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クリエイターとしての軸を持つことの大切さ【Designship2021参加レポート】

お久しぶりです、きくちです。
少し前の話になりますが、10月末にオンラインで行われた日本最大級のデザインカンファレンス「Designship」に参加してきました! 登壇者の皆さんの熱を帯びたセッションから学ぶことが多くありました。
今回は、その中で特に学びがあったセッションについてレポートしたいと思います。


“気づき”を得るセンサーを張り巡らせる

『今デザインにできること』/深澤直人氏

【セッション概要】
・デザインは問題を解決することではなく、何を問題とするかの定義を見出すものであり、それに対応した最適解を導き出すことである

・選択の岐路に立ったら、美しい考えを選べば自ずと正しい答えが見つかる

・創造力を高めるためのノウハウはない

・気づける状況や場にいることが重要、気づけるようにセンサーを立てておく

・普通は感じたことは自覚しない(without thought、without thinking)

・Design thinkingは考えることではなく、感じたことを自覚できる力である共感を得るということは、誰もが同じ経験をしたことがある=集合的無意識

深澤直人さんのプロダクトからは、無駄のない美しさが感じられます。

それは、日常にセンサーを張り巡らせて通常では自覚できていない“気づき”を得て、そこに形を与えているからなのだろうとお話を聞いていて思いました。
「デザインする」とは、つい「自分が思う美しい形を作ること」「課題解決方法を考えること」と考えてしまいがちですが、もっと根本の「何を問題とすべきか?」から考えることが重要なのだと気付かされました。

最も感銘を受けたのは、人間は無意識に美しい考え方を選んでいるのではないか、というお話でした。
例えば床のタイルの溝を傘を立てかける場所として無意識に利用したり。改めて意識せずとも、その環境や物質が持つ特性を知っていて、利用することができる。そこに“気づく”ことによってクリエイションが生まれると深澤さんは説いていました。

人間が使うものをデザインするには、そういった観察力や“気づき”を得るセンサーを張り巡らせることがいかに大事かを教えていただいた気がします。

私も普段デザインする時に、“人間の行動に即しているか?”といった視点を忘れずに考えること、そして日常から“気づき”を得ることを忘れないようにしたいと思います。

相手を理解した上で、徹底的に話し合う

『みんなの銀行が「グッドデザイン」である理由を解剖する』/株式会社みんなの銀行 中村隆俊氏、グッドデザイン賞審査委員 井上裕太氏

【セッション概要】
・銀行という堅苦しい業界に切り込んだ、ユーザーとの橋渡しをする体験

・ターゲットをシンプル・ミニマルを好む20代〜40代に定め、ファッショナブルな有機的なイラストで堅苦しいイメージを払拭した

・口座開設のフローなどセキュリティが深く関わる問題に対しては、絶対に守るべきところとシンプルにするところを分けた

・なるべく衝突がないよう、お互いの想いを聞きながらも自分の考えは発言できる心理的安全性が重要

・トップのコミットメントで崩れなかったのは、組織としてフラットな状態であったこと、経営とデザインがすごく近かったため

・デザイナー側が発言力を持ち、核をしっかり持ってイニシアチブを握ることが大事

最初にみんなの銀行のデザインを見たときに、地方銀行のアプリとは思えないほど斬新で遊び心のあるUIに驚きました。
そして、銀行のアプリでここまで自由度の高いUIが実現できた理由が気になりました。
中村さんのお話によると、妥協せずに話し合いを重ねたこと、そして経営とデザインが近かったことやメンバー同士の心理的安全性が高かったことなど、地道にクライアントとの距離を縮めて同じ目線で課題を見ることができたことが大きなポイントだとわかりました。

お互いの大事にしたいことが異なる中で目線を合わせることは容易なことではなかったと思います。しかし、みんなの銀行プロジェクトではその困難を乗り越える努力を重ねていったのだと想像できます。
結局は「上手く進むたった一つの方法」があるわけではなく、そういった一つ一つの積み重ねがプロジェクトの成功につながるのだと教えていただきました。

デザイナーが良いと思うデザインを押し付けるのではなく、相手を理解した上で徹底的にそのデザインにする意義を話し合うことが大切。そのために対等に意見交換ができる組織を作り上げることが必須なのだと改めて学ぶことができました。


クリエイティブのプロとして期待を超えるものを作る

『日本の次世代デザイナーの働き方』小山田育氏、渡邊デルーカ瞳氏

【セッション概要】
・日本のクリエイティブを担う次世代デザイナーの働き方
…日本はデザイナーの価値が低く見られがち。だが、今がパラダイムシフトを起こす良いチャンスである

・クライアントとのコミュニケーション
…信頼関係を築くことが大切。相手に寄り添い、好きになる努力をする。自分のマインドセットを変えると相手も変わる

・コンセプトの背景の言語化
…ビジネス視点で価値を伝えるため、言語化を大切にする

・THINK OUTSIDE THE BOX
…上司やクライアントの指示を聞きすぎず、クリエイティブのプロとして期待を超えるものを作る

・女性クリエイターの働きにくさ
…日本ではいまだに女性だと説得力がないなどと言われることがある。でも謙遜せずに、自信を持って。

・ソーシャルブランディング
…社会問題は意識的に見ないと見えてこない。何もしていないわけではないが、ブランディングが足りていないため行動につながらない。

渡辺さん、小山田さんの著書「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」を拝読していたため、個人的に気になっていたセッションでした。
お二人の語り口は優しく、しかし鋭い切り口で日本のクリエイターの現状と、どういった心持ちでクリエイションしていくべきかを語ってくださいました。

特に「上司の指示やクライアントのことを聞きすぎない」「クリエイティブのプロとして期待を超えるものを作る」という言葉が刺さりました。クリエイターとして当たり前のマインドが、日々仕事に追われるうちにないがしろになっていないか?と自分に問いかけるきっかけになりました。

「デザインをプレゼンするとき、予防線を張ってしまうと良さが半減してしまう」との言葉に、つい私も予防線を張ったり自信のない声で話してしまうことがあったなと反省です。

また、同じ女性クリエイターとしてハンデを感じている部分に共感しました。それと同時に、女性だからといって臆することなく前に出て良いんだよ、と背中を押された気がします。
自分が自分の作品のファンになれるくらい納得のいくものを作り、それを自信を持って世の中に発信していきたいと強く思いました。


いいものをつくることに心血を注ぐ

『クラフトマンシップの逆流』/井口 皓太氏

【セッション概要】
・クリエイターがなぜ組織を作るのか?
自分の周りの環境を作ることもクリエイティブである。
個人が持っている価値観を集合体として発揮していく組織が理想

・いいものをつくる
いいものを作ろうとすると時間とお金がかかる。でもいいものを作りつづけていれば大丈夫。
いいもの=熱量、エネルギー

・どれだけものづくりの純度を保てるか?
東京オリンピックのピクトグラムアニメーションを制作。
ただ静止画を動かすのではなく、自分の体とシンクロさせて生合成の取れる動きに近づけていく。

・クラフトマンシップ
体の動きを極めようとすること(=スポーツ)と美しい動きを作ることはシンクロしている。いかにミクロの部分に熱量をかけられるか。

井上さんが純粋にクリエイティブを楽しんでいることや、いいものを作ろうとする熱意とエネルギーに感銘を受けました。

東京オリンピックのピクトグラムアニメーションを作られていたと初めて知り、そのこだわりとスポーツ選手へのリスペクトが感じられ、映像を見た時に鳥肌が立ちました。
動きの自然さ、滑らかさ、そして静と動のコントラストが素晴らしい作品だと思います。

私はここまでクリエイティブに熱量を傾けられていたか?と自問自答すると、日々のタスクに追われてそういった姿勢を忘れかけていることに気づきました。ただ「仕事」としてこなすのではなく、もともと持っていたものを作る楽しさを忘れずにワクワクするものをつくりたいと再認識しました。

また、「ひたすら身体の動きを極めようとするアスリートのように、クリエイターもいかにより美しいものを作るのかというところに心血を注いでいる。アスリートとクリエイターのマインドは似ている」との言葉にハッと気付かされました。

もちろん自分が作ったものがどう社会に受け入れられるのか、どう機能するのかといった視点も大事ですが、そもそもクリエイターの根幹である「つくることを楽しむ」姿勢を忘れないようにしようと思いました。


まとめ

全てのセッションを通じて考えたのは、「日常からの気づきや発見を大切にする」「クリエイターとしての軸をしっかり持ち、その価値を高める」ことの大切さでした。
いちデザイナーとしてどのようにプロジェクトに関わるべきか。また、作品を生み出すことの純粋な楽しさを忘れないようにしようと思いました。

Designshipに参加し、さまざまなクリエイターの考え方に触れることができとても充実した2日間でした。2年前から毎年参加していますが、オンラインになっても感じる熱量、そして「デザインの力を信じる」登壇者の方や参加者の想いを共有する場としてとても貴重な機会でした。

私自身もDesignshipで得た学びを生かし、世の中に貢献できるよう努力を重ねていきたいと思います!


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