいいけれど、ぎこちなくてぶざまな乗り方をしてしまった。
ブサイク男は、さすがにスマートに乗り込み、これが、カッコよく見えてくるから不思議だわ
街並みも街路樹が植えてあり、洋館のすてきな家が立ち並び、歩いている人たちも美男美女ばかりで なんてすてき~
ん?ということは、あの人たちは、ここじゃ美男美女じゃないってことなのか~
もったいない!あーもったいない!
しかし、ずっと観察していると、窓からみえる道行く人のほとんどが、美男美女で、ブサイクな人が圧倒的に少ないことに気がついた。
そうか~だから私は、希少価値なんだわ…なるほど。
案内してくれた所は、どこもすばらしかったが、だんだんお腹が空いてきた。私ってやっぱり花よりダンゴだわ。
ブサイク男が、
「ブー子さん、お腹が空いたんじゃないですか?これから行くレストランのシェフはとびきり腕がいいですからね。楽しみにしていてくださいね」
以心伝心とはこのことね。
スゴイ門構えのチョー高級そうなレストランに着いた!
うやうやしくお出迎えされて特別室に案内された。
ほんとにこのブサイク男のブー様はすごいお方だわ。
次から次に見たこともないお料理が運ばれてきた。味も格別!
「ブー子さん、食事のあとは、ドレスを買いに行きましょう。今晩、パーティーがあるのでそこでブー子さんをお披露目したいんだ」
パーティー??ドレスを買いに??
「ごめんなさい。私、パーティーなんか出席したことないんです。だからあなたにご迷惑かけちゃうと思うので遠慮しておきます」
「何を言うのです。ブー子さんはブー子さんのままでいいんですから。ありのままでいてくれていいんです」
そう?ブー様がそう言うなら、まぁいいか。
パーティーなんて初めてだから、キンチョーするけど、ブー様もこう言ってくれてるし、一度くらい経験するのもいいかもね。
食事が済んで、車で向かったのは高級ブランドショップ。
いっつも大型スーパーの婦人服売り場で洋服を買っている。それも半額になったのを狙って買ってる。
店員さんが目を細めて、
「なんて、お美しいでしょう」
何を着ても滑稽なんだからどれでもいいと思っていたけれど、高級品は身体になじみ着心地がこんなにも良いことにビックリ。
「ブー子さん、とても似合ってるよ、きれいだ」
ブー様が、ほれぼれしている。
なぜだか、だんだんと、自分は本当に美しいんではないかと錯覚してしまいそうになる。
パーティー会場に着いて、中に足を踏み入れたとたん、みんな一斉にこちらを見た。そして皆美しいという言葉を発し驚いている。
次々にブー様の知り合いが寄ってくる。
ふと、鋭い視線を感じて振り向くと、そこには私ほどではないが、おブスちゃんがこちらを凝視している。あきらかに敵意をむき出しにして…。
なんだ~あの娘は?
キャー、もしかしてブー様のことが好きなのかも~
私に嫉妬してるんだ!きっと!
テレビドラマによくあるパターンね!
私は、ブー様のことなんか好きじゃないから安心していいのに。
「ブー子さん、僕は、ちょっと席を外すので、思いっきり食べて楽しんでくださいね」
「はーい ごゆっくり~」
しっかし、ここは、着飾ったブサイクがたくさんいるわ
と、そこに、どっかで見たことがあるブサイク!
んっ、マサオ!
「マサオ?」
「えっ、もしかしてブー子?」
「キャー!マサオじゃない!どーしたの?こんなところで」
マサオとは、小、中学、高校と一緒で、高校卒業してからは一度も会っていなかった。
「レオナルドの彼女って、ブー子のことだったのか」
えっ? レオナルド? ブー様ってレオナルドっていうの?
そういえば、私、ブー様の名前も知らなかったんだわ~
「マサオも死んじゃったの?」
「え?どういうこと? 死んでないよ」
「ブー子は、知らないでここに連れてこられたのか」
「どーいうこと?」
【3】につづく
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