懐かしくて新鮮なおもちゃに出会える「いとしのレトロ玩具展」
こんにちは。あきこです。
私は東京を中心に約30店舗を構え、55年間続いたおもちゃ屋「さくらトイス」の二代目社長を務めていました。
いつもは、戦後すぐに父が開いたおもちゃ屋の歩みや、その時代にはやった懐かしいおもちゃについての記事を書いています。
そんな私、先日、弥生美術館(東京都文京区)にて開催中の、「いとしのレトロ玩具展」に行ってきました。
館内には、おもちゃ屋の娘として、そして二代目社長として身近に接してきたおもちゃたちがたくさん!懐かしくて、今見ても新鮮で、ワクワクする展示でしたので、私なりの見どころを3つご紹介します。
見どころ1.時代を映す、お店屋さんごっこおもちゃが勢ぞろい
もっとも目を引いたのは、お店屋さんごっこのおもちゃの多さです。
お菓子屋さん、スーパーマーケット、薬屋さん、八百屋さん、・・・。今見るとラインナップの多彩さ、本物そっくりのセット内容に驚かされます。
これは、昭和31年に発売された、増田屋コーポレーション(当時は増田屋齋藤貿易)の「社会科玩具シリーズ」です。ごっこ遊びを通して、子どもたちに社会のこと、働く人のことを知ってほしいというねらいで作られたそうです。
私が幼稚園のころ、父の経営するおもちゃ屋でもたくさん売られていたことを覚えています。家がおもちゃ屋だったので他のお店屋さんにも興味があり、私が「これで遊びたい」とリクエストして自宅に持ち帰り、箱が山積みになっていました。今思うと、ぜいたくな環境ですね!
このおもちゃを初めて見る方でも、食品や薬の本物そっくりなパッケージを「懐かしい!」と感じるのではないでしょうか。
リアリティがないと子どもたちが遊びの世界に入っていけないと、メーカー側では「本物そっくり」にこだわり、許諾を得て実在の商品をモデルにしていたそうです。(※)
お店屋さんごっこおもちゃは、その後の時代にもさまざまなものが販売されますが、そこには時代の変遷が見られます。
例えば1960年代、レジスターはこんな形でした。
小さい頃からお店が大好きな私が一番好きな場所は、レジでした。
お客様がいないのにレジに触って怒られたことが何度もありました。
原宿にあった店(昭和27~35年)は、木製のレジだったんですよ。
また、切符の自動販売機も。
もちろん、電話も、当時はこんな形でしたね。
一方、昭和50(1975)年、スーパーマーケットの陳列やカートを模したおもちゃです。
平成5(1993)年のスーパーは、こんな感じ。レジも液晶になっています。
1970年代のお菓子屋さん。懐かしのお菓子やジュースがありますね。
また、生活の変化も見て取れます。
昭和30年代のままごとセットには、お釜やおひつなどの台所道具が入っています。
一方、こちらのキッチンセット(年代不詳。昭和50年代ごろでしょうか。)には、電気炊飯器が入っています。そして、「赤いきつね」も!
やはりおもちゃは、時代や社会の変化に寄り添っていますね。
見どころ2.コレクターズアイテム、ブリキのおもちゃたち
私の父がおもちゃ屋を始めた戦後すぐの頃は、日本のおもちゃ産業がぐんぐん復活していった時期でもありました。
戦勝国アメリカが日本へ食料を輸出する見返りとして選ばれたのが、生糸とおもちゃだったのです。
日本のおもちゃ職人はアメリカの子どもたちのために優先的におもちゃを作り、輸出しました。
昭和27(1952)年に日本の占領が正式に終了するまでの期間、日本から輸出されたおもちゃには、made in occupied Japan(占領下の日本製造)と記されています。希少性と質の高さから今ではコレクターズアイテムになるほどの人気です。
詳しくは、以前の記事でもご紹介していますので、もしご興味があればご覧くださいね。
日本のおもちゃはとても人気があり、その後昭和30年代にも盛んに輸出されていました。そんな、メイド・イン・オキュパイドジャパンのおもちゃと、昭和30年代の輸出おもちゃも多数展示されていました。
左下の「宇宙円盤」は、クルクル回転しながら、音と光を出して、父のおもちゃ屋の店内を動き回っていました。アメリカ人のお客様がびっくりしてよけながら、面白がって買って下さったのを覚えています。
「少女ライダー」は、初めて見ました。
1950年代に、バイクに乗る女の子は斬新だったのではないでしょうか。ポニーテール、赤いスカーフ、革ジャン、ジーンズというファッションにもびっくりです。多分輸出用に作られたのではないかと思います。
そう言えば、原宿の店に勤めていた女子店員が、「ジーパンを買ってはいたら母親に不良の始まりだと言われ、泣く泣くあきらめた」と私の母に話していたのを思い出しました。
見どころ3.実は歴史の長いディズニーキャラクターおもちゃ
現在の日本で販売されているおもちゃの約8割は、何らかのキャラクターがついたものです。特に、ディズニーキャラクターは、根強い人気がありますね。
見どころ1でご紹介した、「社会科玩具シリーズ」にも、ディズニーキャラクターおもちゃがありました。昭和30年代に、すでにディズニーキャラクターは人気者だったのですね!
メーカーの増田屋は当時、ディズニーとの玩具の独占契約を結んでいたそうです。1960年代には、ブリキ製のおままごとセットも。ブリキ製のピンク色のキッチンセット、かわいいですね!今販売しても人気が出そうです。
感想・展覧会情報
いかがでしたか?
皆さんの知っているおもちゃ、遊んでいたおもちゃもあったかもしれませんね。
子どもはやはり大人の世界にあこがれていて、大人のまねをしたがります。
ごっこ遊びは子どもにとって疑似体験をさせてくれる楽しい遊びで、おもちゃはそれに欠かせない道具です。
会場ではほかに、「タミーちゃん」などファッションドールや、お料理ごっこができるクッキング・トイ、また現在大人に人気の精巧なミニチュア「ぷちサンプルシリーズ」(リーメント)なども展示され、興味はつきません。もし機会がありましたら、また記事でご紹介したいと思います。
弥生美術館の展覧会、「いとしのレトロ玩具 もう逢えないと思ってた、がここにある」は、9月24日まで開催されていますので、ご興味のある方はぜひお出かけください。
展示おもちゃをたっぷり紹介した書籍も、読みごたえがありますよ。
『いとしのレトロ玩具』井口令菜/河出書房新社
今回は懐かしさのあまり長い文章になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
昭和27(1952)年から55年間続いたおもちゃ屋「さくらトイス」の思い出話を毎月更新しています。こちらもぜひご覧くださいね。
編集協力:小窓舎
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