パパとママのむすめ、私(21)。


「ママをイライラさせないで。八つ当たりされるのはパパなんだから」

夜寝る前に、お茶を飲みにリビングに行ったら、パパに引き止められて、こう言われた。私だって、妹と喧嘩した後のママから八つ当たりされる側なんだけどなあって思った。でも確かに、ママのことはもうちょっと考えてあげた方がいいとも思っている。ママは、私が生まれてから、3年前にパートで再び働きはじめるまでずっと専業主婦だったから、ほとんどの時間を家族のために費やしてきた。正確には、パパだってママと同じくらい頑張ってきたと思うけど、彼女には、

「他人のために頑張るのがこの世で一番正しいこと。もちろん家族のために一番頑張ってきたのは私」

という信念と自負が強くある。だから、「私たち(ママ以外の4人)も、ママのために頑張ってあげているよ!」というアピールをもっとしないといけないと思う。早く家に帰るとか、家事を手伝ってあげるとか、話しかけてあげるとか、そういうことを今よりもした方がいいのは前からわかっているつもりだったんだけど、もう少し頑張ってあげなきゃいけないような気がする。

なぜなら、私もママの気持ちわかるから。相手のために頑張って何かしてあげているのに、それと比較して相手から返してもらっているものが極端に少ないと感じてしまう時、すごくイライラするし、

「なんでこっちはあなたのためを思ってこんな時間を割いてあげているのに、まるであなたには人の心がないのかしら」

って、相手を責めるような気持ちになる。そういうことを思ってしまう時、私はママの遺伝子を受け継いでいるんだなと、思う。そういう自分のめんどくさいところとか、弱いところって、なぜか恋愛してから気がついた。きっと前から同じように私はめんどくさくて弱かったはずなのに、どうして人を好きになると嫌でも自覚することになるのだろう。

パパにその話をしてみたら、「そうだよ、今更気づいたの?」とか言われたけど、パパに対しては「あなたのためを思ってるのになんで...」とか思ったことないんですけど。

「でも私は、今、いろいろ進路のことで辛いんだよ、だからママのことを考えるのが後回しになってしまう、だって自分と他人のバランスの問題でしょ」と言うと、「それはわかるけどさ、パパもさ、」みたいな話になって、明日一限なのに一時間くらい話してもう2時になってしまった。パパは、学部生で内定決まった後、蹴ってフリーターになって、やっぱり勉強したいと思って修士受けて、修士卒業するときにまた内定蹴って博士に進んで...。パパの座右の銘は「待てよ。それでいいのかな」で、そう書かれた色紙がちゃんと玄関に飾ってあるんだけど、ほんとにキャッチフレーズ通りじゃんっていう人生を歩んでいる。レールをかなり細かく点検しながら、結局、レールに乗ってきたって感じの人生。それって、私とおんなじじゃんと思った。パパは、一年フリーターしたあとまた一から勉強しなおさなきゃいけなくなって、大学の図書館に通って静かに努力してたらしい。そういうことを自分で言い張るところとか、やっぱ私とおんなじじゃん。おんなじって、少しつまらないよね。


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