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さくらゆき
2021年2月3日 21:29
(もしも恒太がいなかったら、私は誰も信じられないで生きてたんだろう。) 15歳になった今でも一緒にいてくれる恒太に、栄子は感謝の気持ちでいっぱいになった。 恒太と栄子は、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。「いただきます。」 先ほど出来上がったばかりの肉じゃがは、とても優しい味がした。
2021年2月10日 21:26
外に出ると、空気が生ぬるかった。「普通、こういう時って男が送っていく方じゃないかな。」恒太はそう言ったが、栄子の寂しさを察したのか、それ以上は突っ込んでこなかった。
2021年2月17日 20:43
帰り道、栄子はなんとなく「あの木」のある丘の前を通ってみることにした。 恒太が言った「また明日」という言葉が無敵な気持ちにさせたのかもしれない。 あるいは、桜の木が栄子を呼んだのかもしれない。 今日は、「あの出来事」からちょうど8年なのだから…。
2021年2月24日 20:10
栄子が異変に気付いたのは、桜の木に近付いた時だった。「あれ…?夜なのに木がはっきり見える。」 丘の下の方には歩道があって、そこには電灯がともっているのだが、桜の近くには祟りを怖れて人が近付かないゆえに灯りなどはない。 天気は良いが、月もない。 どうやら、桜の木自体がほの暗い光を放っているようだった。