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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全…
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2020年12月の記事一覧

さらぬわかれ 4

きっと、実際は数分の出来事だったと思う。
でも、栄子にとってはずっと長い時間に感じた。

「おーい、待たせたな!」
男の子は、大人を数人連れて戻ってきた。

「チッ!何でこんなところに来たんだ。」
駐在らしき男が舌打ちしながら言い捨てた。栄子には、何のことかわからなかった。
「見かけない顔だから、こないだ越してきた家の子じゃないのか?」
中年の男が栄子の顔をまじまじ見てきた。

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さらぬわかれ 5

桂は、大人たちによって診療所に運ばれた。

「特に異常はありませんね。」
と先生が抑揚なく言った。
「そんなわけない!これのどこが異常じゃないっていうの?」
栄子は先生のくたびれた白衣に掴みかかった。眼から涙があふれた。

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さらぬわかれ 6

次の日になっても、桂の状態はまったく変わらなかった。
村には精密検査の出来るような病院はなかったので、村の外の大きな病院で桂を診てもらった。
しかし、この病院の医者も原因を突き止めることは出来なかった。
何度も何度もいろんな病院で検査をしてもらったが、結果は変わらなかった。

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さらぬわかれ 7

結局、何の進展もないまま桂は家で静養することになった。意識がないのと成長しないこと以外はすべて【正常】だったからだ。

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さらぬわかれ 8

「ん…。ん~!」
栄子は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
「昔の夢見てたんだ。」
眠っている間にすっかり夜になってしまっていた。部屋に闇が立ちこめている。
聞こえているのは、時計の音と、桂の呼吸だけ。
「私だけは、絶対忘れないからね。」
そう言って、栄子は桂の小さな手を握った。桂は反射で握り返した。ほとんど動かすことのないその手は恐ろしく冷たい。

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