壮大な愛の物語
彼はこの世界に、宝物を散りばめた。
彼の愛するひとのために。
手紙だけではだめだったんだ。
言葉だけでは表せないこともあるから。
それに、ウィットに富んでいたほうが
面白いと思ったんだろう。
この世のありとあらゆるところに、
彼が彼女のことを愛しているという
証が散りばめられている。
空から落ちてくる雪の中にも、
海の中に住んでいる生き物の中にも。
7歳の時、初めてその宝物の一つを見た
彼女は目を見開いて驚いた。
彼女は手袋についた雪を見て、
信じられないという顔をした。
小さな雪の一つ一つが
美しい結晶のかたちをしていたから。
海の中の生き物を初めて真剣に見た時も、
空にかかる大きな虹を見たときも、
彼女は同じように目をまるくした。
そうして、少しずつ気づき始めたんだ。
この世は壮大な愛の物語であることを。
彼は彼女に素晴らしいものを用意している。
彼女がどこにいても、どこへ行っても
素晴らしい感動に包まれるように。
*
日が暮れようとしている今、
水色だった空は綺麗なオレンジ色に輝き出した。
身支度を始めた鳥たちが
「帰ろう」という合図を送り合っている。
でもその中にも仕掛けがあることを
僕は知っているんだ。
よく聞いてみるといい。
その中に別の何かが
隠れているのがわかるだろう。
この世は壮大な愛の物語だった。
愛する人のために用意された、
壮大な愛の物語。
その証は、風の中にも、空の中にも、
水の中にも隠れている。
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