さらぬわかれ 8

「ん…。ん~!」
栄子は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
「昔の夢見てたんだ。」
眠っている間にすっかり夜になってしまっていた。部屋に闇が立ちこめている。
聞こえているのは、時計の音と、桂の呼吸だけ。
「私だけは、絶対忘れないからね。」
そう言って、栄子は桂の小さな手を握った。桂は反射で握り返した。ほとんど動かすことのないその手は恐ろしく冷たい。

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