見出し画像

041.スプーン一杯の認知症

この頃は、モノへの執着が失くなった。父への執着が増している。スプーン一杯の認知症も少し大きめのスプーンになったのかもしれない。

それは、今日買ったやつです。

母は、妄想で父に愛人が居ると言う。もう半年くらい言っている。
貧乏だから、父から何ももらっていない。代わりに親から質屋で「時計を買ってもらった」「指輪を買ってもらった」と言っている。父は、そんな母を横目で見ながら、ニヤけている。その父を見た母は、馬鹿にしていると怒る。ちょっとしたルーチンである。

母はカバンが好きです。パッチワークや洋裁が趣味で古布などで作ったり色々好きなものを作っていた。しかし、「お出かけ」となると、いつも決まったカバンを持っています。いました。

一番高くて好きなものを買え!と父が言う。

父は、母の執着に疲れてしまった。あまりに毎日責められるので、よく愚痴っていた。
「この財布は20年くらい使ってる。私は辛抱してるのに、遊びに行く」と毎日のように言われているらしく、私が母と出かけるときに父が車まで追いかけてきて「財布買ってこい」と窓越しに言った。
「お金は?」
「本人に出させ!」と言うので、
「それじゃ、買わんやろ」と、言ったが、以前多めにお金をくれたことがあったので、それで私が買うから、父ちゃんからお金もらったってことにしよう」と提案した。
母に、昔よく行っていた百貨店の『大丸』に行こうと誘った。何件かショッピングセンターに下見に行ったが、好きそうな財布がなかったから、ここなら何かあるだろう!と思って行ったが、流行ではないようで売ってなかった。
良さげなのは、父の想定をはるかに超えている。私の予算もはるかに彼方に超えてしまう。

買えない!

そういえば、私が買ったカバンを持っているんだった!ふと、財布売り場の横にカバンがあるではないか!いつも持っているカバンは、もう毛羽立っている。買うのは、カバンにしよう。
いつも持っているカバンは、私が15年くらい前の無職の時にだったと思う、私が買った。今も思うが…何故、収入の無い私に「これ欲しい」攻撃の視線を送り、おねだりするのか私には、理解できなかったが、あまりの懇願に、あっさり好きなものを買ってあげた。以来、お気に入りのカバンとなった。ので、これなら、納得いくはず!カバンに決めた。あれやこれやと30分くらい狭い売り場をウロウロして、サイズや持った感じを鏡で見て、やっと決まった。

支払いの時に、店員さんが「今持っても、よくお似合いです」と言うので、「ほんと、そうやね」と同調すると、母は、「じゃ!」と笑顔になり、持ち物をカバンから出して、移し始めました。
支払いを済ませ、新しいカバンを肩からかけて、さすりながら歩いた。

車に乗るとカバンを、膝の上に置き
「このカバンも長く使ったからね~」と遠くを見ながら言ったのですが…それ、新しいやつ!と突っ込みたいのを我慢して「そうやね、よ~使ったね」と返事をしたけれど、その返事は無かった。

腹の中と言えば、

美しい話で終わるかと言えば、そうではなくて、店員さんの前で言おうとしていたのを、必死で止めたのですが、二人の時に、母は
「こんなもんで、私の機嫌を取る?な~に言ってんだ!許すわけない!こんな安いもので!私の人生返せって話よ!」
と、息巻いてましたが、私は横で、私もこんな風になるのかあ?と不安になる瞬間でした。
思い出すたびに、イライラしている母を見て、今日はちょっと可哀そうに見えました。一つまみの幸せを見つけられないのは、勿体ないなと・・・

結局、許せないそうです。

帰宅したら案の定

母は、「こんなもんで許されると思ってるんか!」と怒鳴ったのですが、半日出かけたので、それ以上の元気は無くて、疲れたから寝たいと言って早めに就寝。
またモノを買ったということで、両親と同居の姉から、
「金もないのに買い物して!今からモノを減らしていかないといけないのに!なんも考えてない!」
と罵倒され、両親はいつもの事、私は初めての事で、一瞬黙りましたが、今使っていたものはあると使うだろうから、私が持って帰ることにしました。

私が、親の金を使って楽しんでいると思い込んでるようですが、行動が、今の母に似ていると思うと、少し先が怖い。それなりに同居の大変さもあるんだろうから、責める気は無いが・・・相変わらずだな。

母は、その夜は愚図らずに大人しかったそうです。忘れてしまうから、モノがあるといいのかな?何か買ってあげると機嫌が良いようです。

忘れてしまうことが、少しずつ増えていき、笑う回数が少しずつ減っていき、食べる量も日増しに減っている。やせていく母を、姉はどう見てるのだろうか。この頃、聞こえないくらいの大きさの独り言が増えてきた。不安なのだろう。

身勝手な母の性格は、もっと激しくなるのだろう。私もどこまで付き合えるのか、少し不安。なるようにしかならないから、出来るときに、出来ることを・・・・

総菜を作って持っていくと喜ぶ。昨日食べても、しばらくこれは食べてないと言う母。過去の母子のギコチナイ関係は私の中で解消されているのだろうか。私も不安よ母ちゃん。

今月は母の日がある。