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ブサイクに生まれて良かった!!【1】謎の貴公子


何故こんな顔に生まれてきたんだろう。

小さくて細い目、まつ毛もないに等しい…
それで、つけまつげをすると、なぜかみんなが笑う。

目が小さいなら鼻も小さくあるべきなのに、なぜに鼻はどーんと顔のヌシとばかりに誇示、主張しているのか?
いやいや、もっと負けず嫌いなのが、何と言っても大きな顔だ。どこからみてもチャンピオンだ!
存在感のない瞳はよーく見ればつぶらでかわいいんだけれど誰も良さをわかってくれない。

あ~あ

人間、顔じゃないよと世間は言うけど、なーに言ってんのよ!
美人がどれほど得をしているか!!

私なんか、一度だって いい思いをしたことがないんだから。

男は、美人の前では鼻の下伸ばしてあの手この手でくどくのに、私のことは完全無視。眼中にない。ヒドイもんだよ、まったく。


でも、そういう私だって、やっぱりかっこいい男性をみると、うっとりするんだから、まあ、仕方ないね~。

この逆境に負けず、人がなんと言おうと強く生きていこう!
毎日、自分に言い聞かせ、鏡の前でほっぺをパンパンたたくのだ。

今日もブス代表ブー子!がんばります!!


会社に着くと、同僚のあさ子が寄ってきた。

「ねぇ、ブー子、お願いがあるんだけど、今日合コンあるんだけど、行ってくれないかな?」

「はぁ? 合コン? わたしが?」

「お願い! 今日のメンバーに、ドタキャンされちゃって、みんなに声かけたんだけど、今日の今日は、無理みたいで、人数が足りないのよ~ 助けて!」

「用事は、ないけどさ~でも、私でいいの?」

「いいの、いいの、人数がそろえば… 今日の男子には、あんまり期待してないから」

「だったら、最初から合コンなんかやらなきゃいいのに…」

「仕方ないのよ、今日のは友達の借りを返すためにセッティングしただけだから。気合い入ってないし。だから、ブー子でもOKよ!」

ブー子でもってなによ!

まぁ、仕方ないか

人助けのつもりで、一度合コンなるものを体験するのもいいか…

行く約束をして、あさ子は自分の席に戻っていった。


合コンに行くとわかっていたら、もうちょっとましな服装してきたのに~
って、コラコラ、ブー子よ、どんなに素敵な服を着ても、このりっぱなお顔にはカスんでしまうことを忘れていた。

アハハ…かえって、地味な服を着て、目立たないようにしているほうが、いいな…
ヨッシャー! 地味な服を着てきた私はラッキー!!ということにしておこう。



退社後、あさ子とよく似たキレイ系のおしゃれな3人と待ち合わせして合計5人で、合コン会場に向かった。

お店に着いたら、既に男子5人が席で待っていた。

私は、申し訳ないのですみっこに行き、ひっそりと席に着いた。

男子が私を見てあきらかに失望の表情を浮かべているのが分かり、ごめんねって心の中で謝った。

別に悪いことしているわけじゃないのにと思いながらも失望させているのは事実だから、やっぱりごめんねなんだろうな~

あれっ、男子の面々の中にも一人、いけてないブサイク男子がまぎれているではないか!

よかった~なぜかほっとしている私。

これで責任は、五分五分ということで… なんの責任かは、わからないが…。

時間がたつにつれて、みなの席が入り乱れ、ついに、ブサイク男と私がすみっこに追いやられてしまった。

「あ~やっと、あなたの隣に来ることができ、光栄です」

「は?」

「あなたは、大変お美しい! さっきから拝見しているが、こんなに美しいのに、他の方への気配りもできてけっして出しゃばらず素晴らしい方とおみうけする」

「ん?」

なんだ~この人、変わった人~

でも、なぜだか分からないが品の良さというか高貴な方を連想させるような雰囲気が…ムム…漂っているではないか。

フフフ、テキトーに話し合わせてあげちゃおう。

「いえ、いえ、そんなことはございませぬ。わたくしは、目立つのが好きではございませぬので。そういうあなた様のほうが、大変なイケメンでは、ございませんか」

ふん、ふんと当然のような顔をしたので、なんじゃこいつ!

と思ったが、面白いので、暇つぶしにおしゃべりのお付き合いをすることにした。

すると、

「あなたもあっちの世界から、遊びに来ているのですか?」

と、ブサイク男が訊いてきた。

「はっ? あっちの世界? あっちってどっち?」

「えっ?あなたは、こちらの世界の方なのですか?あなたは、外見も美しいがそれ以上にオーラも大変輝いているので、てっきり同じ世界の人かと…」

「オーラ??? 意味がわかりませぬ」

「それは、失礼いたしました。でも、こんな方が世の中にいるなんて、こっちの世界にまで来た甲斐がありました」

「あの~さっきから何を言っているのか、さっぱりわかりませぬが…」

「是非、あっちの世界に僕と一緒に帰ってくれませんか?」

なんじゃい?こいつ!

いきなり、プロポーズ?

田舎に一緒に帰ろうと言っているのか、イヤイヤ、もしかして一緒に死んでほしいと言ってるのか??

いくらなんでも、ブサイクを苦に二人で仲良く心中~なんて  
それは、ないでしょ~

いくらブサイクでも生きる権利は、与えられてるんだし…


「とんでもございません…私などあなたさまと一緒に帰るなどと…」

とりあえず、断ってみる。

「いえいえ、あなたでなければ駄目なのです。あなた以上の方が今後現れるとは、とうてい思えないのです」

「ひとつ訊いていいですか?わたしのどこが美しいのですか?」

「おぉ~、その謙虚なところ!完璧な美しさを持っているにも関わらず、まるでそれをわかっていらっしゃらないなんて…僕は、絶対あなたを連れて帰ります。僕の屋敷にきてほしい… あなたの望むものは、何でも与えよう」

空いた口が塞がらないっていう経験がしてみたかったけど… まさに今!これ!

屋敷???

何でも買ってくれる???

!!! あっ!これ!もしかしてドッキリテレビ!!

そうだ!絶対そうだ!!

どこかに隠しカメラがあるのね~


だとしたら、だまされていてあげないと、面白くないわよね~
ヨッシャー! こうなったらトコトン付き合いましょう!!

「こんな私でよければ、あなたのお屋敷に参りますわ」

「おぉ~、僕は、なんて幸せものなんだ!

では、さっそく参りましょう!」

へっ! 今?

「みなさん!僕たちは、これにて失礼いたします。彼女を独り占めしてしまうことを、お許しください」

「ヒュウ、ヒュウ~ お似合いだぜ~」

「ブー子、がんばれ!」

あさ子がガッツポーズをしている。

イヤイヤ、なぜだかおかしなことに…

ブサイク男に引きずられるように、合コン会場を後にしたのだった。


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小鳥のさえずりが聞こえる。

あ~よく寝た~

目を開けたとたん、自分がどこにいるのかさっぱりわからなかった。

でも、すごいところで寝ていたのは確かだ…天蓋付きのベッド、まわりの家具は私にでもわかるすごい高級品だ。
テラスには、お花がいっぱい咲いていて、木立の間から木漏れ日がとてもきれいだ。
小鳥たちが、心地よい音楽を奏でてくれている。もう最高の目覚め。


「お目覚めでございますか?」

「ここは、どこですか?」

「だんなさまのお屋敷のゲストルームでございます」


目の前には、今まで見たこともないような目をみはる美人がいた。

だんなさまと言っていたから、使用人なんだわ。

「だんなさまに知らせてまいりますす。バスルームは、あちらでございます。お洋服は、こちらに置いておきます」

だんなさまって誰? もしかして、あのブサイク男のこと?

そういえば、なんかお屋敷がどうとか言ってたな~

合コン会場を出たところまでは、思い出せるが、そのあとの事が、記憶にない!

あのブサイク男は、なんなの?

ドッキリテレビも手が込んでいるな~

しかし、こんな素人の私を騙したって、視聴率、取れないだろうに~

バスルームが、またチョーすてき!

バラの花びらがバスタブに浮かんでいる。

う~ん なんていい香り~

なんかセレブってかんじ!

バスローブが置いてある! オシャレ~

着心地も最高じゃん!!

おっ!なんだこの服!

超、高級品じゃないですか!

どう見たって私に似合わないでしょうが~

そうか!!ここで笑いをとるわけか!

しゃーない、乗りかかった船だ!

さっきのメイドさんが戻ってきた。

目を細めてうっとりしながら

「なんてお美しいでしょう…」

美しい? ん? ばかにしてる??

しかし、このメイドさんの演技力は、すごいよ!

本当に美しいものをみる目つきをみごとに表現できてる!

これだけの美人だし、将来はすごい女優になれること間違いなし!

なるほど!!ここで視聴率取るってことね!!

ヨッシャー!!乗り掛かった舟だ!!

私はスカートの裾を持ってクルクル回ってみせた。

「ホントにお似合いです!!」

彼女は私を褒めちぎる。

あ~、いくらなんでも流石にこんな美人にここまで言われるとへこむわ~

やーめた!!

「もう、止めましょうよ。こんな小芝居。こんなすてきな服は、私には似合わない。豚に真珠よ。あなたが着たらさぞかしお似合いなんでしょうけど」


「何をおっしゃるのですか!めっそうもない。こんなブサイクなブスは、何を着ても似合いません」


「もういいわよ~演技しなくても。あなたみたいにきれいな人にそんなふうに言われたら、さすがの私もめげるわよ」


「何をおしゃられているのかわかりません。演技なんかしていませんし、私をきれいだなんて、からかっていらっしゃるんですか!」


「ちょっと待って!あなたみたいに美しい人、わたしは会ったことないわ」

「そんなこと言われたのは、生まれて初めてです」

と言って、感極まっている。

なんか、おかしいぞ…  そういえば、ブサイク男は私を美しいと言っていた?

ドッキリカメラにしては、いくらなんでも手が込みすぎてるよな~
芸能人じゃないんだし…

「ちょっと、聞いてもいいですか?  私って美人ですか?」


「聞くまでもないです。誰が見ても美人でございます」


ちよっと、ちよっと、どうなってるの~

そういえば、あのブサイク男が、あっちの世界って言ってたな~

え~じゃ私、死んじゃったのかな~

ここは、天国なのか!!

なるほど~天国だからこんな私でもキレイなんだわ。

死んじゃったのは残念だけど、こんな天国だったら、まぁ~いいか~死ぬのも悪くないかも。


「お食事の用意が出来ていますので、ご案内いたします」

お~そういえばお腹がぺこぺこだわ。

死んでもお腹って空くものなのね。

もう、太るのを気にしなくていいのね。

ホテルのダイニングのような立派な食堂に入ると、大理石の大きなテーブルにブサイク男が既に座っていた。

「ブー子さん、お目覚めになったんですね。あなたが一緒に来てくれて、僕は嬉しくて嬉しくて興奮してあまり寝られなかった」

一緒に来てくれて嬉しいとか言うけど、あなたが私を道ずれにしたんでしょうが~。まあ、いいけど……。


目の前には、朝からすごい御馳走がならんでいる

美味しそう!食欲全開!いっただきまーす!

こんな天国なら大歓迎!

う、 う、うまい!!!

必死になって食べていると、ふっと視線を感じ前を見ると、

な、なんと!! 目の前の男性にビックリ仰天!!!

ハリウッドスターにそっくりな超セクシーなイケメンがいるではないか!!

天国ってこんなに素敵なところなの~

私の食事の給仕担当なのね。最高!!

近くに来られただけで、もうテンションマックス!

ガチャーン!

私が、じろじろ見るもんだから、イケメン君がキンチョーして食器を落として割ってしまった。

あちゃー、ついつい見過ぎてしまった!!

「ごめんなさい。つい、見とれて…… あ、いや、見てしまって…」

しどろもどろで頭を下げて謝る。

イケメン君が涙を流している。

あー、やってしまった~。

そりゃ私のようなブサイクにじっと見つめられたら嫌な気持ちになるよね。それで、お皿割ってしまったんだもん。私は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。

ふと、ブサイク男の視線を感じて、そちらを見ると

「あなたは、なんて素晴らしい人なんだ!責めることなく優しい言葉をかけて、使用人に頭を下げるなど出来ることではありません。僕は感動しています」

えっ、あ、そうなの?感動??

ふと、イケメン君を見ると目をウルウルさせて私を見ている。

ということは嫌がっていない?良かった~~

感動しているのは私の方だ。こんな素敵なイケメン君をそばで見られて。

「ブー子さん、僕は少し席をはずしますので、ゆっくり食事を楽しんでくださいね」

はいはい、どーぞどーぞごゆっくり。

ブサイク男が席を外した後、イケメン君に訊いてみた。

「あの、言いづらいのは、承知で聞くんですけど、だんなさまってどんな方なのですか?」

「だんなさまは、頭脳明晰、経済力もおありで、人柄も温厚で人情に厚く、その上、見ての通り容姿端麗でございます。みなのあこがれの的です」

容姿端麗?

やっぱり! この天国は、容姿に関してだけは、美の基準があべこべ、逆なのか??

え~!! ということは私が美人ってことなの!!

それはないわな~この私が美人?

でも、考えると辻褄があう。う~ん、ほんまかいな??

「あの~、私ってどんな風に見えますか?」

変な質問をしてイケメン君を困らせてしまったか?

イケメン君は困るどころか即答でうっとりしながら、

「本当におきれいで見とれてしまいます」と言ったではないか!!

やはり、ここはあべこべの世界だった。

ということは、このイケメン君はこの世界ではブサイク?ってこと!!

信じられない!!

しかし、本当にきれいな顔だちをしているわ~私がじーっと見るもんだから、下を向いてしまった。なんて、かわゆいのかしら…

再び顔をあげたときに一度でいいからやってみたかったウインクをしてみた。

なんと、彼が、真っ赤な顔で、恥ずかしそうに はにかんでいる。

アイヤ~ 美人って楽しい!


ブサイク男が戻ってきた

「ブー子さん、今日は、この後に、いろいろな所にご案内いたしますから、食事が終わり、一息ついたら出かけましょう。その前に屋敷の中を彼に案内させますので…」

なんと、このイケメン君が案内してくれるの~ ヨッシャー!
天国最高~

「ブー子さま、だんなさまは、お忙しい方なので、用事を終えられたら、ご出発ということです。お見苦しいのですが、この僕がお屋敷をご案内させて頂きます」

「いいわよ!いいわよ!あなたがいいの!」

「えっ?」

「なんでもない、なんでもない… 気にしないで」

しっかし、すごいお屋敷だわ~

お庭がきれい~ お花が咲き乱れ噴水まであるし、東屋にはソファーとテーブルが置いてある。
あんなところで、ティーなんか召し上がっちゃったら最高だわね
こんなイケメン君と一緒にね!

「東屋で、お茶でもいかがですか?ご用意いたしますが…」

「ほんと!うれしい」以心伝心。

イケメン君が、お茶を用意してくれてるあいだ、ぼっーと空を見上げ、そよ風にうたれていたら、あまりの気持ちのよさにウトウトしてしまった。

わ~!! 会社に遅刻して打ち合わせに間に合わず、課長にお説教くらって目が覚めた。 あー嫌な夢を見たわ。

目の前では、イケメン君が素敵なカップに紅茶をそそいでくれているところだった。

やっぱりこちらが現実?

まぁ~どうでもいいや!今は、このイケメン君とここにこうして居るんだから。

イケメン君にもお茶をすすめたら、遠慮して断っていたが、私がどうしてもって言ったら座ってくれた。

彼は照れくさそうにはにかんで隣に座った。

夢のようなこの瞬間!!どうか覚めないで~

【2】につづく

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