- 運営しているクリエイター
2021年2月の記事一覧
夢見るそれいゆ 135
私はバスに乗り、I町1丁目で降りた。
そのバス停は、夏越クンと小さい頃行ったあの百貨店の前にある。
私は百貨店を見上げた。
私は、夏越クンは昔からずっと変わらないって思っていた。
でも、私が知らないだけでいろんな葛藤があったのだと気付いた。
今は、危篤状態のお父さんと向き合う為に実家に帰っている。
【弱いままではいたくない】
そうだね、夏越クン。
私も弱いままではいたくないよ。
行方不明
夢見るそれいゆ 134
キッチンに戻ると、パパが朝食を作って私達を待っていた。
「どうやら、作った服着ていけるようだな。
良かったな、ひな。」
パパの大きな手が私の頭をくしゃくしゃに撫でた。
夏越クンの頭ぽんぽんとは違う、力強くも頼もしい感触だ。
「キャー、柊司くん。ひなちゃんの頭ぐちゃぐちゃにしないで~!」
ママが叫んだ。
「す…すまない、あおい。」
パパは何故か私ではなくママに謝った。
「まぁ、いいわ。ひなちゃん
夢見るそれいゆ 133
夏越クンが女の人が苦手なのは、お義母さんとの確執が原因だと今なら分かる。
「ママ…私って単純だね。女の子らしい格好をしなければ、夏越クンに嫌われないって思い込んで…。」
私は自分の浅はかさにガッカリした。
「ひなちゃん、夏越クンも悩んでいたのよ。
学生時代はまだ何とか距離を置けたけど、社会人になってからは避けられないでしょう?
何とか苦手を克服しようと頑張っていたのよ。」
「…そうなんだ。」
夢見るそれいゆ 132
私が小さい頃、夏越クンと百貨店にお出掛けしていた時だった。
たまたま買い物に来ていた夏越クンの職場の女の人が話し掛けてきた。
その人は、髪が長くてスカートやヒールを履きこなしていた。オシャレなネイルも施されていた。
夏越クンは表面上はにこやかに話していたのだけど、私と繋いだ手が冷たい汗をかいていた。
私は咄嗟に、「夏越クン、私ケーキ食べたい!」と半ば強引に女の人の話を断ち切り、逃げるように夏越
夢見るそれいゆ 131
数分後、ママが私をクローゼットの前に呼んだ。
「ひなちゃん、私のお古だけどこれあげるわ。」
それは、ペチコートだった。
履いてみると、透けなくなっただけでなく裾さばきも良くなった。
「ママ、ありがとう。おかげで、ワンピース着ていけるよ。」
「良かった、役に立てて。」
ママが、満面の笑みを浮かべた。
「ひなちゃんは、昔からあまり自分では女の子らしい服選ばなかったものね。」
ママの言葉に、私はハ
夢見るそれいゆ 130
目が覚めると、まだ6時だった。
雨は止み、既に外は明るくなっていた。
今日は蒸し暑くなりそうだ。
私はシャワーを浴びた後、昨日作った服を着た。
鏡を見ながら、更紗先輩のくれたイヤリングを付けた。
キッチンに行くと、パパとママが起きてきていた。
コーヒーの香りが部屋を満たしている。
「おはよう、パパ、ママ。」
私は二人に挨拶した。
「おう、おはよう。」
「おはよう、ひなちゃん。あら?」
いつも
夢見るそれいゆ 129
帰宅してから、私は布に鋏を入れた。
更紗先輩にもらったイヤリング。
このイヤリングに似合う服を作ろう。
そう思ったのだ。
久しぶりにワクワクしている。
裁断をひと通り終わって夕飯を食べる為、いったん作業を中断した。
早く続きがやりたい。
食べ終わったら、すぐに作業を再開した。
ミシンに布と同じ色の糸を通す。
電源を入れると、手元のランプが点る。
布をセットして、ミシンのペダルを踏む。
私
夢見るそれいゆ 128
「更紗先輩、あの~國吉先輩と私は…」
「分かってるよ、付き合ってないってことは。
いくら私が國吉の従妹でも、付き合うのをひなに無理強いすることは無いから安心してよ!」
そう言われて、私はほっとした。
「それで、明日の展覧会の待ち合わせのことなんだけど、現地集合ね。」
「はい、分かりました。」
予鈴が鳴った。
そろそろ、昼休みが終わる。
「先輩、イヤリングありがとうございました。
大事にします
夢見るそれいゆ 127
「ひな、このイヤリングもらって!」
更紗先輩が無邪気な笑みを浮かべている。
「え?は、はい。」
あまりにサプライズなプレゼントに私は間抜けな返事をしてしまった。
ちなみに、私の誕生日は来月である。
「羊司から聞いたと思うんだけど、昨日國吉のファンの子達とお茶会に行ってきたのね。
そこのカフェで、ハンドメイドアクセサリーのワークショップやってたんだ。
これは、ひなに作っていきたいと思ってさ。」