悲しいはなし
思想は、子供なんだよ。
思想は、社会全体の価値を増やさない。
思想よりも、ビジネスの方が、よっぽど、世界を救うんだ。
かっこいい人がいた。それは、女にもいたし、男にもいた。その人たちは、とにかく、言うことがかっこよかったんだ。けっして、ごまかさない。世間体の悪いことだって、悪びれず、私に向かって、言い放つ。人間が抱く矛盾を、否定したりなんかしない。首尾一貫している人間が、どれほど気持ちの悪いことなのか、教えてくれた。価値観を強固にもって、自身が首尾一貫しているとほざく人間、それはもはや人間なんかじゃないことを知った。
私は無邪気だった。私は、無邪気な自分も、無邪気な他人も、嫌いだった。なぜなら、「ほんとの無邪気」はアホって意味だと思うから。無邪気という言葉に良い意味は感じない。良い意味を含んだ無邪気という言葉を、私は信じない。
私は、無邪気だったから、かっこいい人に感化されては、追いかける、というのを繰り返す。まさに、アホって感じでしょう。
今日もいつものように、無邪気なままだったから、かっこいい人を追いかけていて、その人のことを他のかっこいいと思ってる人に興奮して話した。そしたら、
「思想は、子供なんだよ。
思想は、社会全体の価値を増やさない。
思想よりも、ビジネスの方が、よっぽど、世界を救うんだ。
あなたの話、もう興味なくなったんだよね。ごめんね」
と言われた。無邪気な私は、無邪気じゃない私になった。いつのまに、あなたは、大人になっていたんだろう。あれほど、子供でい続けるということを、私に、誓わせてくれた人だったはずなのに。
「あなたは大人になったんだね。
おめでとう」
それだけ言うので、私は精一杯だった。
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