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父の味を思い出した、雨の休日

畑に行く予定だった。
朝から雨と寒さで、出かけて行っても何も作業は出来ない。
先週種まきし、そろそろ発芽するであろう枝豆が気になるが、
畑の師匠に電話をしたら、代わりに見てきてくれるという。
頼れる師匠だ。

そんなわけで、時間が出来た。
ケーキ焼きたい、
書道もしたい、
ワインの木箱でお皿も作りたい。
メスティンを入れる袋も作りたい。

作りたい物、たくさん思い描いていた。

私がこうしていろいろ手作りしたいのは、
父の血を受け継いでいるからなのだろうか?

父は手先の器用な人だった(病気をしてから、不自由になってしまった)

魚をとる網を編んだり、日除けのよしずを使ってしまったり、
竹で洒落た花びんを作ったり、
本棚などはお手の物、
私が未だに愛用している鬼すだれ(伊達巻を作る時用の、ギザギザの大きなすだれ)は、父の手作りだ。

花や野菜も手作りしていた。
盆栽では、数々の賞をとっている。

釣りもしたので、魚を捌き、さしみにするのは、いつも父だった。

そんな父の料理で、私が好きだったのは、

「チャーハン」

母が作るチャーハンとは違って、
ネギと卵だけのシンプルな物だ。

鉄の中華鍋にたっぷり油を入れて、よーく熱したら、小口切りにしたネギをドバッと入れ、
ちゃっちゃと小気味よく炒める。
香ばしいネギの香りがぷーんとしてきたら、
冷やご飯を入れて、鍋肌に押し付けるようにして、パラパラに炒める。
最後にとき卵を加えて、
ご飯粒一つ一つ、卵でコーティングしていく。塩こしょうで味を整えたら、

黄金色の卵チャーハンの出来上がり。

パラパラだけどホクホクしたチャーハン、卵の甘みとネギのピリッと感、ツーンと効いた胡椒、美味しかった。

チャーハンを作った鉄なべに、
じゅっと水を加え、鍋肌に付いたチャーハンの旨みをこそげとる。しょうゆと塩を入れ味付けしたら、彩りにネギを入れて、中華スープが出来上がる。

炒めたネギの香りが移ったそのスープが、また美味しかった。

あー、あの味が食べたい。
やっぱりチャーハンは鉄の中華鍋だよね。あの火力があるから、あのパラパラふっくらの食感が、ありますよね。

道具じゃないか?父の料理の腕か?
父は料理の腕前も、職人のようだった。

「あーん、父のチャーハンが食べたい。」

そんな思いが、ふっと湧いてきた、雨の休日。

ワインの木箱をお皿に加工、オイルを塗って仕上げ

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