マガジンのカバー画像

さらぬわかれ

111
村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
¥240
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

さらぬわかれ 68

「いいの?もし祟りに全然関係無い内容だったりしたら、私が見たらまずいんじゃないの?」
「その時はその時だよ。それに栄子は…いや、何でもない。」
恒太の顔がほのかに赤くなった。

もっとみる

さらぬわかれ 69

「恒太へ
この手紙を読む頃には大きくなっているだろう。
幼いお前には抱えきれないこの家の闇を、手紙にしたためる。
お前が知ってる丘の上の桜の木、彼処には我らの先祖・恒之新が心中しようとした際に死んだ女の遺灰が埋められている──」

もっとみる

さらぬわかれ 70

栄子は恒太の意思を尊重して、手紙の続きを読んでもらうことにした。

「恒之新と女を見つけたとき、女は生きていた。
しかし、村人たちは恒之新だけを助けて女を見殺しにした。
意識のなかった恒之新には、既に女はこと切れていたと嘘をついて。」
恒太の手紙を読む手は震えていた。

もっとみる

さらぬわかれ 71

「『別の理由』か…。
祟りが幽霊本人の起こしている現象とも限らないわけか…。」
恒太は考えこんでしまった。

もっとみる

さらぬわかれ 72

「つまり、さくらちゃんという幽霊をうちの先祖に会わせることが出来れば桂ちゃんは目覚めるのね。」
波留日はまったく疑いのない顔で、栄子に聞き返した。

「確実にとは言えないけど。
波留日さん、信じてくれるんですか?」
「不思議なことは既に起こっているもの。
信じないわけないわ。
それに、祟りがなくなれば皆解放されるわ。
あの人も…。」

もっとみる