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本の紹介「ヤサシイワタシ/ひぐちアサ」

全二巻の漫画です。

私がこの本を初めて読んだのは弟が亡くなった直後だったのですが、最近また読んでみました。

この作品は一言で説明するには難しいです。

初めて読んだとき、強く記憶に残った主人公の台詞がありました。

「できる人ができない人にできるハズって言うのはマズイんじゃないですか」

私はよく、「どうしてこんなことも分からないの?」「言われないと理解出来ないの?」的なことを言われてきたので、こんな台詞を言ってくれる人がいたらな、と思いました。

同時に、出来ない人にはもう何かを求めるのは諦めようとも思いました。

だって、

出来ない人は出来ないし。


この作品のメインヒロインの弥恵さんは、トラブルメーカーだし、境界性人格障害っぽくて、騒がしいキャラなのですが、私は彼女を嫌いになることが出来ません。

そばにいたら大変そうだなぁ、とは思うけど、彼女は滅茶苦茶に生きているように見えて、本当は何に対しても本気でやるし、でも結果が伴わなくて苦しい、他の人がなかなか言えない意見もあっさり言ってしまってそのせいで主人公と衝突してしまう、不器用な女の子です。

「うん」「幸せ」

主人公と一緒に眠っているときの弥恵さんの台詞なのですが、これが一時的であれ本心によるものなのか、それとも自分に言い聞かせるように、はたまた主人公を安心させるために言ったのかは分かりません。

ただ、私は全体を通して彼女が幸せそうには見えませんでした。

主人公は、弥恵さんに色々なことを言います。

周りの反応なんて見なくていい、やりたいことをちゃんと考えなよ、と。

でも、弥恵さんにとっては「認められること」が大事だったのではないでしょうか?

そして、弥恵さんは自殺してしまいます。

「死にたいんじゃなくて 願う姿で生きたかった」

ここに凄く共感出来ました。

弥恵さんにとっては、願いは叶わないと駄目だったんだと思います。

願いが叶わないとき、他の道を探したり、諦めたり、皆が折り合いをつけることが出来る中、彼女はそれが出来なかったのではないでしょうか。

弥恵さんが亡くなって落ち込んでる主人公のところに、主人公の従姉妹がこう声をかけます。

「もうダメってなる時間をやりすごせるかどうかって運とかだと思うの」

「私がやらないと思う理由を死んだ人が持ってなかったわけじゃないと思う」

この「もうダメ」「やらない」というのは自殺と解釈してください。

これは、弟が亡くなった直後はそんなに響かなかった台詞なのですが(というか、当時の記憶があやふやな部分もあって)、今読むと物凄く共感出来ます。

主人公は、弥恵さんのことを思い出します。

このシーンは、初めて読んだとき一番印象的なシーンでした。

亡くなった人がいた場所を思い出し、でもそこにはもういないんだよね、って私も思うときがあって。

なんだか纏まりがなくなってきたので、この辺で。

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