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赤いベリーのチーズケーキ

子供のころ、母は家で文字を書く仕事をしていた。
月に数回、出来上がった書類を会社へ届けるのだけれど
夏休みは私もよく一緒について行ったものだった。

地下鉄の丸太町を上がって、少し歩くとケーキ屋さんがあった。
いつもその前を通って会社へ向かう。
 
ガラス越しに見えるショーケースの陳列は色とりどりで、
綺麗なケーキは宝石を見るような気分だった。
 
中でも、赤く透き通ってキラキラするケーキは、とても美しくて
今でも私の心に差し込まれたままだ。
 

・・・と、ここまで書いて
ん?と思う。
 
そのケーキ屋では、ケーキを買ってもらった記憶がない。
店の中に入ったことすらないはずだ。

でも、
このケーキを食べた記憶があるのだ。
しかも何度か。
 
うーん、
どこのケーキだろう。
 

ああそうか。
地元の商店街の「ヤマダヤ」だ。
 
あそこのケーキはおいしかった。
そうだそうだ。
それで何度か食べた記憶があるのだ。
 

冷たい口あたりと、
つるんペロンとした舌触り。

上の赤いところはゼリー状のソース。
甘酸っぱくて、
子供の私には少し大人の気分が味わえる。

ねっとり溶けるチーズケーキ。
でも、食べたあとはさっぱり清々しい。
 

それ以来、赤いベリーのチーズケーキは
私の好きなケーキとして、自分の中にインプットされた。
 
ケーキを描くとなると、
定番の苺の乗った白いショートケーキか、
この紅いベリーソースのチーズケーキになる。
 

最初の丸太町のケーキ屋さんの話、
いらんかったな。


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