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小説 赤い髪の女 - ヤン・ウォルカーズ

これはきわめて個人的な意見なんだがね、小説をよく読む人間は二種類いると思うんだよ。習慣や暇つぶしで読んでる人と、本当に好きな人ってことだな。で、心の底から本を読むのが好きな人とそうじゃない人の違いはというとだね、それは何度も何度も何度も読んだ本があるかないかってことなんだな。「その本は何回読んだの?」ってきけば一発さ……

どうしてこんな妙な前置きをしたかというとだね、この本を初めて読んだ頃はその手の幼稚な選民意識を持っていたっけなぁと、恥ずかしくも思い出しちまったわけなんだよ。いわば当時の俺は本の毒とやらに盛大に当てられていたんだな。そもそも、本なんか作者の妄想につきあってやるくらいの距離感でちょうどいいのかもしれん。引きずられると沼つーか、汚水まみれになっちまうから。

俺ははほぼ毎日、漫画映画音楽なんかの感想を適当に書いてnoteにアップしてるけど、その実、本当に好きで感想を書いた作品ってのはあんまない。ただ最近鑑賞したってだけなんだ。いまタイトルをまとめて見返したが、ジェフ・バックリーのGraceってアルバムだけだな、本当に好きなのは。ただ、Graceにしたって人生のベストアルバムを50枚あげろと言われても入らないだろうが。

で、ようやく本題だ。この本は俺にとって何度も何度も読んでる内の一冊であり、この先も再読することが確定してる本なんだな。最初に読んだのはもうかなり前、ブックオフの100円コーナーで見つけたんだっけ。

オランダ人の彫刻家兼画家兼作家が1969年に出した本。いま検索したらノーベル賞作家が同じタイトルの本を出してるんですっかり埋もれちまってるな。

この小説からはベティブルーやリービングラスベガスの根底にも流れていた空気が感じられる。つまり、最後に恋人が死ぬんだけど軽妙な語り口とジョークが散りばめられポップな部分もあるってことだ。

ベティブルーとリービングラスベガスよりもこの作品が悲惨なところは、主人公とヒロインはすでに別れている点かね。

改行を拒否した饒舌な文体で10ページほどが一塊となり約20章続く。ユーモアと怠惰さを持ちあわせた語り手の男は自分を捨てた恋人をいつまでも忘れられずメソメソといじけているだけの本。まあ、そこに痺れてしまうわけだ。

自炊した1ページ目をスクリーンショットしてみた。

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