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登り納めの塔ノ岳



小田原の畑からは、丹沢の眺めがとても良い。

大山阿夫利神社のある大山から、ニノ塔、三ノ塔、塔ノ岳と稜線(山の山頂と山頂を繋いだ登山道)がよく見える。

いつかこの稜線を富士山を見ながら歩いてみたい、
と思いながら、

「夏の丹沢はヒルがいるからやめた方がいい」

という情報をあちこちで聞き、
黒くてヌメヌメした得体の知れない生き物が大嫌いな私は、
1〜2センチの小さな生き物にビビって、なかなか行く機会がなかった。

ヒルは春から11月頃までいるという、
となると、丹沢をヒルの心配をしないで登山出来るのは12月〜4月初めぐらいと短い。
冬は丹沢でも雪が積もる。そして、雪が降れば根雪となって、春先まで残る。

登山を初めて間もない頃には、行く決心が付かなかった。

いろんな山に、
いろんな季節歩くことで、
最近やっと、
何をどう組み合わせて着て歩けば、熱くもなく寒くもなく歩けるのか?
自分のレイヤリング(ウェアを最適に機能させる重ね着のテクニックとでもいうのでしょうか?)がわかってきた。


そして、
今年の1月初登りに、丹沢三ノ塔まで丹沢表尾根を偵察登山に出かけたのが、初めての丹沢表尾根だった。

三ノ塔までは、
秦野駅からバスに乗り、終点のヤビツ峠から1時間半。
登山口からは岩が多く急な斜面が続くが、1時間で大きな富士山が出迎えてくれる山頂に到着でき、お得なコースと言えるだろう。

三ノ塔の山頂から丹沢表尾根で人気の塔ノ岳までは、いくつもの山を辿り、更に2時間歩く。

しっかり体力を付け、
時間に余裕を持って歩かなければ行けないな。

と、今年初登りの時に思った。
ただ、三ノ塔から見上げる塔ノ岳まで続く稜線は美しくかっこよく、
実際に見てしまったら、ますますこの道を歩きたくなってしまった。

そして、突然この稜線を歩く機会が訪れた。

12月24日クリスマスイブ。

24日の2日前、
「この日予約が少ないから仕事、休んでいいよ。」
と言って頂いた。

やったー!

最近甘ったれで、
抱っことナデナデをせがんで来る愛猫のロイ君と、
まったり過ごす休日もいいが、
24日、この日は天気がすこぶる良い。
このチャンスを逃す手はないと、

「丹沢表尾根縦走登山」

に出かけてきた。

秦野駅8時25分の始発のバスに乗り、終点のヤビツ峠に9時17分到着。
身支度を整え、トイレをすまして9時半にヤビツ峠を出発した。

20分程、ゆるい下りの凍結した車道を進むと左手が登山道の入り口だ。

ここからは、階段状に組まれた岩場を登っていく。
霜が降りて、カチカチの登山道だが、体はすぐに熱くなり、上着を一枚脱いだ。

ここは以前も歩いてる道、綺麗に整備された木道をコツコツ音をたてて登って行くこと1時間弱、
急に展望が開けて、正面にでーんと大きな富士山が迎えてくれた。ニノ塔の山頂だ。
快晴、雲一つない。

「わ〜。」

思わず声が出る。
去年の冬は、富士山に雪がなかった。
正面で出迎えてくれた山が、何の山かしばらくわからなかった。

今年の冬はたっぷりと雪をかぶって、堂々とした姿を見せてくれた。
真っ青の空と雪を被った富士山、やっぱり富士山には雪が似合う。




ここからが、大好きな山の稜線歩き、
この富士山をずっーと見ながら、次の山へ歩いて行く。

「天空のお散歩道」

一回ぐっと標高を下げて、登り返すとすぐに、広〜く開けた山頂の三ノ塔だ。
ここでも富士山を眺め、少し休憩をする。

歩いていると熱いが、
休憩していると、すぐに体は冷えてくる。

さぁ、ここからは未知の領域、今日のメインルートだ。
今日の目的地、塔ノ岳まで続く稜線を見渡して、
これからの冒険にワクワクする。



次に通過する鳥尾山は、三ノ塔から下の方に見えている。
下りの途中には、鎖がついた急は道を通過する。
寒さで斜面が凍っている、滑らないように慎重に行こう。

登ってきたのに、こんなに降るんですか?というくらい降りてくると、両脇が崩れ落ちた細い道を通って、
また登り返す。

すると、青い小さな建物が立つ、日当たりが良くて暖かい鳥尾山に到着だ。



今日は雲一つない。青空と富士山の景色を楽しんだら、次の山だ。

細い登山道を進む、下った分を登り返す。アップダウンが激しい。
息が弾む、額に汗が流れる。行者岳に到着だ。
山頂は広くないので、次を目指す。

ここからの登山道は鎖場が続く。
今日は平日、しかも世間ではクリスマスイブ。だけど山に来る人は意外と多いようで、
何人の登山者に道を譲ったろうか?
鎖場の急な下りで、男性に先に行っていただく。
垂直と言ってもいいくらいの斜面を、鎖をしっかり握って下る。

怖いけど、楽しい。
登山好きが、丹沢は楽しいという理由が、絶景とこの変化に富んだ登山道なのだろう。

無事に下って、振り返る。

「うわぁ、すごい!八ヶ岳みたい!」

思わず声が出た。



次は荒れた道を登り返す。

塔ノ岳まで行けるのか?チラッと不安が過ぎる。
そのくらいここまでで体力を使った。
崩れて荒れた登山道を登りきったところが、広く開けた場所で、
ここでお昼ご飯にした。
お腹空いた。
休憩してると、やはり体は冷えるので、お味噌汁を作るのは辞めて、おにぎりだけ手早く食べた。

後ろから、終始賑やかな女性の声がしていた。
ここで追い付いてきたので、声をかけた。

「塔ノ岳までですか?」

「はい。」

「結構ハードですね〜」

「初めて来たんです。初めてですか?」

「そう、私も初めてです。頑張りましょう!」

彼女達も、お腹空いた!と言ってここで食事をしていた。

お先に失礼して、いよいよ次塔ノ岳を目指す。

休憩した広場から、すぐに新大日岳。ここからは緩やか登りが続く。

それでもここまで、アップダウンが続いたのでふくらはぎパンパン、緩やかな上りでも、息が上がる。

可愛い小屋、木の又小屋で小休止して、
後30分頑張った。



さぁ、最後のひと登り。



「やったー、塔ノ岳!」

9時半に登り始めて、2時山頂に到着。
よく歩いた。

ここでも富士山が出迎えてくれた。太陽の向きが変わったので、薄っすらした富士山、幻想的でそれもまたいい。



山頂の山小屋で甘酒を頂いて、富士山と周りの山々の景色を楽しむ。
三ノ塔から、今ここまで歩いてきた稜線を振り返る。

塔ノ岳からは、丹沢山、鍋割山、そして西丹沢の方へと、まだまだ稜線は続いている。

「わぁ〜、こんなに近くに丹沢山が見える、この先も歩いてみたい」

若い女の子が一人、

「山小屋に予約しているものです」

と言って入ってきた。

山小屋に泊まって、次の山を歩くのもいいな。
夕焼けの富士山も見れる。日の出も見れる。

憧れだった塔ノ岳、
ここまで歩ける体力がついたら、次の夢へと繋がって行く。

稜線がどこまでも続いているように、夢もどこまでも繋がって行くのだろう。


下山は、バカ尾根と呼ばれている大倉尾根を2時間ちょっと下る。

そう、塔ノ岳はこの大倉尾根を登ってくるのが一番近い。
が、この名前でやぁーなイメージがありますよね。

バカ尾根と呼ばれているのがよくわかる、ひたすら下る、岩、いわ、木道、木の階段、岩、岩!

「あ、足がつる、つる、やば!」

太ももの裏がつりそうになる。ペースを落としてゆっくり下る。
輪郭が薄っすらした富士山が追いかけてくる。
太陽が傾きはじめる。

日が沈む前に、下山したい。気持ちは焦るが、足はつる。

太陽と睨めっこしながら、長い大倉尾根を下る。
やっと、岩や木の階段がなくなって、平らな登山道に変わると、間も無く車道に出た。

太陽は山の影に隠れ、薄暗くなりかけた頃、
無事に大倉のバス停に到着した。

9時半にスタートして、下山は16時40分、休憩込みで7時間、よ〜く歩いた。
充実した1日、天気が本当に良くて、展望が終始良くて、ほんと楽しかった。

丹沢で明けて、
丹沢で締めくくった2022年の登山
はぁ〜、
丹沢、惚れました。
2023年も、よろしくお願いします!

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