2000字のホラー:検索してはいけない
インターネットが普及して、調べ物も便利になった。エンタメのコンテンツも広がりを見せている。気軽になんでも検索できる時代だ。
しかし、検索できるというだけで、なんでも検索していいわけではない。ネットの世界には、”検索してはいけない言葉”というのがある。ネットの闇の部分。それは決して開けてはいけないパンドラの箱だ。
これは、そのパンドラの箱を開けてしまったある少女のお話…。
雨の匂いがして、降り出す気配がある。どんよりとした曇り空は、少女の心にまで暗い影を落としていた。少女は家に閉じこもり、またお日様が出ることを待ち望んだ。ベッドに入って布団をかぶると、ぬくぬくとしていて、外に雨が降っていることを忘れさせる。
「推しの写真でも見よーかな」
少女はそう呟いてネットサーフィンを始めた。大好きなアイドルの写真を眺める。端正な顔立ちできらびやかな衣装をまとった推しの姿に、見惚れてしまう。
そのようにして、しばらくインターネットとにらめっこしていると、”検索してはいけない言葉”と書かれた動画のサムネイルが目に止まった。赤と黒で彩られたおどろおどろしい見た目である。少女はホラーが苦手であったが、興味本位に動画を再生することにした。
意外と動画はポップだった。検索してはいけない言葉を実際に検索して、検索結果をイラストで紹介している。
ふと一抹の物足りなさを感じてしまった少女は、好奇心に駆られてしまった。
「検索してはいけない言葉を検索すると、
どうなるのだろう。」
そう思った少女は、気づくと、検索してはいけない言葉を怖いもの見たさに夜な夜な検索にかけてしまっていた。この言葉あの言葉。画像が次々に出てくる。少女は、手に冷や汗を握っていたが、それでもそれほど怖くなかったようで、画像を見ている内に眠ってしまった。
眠りから覚めた少女は、朝になったことに気づく。
「学校行かなきゃ」
重いからだを起こした少女は、昨日夜な夜な検索した言葉の数々も忘れている。朝ごはんを食べていつものように
「いってきます」
そう言って、玄関から外に出ようとした。
すると、靴が見当たらない。玄関にあったはずの黒い靴。もう何年も履いているお気に入りの靴だ。
少女は、母親を呼んで、靴が見当たらないことを伝えた。
「あなたの靴?知らないわよそんなこと」
母親はそう言って怪訝な顔をする。ますます奇妙である。少女は、ひょっとしてひょっとするかもしれないと思った。少女の背中に汗がつたっていく。
黒い靴はそれから二度と見ることはなかった。
検索してはいけない言葉は、霊界から呼んでくるのかもしれない。
今頃黒い靴を履いた幽霊が
少女をじっと見つめている。
検索してはいけない言葉は
開けてはいけないパンドラの箱。
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