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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』第Ⅰ部

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2020年2月の記事一覧

小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ユウカの章②≫ー戦場のメリークリスマス—第18話]

ボーーーッ ボーーーッ
‛ド’の音の汽笛を響かせながら大型客船が横を通りすぎる。
ユウカは潮風に揺られながら目を閉じ十字架のネックレスを握りしめ、「XXX」と唱える。
平和の祈りを捧げるアンジェランスの鐘の音と共にユウカの目の前に長方形の液晶映像がざざざと現れる。

〚聖母【マリア】の血を引くものよ。わたしを呼んだか〛

低い呻り声が画面から轟く。青白い魂の幽霊が幾つも揺ら揺ら此処と何処を彷徨って

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪カナデの章【piero/mascot/crown】③≫ーキミはいじめについてどう考える?【後編】―第17話]

違う話題…?
よくわからない感情で渦巻く胸。はやくここから脱兎のごとく走ってエスケープしたい一心なのに、両手はしっかり頑丈で大きな温かい手のひらにがっしり掴まれている。それからユウヤ先輩はすっとカナデの二の腕に大きな手のひらを滑らして頭に載せている顎をカナデの耳元にずらして呟く。

「このお話はね、カナデちゃんにしか理解してもらえないと思うんだ。だから、もう少し一緒にいてもらえると嬉しいな…もう少

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪カナデの章【piero/mascot/crown】②≫ーキミはいじめについてどう考える?【前編】―第16話]

「はい!はじめ!」
デザイン科の講師がストップウォッチで15分で制限時間を測る。学生たちは一斉に右手の鉛筆を白紙に滑らせ、自分の左手を模写する。カナデは専門学校でゲームクリエイター科と一緒にとある学園の服飾デザイン科も並行して受講している。
静かな教室に鉛筆と紙の摩擦音だけが響く。
「はい!終わり!後ろから回収してください」
生徒たちは隣や後ろの子たちとアイコンタクトしたり雑談したり、その中でぽつ

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハル/蝶TEUの章②≫ーバベルの塔の蝶—第15話]

私は終わりのない果てしなく続く巻貝の中の螺旋状の階段、バベルの塔を息を切らしながら登りゆく。
バベルはヘブライ語で混乱を表す。
螺旋は無限に上昇する構造で、永遠の時間や進化の営みを含意する。
人は何故努力するのだろう?
わたしは努力という言葉が嫌いだ。
だけど努力という幾度の苦難や試練を乗り越えていくことで、達成感を味わい生長し一皮剝けた私となりカマキリの視点から巨大な世界を一点を集中した眼をカラ

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハルの章③≫ードイツ ハイデルベルク編Ⅰ―第14話]

フランクフルト中央駅からIC特急に乗り込み約50分、ハルはハイデルベルク駅に降り立ち、32番のバスの停留所に並ぶ。
乗車券を乗車口近くにあるオレンジ色の入鋏機に差し込み乗車時刻を切符にパンチすると乗車席に腰を下ろす。旅情溢れる風景がゲーテやヘルダーリン、ショパンといった詩人や芸術家を虜にし、この町をたたえる作品を回想しながらハルは車窓から流れゆく情景に微笑む。
ハルにとってドイツは`第三の故郷'で

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪カイ χの章④≫【scapegoate】~幻夢Ⅱ~ —不幸の大聖堂メルツバウ-第13話

立坑のような通路、階上にまで通じる人為的につくられた亀裂、天井の穴倉につながる螺旋状のトンネル、辺り一面に谷、窪み、洞穴が白熱電球で照らされ、そこではそれぞれに生命が与えられていた。
僕は残酷な洞窟と名付けられた遺跡で四肢のない少女の人形が飾られ、周りに灯篭が並べられた火成岩でできた背筋も凍るようなおどろおどろしい場所にいる。

か~ごめ か~ごめ か~ごのな~かのとぉ~りぃは~

天井からカゴメ

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ソラの章②≫【lost-one】ー教養と闘争の反乱/オリンポス神ー第12話]

瞼を閉じればそこにはプラハの迷宮が広がる。
百塔の都の散歩道をぼくは彷徨う。
地下鉄C線ヴィシュフウラド駅で下車すると、真っ直ぐ丘の上を目指して足を踏みしめる。
伝説によると、ボヘミア王家の祖プシェミスル家を誕生させたリブシェ女王は最初の城をヴィシュフウラドに建て、プラハの未来を預言したといわれている。
ヴィシュフウラド地区はプラハ6市の中では一番小さな地区であるヴルタヴァ川に沿った一帯である。

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハル/蝶の章①≫【artwork/creation】ー藝術の死と再生ー第11話]

どんな【artwork】も【artwork】を創造【create】したプロセスとは関係なく、眺めるときは初対面で眺める心持ちで【must look at XXXXion】。
【artwork】、創造の世界【XXX】には上下関係も優劣も比較級も最大級も存在しない。
玄人/素人、上司/部下、先輩/後輩、師匠/弟子、プロ/アマ…
Non Non…Year
色彩と笑劇【衝撃】の道筋
Wanna dye o

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ユウカ【優香】の章①≫【caretaker】ー長崎 天草地方教会群ー第10話]

ーねぇ、無理してない?
ううん。まだまだ大丈夫。

ー怖くない?
大丈夫。平気平気。

ー手伝おうか?
ありがとう。大丈夫だよ。

ー寂しくない?
うーん…一人でいる方がゆっくりできるの。

なんて。
「大丈夫」、「平気」なんて全部嘘【ウソ】。

人に頼った方がいいのに人に頼ろうとアクションを起こしかけると、プライドでもなく罪悪感のような抵抗感の重い障壁がベルリンの壁のように立ちはだかる。
一人で

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪カイχの章③≫ー三人のファシリテーターとの宴ー第9話]

渋谷の隠れ扉から薄暗い照明の中、地下に続く階段をおりていく。
階段を降りきると目の前の視界は一気に開放的になる。
そこは三方をウェーゲ海に囲まれた砂浜。
ざざん ざざん ざざん…
心地よい白い泡とともに波音と潮風が寄せる。石英の真っ白く輝く砂丘とエメラルドグリーンの海の表情が作り出す絶景。ユリカモメが自由に透き通る蒼ソラを優雅にくぅるりくぅるり飛翔している。カイはサングラスを外してコートのポケット

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハルの章②≫【HERO】ーストックホルム症候群編―第8話]

—ストックホルム症候群

やせ細り全身に青あざ、打撲だらけ、眼帯に包帯が巻かれた小さな少女がか細い声でハルにいう。
「…たすけて」
今から約1時間前に、ハルは児童虐待施設嘱託医として児童福祉施設と警察から連絡を受け、普段着に着替えるとすぐに現場に向かった。
向かった先のアパートの中はごみ屋敷とかっし、生後まもないと思しき赤子の傍でがりがりにやせ細った少女がか細い声で、ねんねんころり と泣き叫ぶ力も

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪カイの章≫【scapegoate】 —幻夢-第7話]

邪魔しないで…
あなたとわたしの間には
みえない境界線があるの…

…境界線…?

少し成長したキミの黒髪のストレートヘアと清楚なワンピースは風でさらさら舞い落ちる落ち葉と一緒に子犬のワルツを踊る。

そう。境界線。
自他を明確に分けるもの、自分自身を守るもの。
自分以外の誰もこの境界線の中には入れないの…

僕は手を伸ばしてキミに触れてみようとしてみる。

鬼さんこ~ちらっ

後ろを振り返ると瑠

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハルの章①≫【HERO】―勝利の女神君臨ー第6話]

「政府第七諮問機関一同起立!!!!」」

バッと天皇の間に君臨する者たちが「勝利/昇進/野心」を意味する赤のマントを閃かして立ち上がる。
中央先頭の透き通るようなサファイア色の瞳を輝かせる日本人の女性が続いて勢いよく号令をかける。
「我ら「君が世」のために!!!」

朝訓が終わると物者たちはそれぞれの仕事場所に散る。

サイバー攻撃なんてお手のもんさ 

後ろから ### の意気揚々とした笑い声が

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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』[chapter:≪ハル/蝶teuの章①≫【HERO】【【序章 】】第5話]

—制約のない自由な世界【XXX】
私たちは常に何かに制約されている。
時間、空間、人間関係、規則、社会…

手と足をよぉくみてごらんなさい。
わたしもあなたも、手と足には鎖は繋がれていないわ。
私たちの手と足には社会や生まれ育った環境での暗黙のルールという鎖が繋がれていない?

制約。
法律とは全く違うあなたとわたしを縛り付けるもの。
あなたは何かに捕らわれえて自由を見失ってはない?

自分以外の

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